企業参謀(2014年新装版)

未読
企業参謀(2014年新装版)
企業参謀(2014年新装版)
未読
企業参謀(2014年新装版)
ジャンル
出版社
株式会社masterpeace
出版日
2014年02月25日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
5.0
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

漢の軍師「張良」、蜀の軍師「諸葛孔明」、大河ドラマともなった豊臣秀吉の軍師「黒田官兵衛」など、男性諸君は歴史を学ぶ中で多くの参謀に魅せられたことだろう。平和国家日本においては、軍事的な参謀になる機会はほとんどないと言え、参謀に憧れを持つ向きは「企業参謀」を志す。本書は、その「企業参謀」としても日本、そして世界でも最も著名な方の1人と言っても過言ではないだろう、大前研一氏の代表作の一つである。経営コンサルタントであれば誰でも知っているという本書を、マッキンゼーに入社して数年後に書き上げているというから、驚きという他はない。

経営を志すもの、あるいは経営を支援するプロフェッショナルに贈る書として、私はドラッカー氏の「プロフェッショナルの条件」とともに本書を常にお薦めしている。近年巷で売れている自己啓発書とは一線を画し、決して読みやすいものではないにせよ、精読した時の自身の変化の幅が何回繰り返し読んでも大きいのである。良書はただわかりやすく納得感があるというよりは、考えを揺さぶられる中で自分の頭でも必死に考え、骨肉となるものが多いように感じる。読書は数多くすればよいのではなく、「良書」を数多く読むべきなのだ。そのような当たり前の事実に、本書を読むことによって気付かされることだろう。

本書のターゲットは幅広く、社会での成功を目指す方は皆対象となる。特に大企業で優れた管理職になっていくべき方、経営コンサルタントとして基本を身に付けたい方、自分自身が経営者である方などには、何度でも読み返していただきたい。既に古本屋に売ってしまい、ご自分の書棚に本書が見つからないのであれば、是非この新装版を手に取っていただければと思う。

ライター画像
大賀康史

著者

大前 研一
1943年、福岡県若松市(現北九州市若松区)生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー日本社長、本社ディレクター、アジア太平洋地区会長等を歴任。94年退社。96~97年スタンフォード大学客員教授。97年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院公共政策学部教授に就任。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。オーストラリアのボンド大学の評議員(Trustee)兼教授。
また、起業家育成の第一人者として、05 年4月にビジネス・ブレークスルー大学大学院を設立、学長に就任。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開学、学長に就任。02年9月に中国遼寧省および天津市の経済顧問に、また10年には重慶の経済顧問に就任。04年3月、韓国・梨花大学国際大学院名誉教授に就任。『新・国富論』、『新・大前研一レポート』等の著作で一貫して日本の改革を訴え続ける。『原発再稼働「最後の条件」』(小学館)、『洞察力の原点』(日経BP社)、『日本復興計画』(文藝春秋)、『「一生食べていける力」がつく大前家の子育て』(PHP研究所)、『稼ぐ力』(小学館)、『日本の論点』(プレジデント社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    勘や感覚のみに頼るのではなく、冷徹な分析と人間の経験や勘、思考力を、最も有効に組み合わせた思考形態こそ、戦略的思考と呼べるものである。
  • 要点
    2
    問題点の識別においては、「問題点の絞り方を現象追随的に行うこと」が重要であり、適切に抽象化されれば既存の解決策が活用できる。
  • 要点
    3
    PPMが強力であるのは、戦略的にどの事業を強調するのか、ポートフォリオを振り分ける過程にあり、それこそが大企業のトップに適した管理法にのし上がった理由である。

要約

【必読ポイント!】戦略的思考入門

LuckyBusiness/iStock/Thinkstock
戦略的思考とは ~パッケージツアーと理髪店~

本書は企業参謀としての戦略的思考を核に、今でも経営企画やコンサルティングの現場で頻繁に使われているフレームワークの活用法、それらを企業戦略策定に活かす方法や心構えなどが幅広く扱われた書である。

まず戦略的思考法とはどのような思考法か。パッケージツアーや理髪店に対する興味深い思考を取り上げたい。これは経営コンサルタントでなくとも優秀なビジネスパーソンであれば、日常で行っていることではなかろうか。

ある旅行案内の話。週末に風光明媚なところでスポーツを楽しもうという企画である。ゴルフ、テニス、アーチェリー、サイクリング、ヨット、のどれでも伊勢志摩国立公園という素晴らしい環境の中で楽しむことができるというものだ。

土曜の朝9時にバスで出発し、夕方6時に到着、翌朝にスポーツをして、午後2時半にバスで出発、夜9時半に東京に到着するという計画だ。

分解すれば旅行代1万7000円の内、食事代を引いた1万5000円でスポーツを最大5時間するということだ。スポーツのことだけを考えれば、都心で高価なテニスコートを借りてしまった方がよほど安いということに気付く。大自然の中でテニスをというような「何となく」で他律的にお金を払うのではなく、突き詰めて考え自律的判断をするべきである。

同じように理髪店の料金、1400円(原著出版時の1975年の相場)で約50分の作業のうち、髪を切りそろえる時間は10分強、残りの時間の多くは家に帰ってシャワーを浴びてしまえば何もなくなるものに費やされている。一方で当時の米国では洗髪等は一切なく、(現代の1000円カットのように)髪を切った後は、真空掃除機で吸い取り終わり。正に合理的である。本当にその他作業のリフレッシュにお金を払いたいのか、忙しいから早く済ませたいのか。そう考えればどちらが得であるのか、判断しやすいだろう。

このように勘や感覚のみに頼るのではなく、冷徹な分析と人間の経験や勘、思考力を、最も有効に組み合わせた思考形態こそ、戦略的思考と呼べるものではなかろうか。

問題点の摘出と解決のプロセス
Eraxion/iStock/Thinkstock

問題点がどのように識別されるかによって、問題解決策が優れたものになるかを分ける。問題点識別において重要なことは、「問題点の絞り方を現象追随的に行うこと」にある。

まず現象の抽出は、ブレーン・ストーミング(洗い出しのディスカッション)でも何でも良い。新鋭の他社と比べて劣っている点を集め、共通項に整理、グループで見たときに共通した問題点を見出すのである。

このプロセスを戦略コンサルタントでは、抽象化のプロセスと呼ぶ。よく企業内の業務改善計画を見ると、この抽象化のプロセスを行っていないため、短絡的な答えになりがちだ。

「問題」=事業部人事交流の欠如

「対策」=事業部人事の流出入を容易にし、人事交流を図る

といった具合である。

問題の抽象化が行えれば、問題解決のアプローチは既成の問題解決事例がかなり使えるため、ほぼ答えが出たようなものだ。

本質に迫る方法論 ~イッシュ―・ツリーとプロフィット・ツリー~

どうしたらこうした本質に早くたどり着けるのだろうか。物の本質を本能的にかぎわける天才ではない人々のための方法論を紹介する。

①イッシュ―・ツリー

大きな問題点を提示し、これを相互に重複することのない2つ以上のサブ・イッシュ―への分解を繰り返す方法である。初めは問題が大きく手が付けられないものだが、だんだんと対処可能な問題に分岐する。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3076/4534文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2014.03.28
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
グロースハック
グロースハック
梅木雄平
未読
マーケティングで一番大切なこと 感動できる柔らかなココロがマーケットを創造する
マーケティングで一番大切なこと 感動できる柔らかなココロがマーケットを創造する
西村公志
未読
世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる
世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる
丸幸弘
未読
ヤバい経営学
ヤバい経営学
フリークヴァーミューレン本木隆一郎(訳)山形佳史(訳)
未読
売る力
売る力
鈴木敏文
未読
世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?
世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事にするのか?
戸塚隆将
未読
特別講義 コンサルタントの整理術
特別講義 コンサルタントの整理術
三谷宏治
未読
世界の働き方を変えよう
世界の働き方を変えよう
吉田浩一郎
未読