マーケティングで一番大切なこと 感動できる柔らかなココロがマーケットを創造する

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マーケティングで一番大切なこと 感動できる柔らかなココロがマーケットを創造する
出版社
アスペクト
出版日
2014年02月26日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

マーケティングは経済学・経営学の領域において、最も定義が難しい学問だと思われる。軸となる考えが「顧客志向」であるため、深掘りしていくとその領域は極めて広範であることに気づかされるだろう。経済学・経営学の各分野だけでなく、社会学や心理学、さらにはアートの世界にまで及ぶため、その全てにおいて最新の知見を有する人は極めて限定的であろう。

私自身、大学ではマーケティングを専攻しており、捉えどころが難しいこの学問を学ぶにあたっては、理論を体系立てて学ぶよりも、様々なケーススタディを分析するに留まっていた。それほど、「こうすれば良い」という解を見出すことが困難なのである。

この分野で共通解の一つは『ストーリーとしての競争戦略』(楠木建、東洋経済新報社)にて語られている、「一貫した戦略ストーリー」であろう。『ストーリーとしての~』において、楠木氏はすぐれた戦略を作るにはスキルではなく、センスが必要と語っている。それでは、このセンスとは何か。

本書はこの「センスとは何か」という問いに対する答えを与えてくれるかもしれない。著者である西村公志氏は、マーケティングのキモは変化を受け入れ、次の変化を創り出していく「柔軟なココロ」であると論じている。本書を読めば、マーケティングを日常業務に取り入れるにあたって必要となる「ココロ」構えを学ぶことが出来るだろう。

マーケティングとは全ての仕事に関わるものであり、ぜひ多くの方に本書を手に取っていただきたい。

ライター画像
苅田明史

著者

西村 公志
有限会社ウエストヴィレッジジャパンマーケティング代表取締役。NPO葵プロジェクト理事。株式会社コミュニケーションデザイン顧問。大学ではVMDを専攻研究テーマとし、在学中よりディスプレイなど商業空間演出を百貨店や小売店などで実践。卒業後はマーケティング会社を経て、大手メーカー系列広告代理店に勤務。在籍中にJR京都駅ビル文化施設の基本計画などを策定、主に新規事業開発等を手掛ける。34歳で起業し、商品企画からプロモーションまでをプロデュースし、生活者視点からの公共施設の再構築や、公的団体の新規事業開発なども手掛ける。

本書の要点

  • 要点
    1
    マーケティングの本質は「豊かな未来を語ること」だ。生活者が豊かな未来を思い描いた結果として、その生活を実現できる商品が誕生し、新しいマーケットが創られる。
  • 要点
    2
    新しいマーケットを創造するためには、「感察力」が重要だ。身の周りのものを見るに当たっては、対象を「虫の眼」「鳥の眼」「魚の眼」という3つの異なる視点で見ることがポイントである。
  • 要点
    3
    「豊かな未来の物語」の完成度を高めるためには、「創造性に富んでいること」「共感が得られること」「検証できること」の3つの特徴を有する必要がある。

要約

マーケットを知る

マーケットは常に動いている
Alex/iStock/Thinkstock

本書は4章構成となっており、読者は各章を読むことでマーケティングに必要な「感動できる柔らかなココロ」を持つための視点を養うことができる。

第1章は「マーケットを知る」というタイトルの通り、マーケットやマーケティングの意味を考えながら、その本質について学ぶことができる。

マーケットとは言うまでもなく、需要と供給の取引を行う場のことだ。マーケティングとは、マーケットに現在進行形の「ing」を加えた言葉であり、そのマーケットが生き物のように常に変化し、動き続けていることを意味している。マーケットがなぜ変動するかと言えば、それはマーケットを利用している我々の欲求が絶えず変化しているからだ。

マーケティングとは豊かな未来を語ること

マーケティングの定義は様々だが、その本質を一言でまとめるなら「マーケットを創造すること」だといってよいだろう。著者である西村氏はこの本質を咀嚼して、マーケティングは「豊かな未来を語ること」だと考えている。

豊かな未来の生活を思い描いてみれば「こんなモノがあったらいいな」「こういうサービスがあったら嬉しい」といった欲求が見えてくる。それを想像して語り合い、共感するヒトが増えれば、需要が大きくなり、新しいマーケットが創られる。これを繰り返し、未来の生活が豊かになるように貢献していくことが、マーケティングの使命なのだという。

「豊かな未来を語る」と聞けば、卓越したセンスのような特殊な能力が必要だと感じるヒトもいるかもしれない。だが、そうではなく、未来を語る力は誰にでもある。たとえば「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺があるが、これは「風が吹く」というひとつの事象から未来を語っている好例だ。

同じように、アイドルオタクは、多くのアイドルの卵たちの中から「売れる」アイドルをかなり高い確率で読み当てることが出来る。これは、彼らがファッションや音楽、広告やPRなどに精通しているからではなく、アイドルがいる暮らしを楽しむ生活者として「こういうアイドルがいたら嬉しい」「こういうアイドルを応援したい」と強く実感しているからだ。

どんなヒット商品も、それをマーケットの中に生み出し、育てるのは生活者である。商品があるからマーケットが生まれるのではなく、生活者が豊かな未来を思い描いた結果として、その生活を実現できる商品が誕生し、新しいマーケットが創られるのだ。

量と質を両方見る目を持つ
VladimirFLoyd/iStock/Thinkstock

マーケットに目を向ける際、注目すべきなのは市場規模だけではない。

100円ショップで商品を100万個販売したときの売上と、1億円の宝石を1人に売ったときの売上は同じ1億円である。しかし、ふたつのマーケットの構成内容はまったく異なる。

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要約公開日 2014.03.18
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