人類は長い歴史のなかで、意識の発達段階を新たなステージへと移行させてきた。そしてそのたびに、新たな組織モデルを生み出してきた。本書の第一部では、新たな組織モデルが形成された歴史をたどる。
つづいて第二部では、すでに一歩先の段階にある、進化型(ティール)組織の実際の運営を紹介する。著者は12のパイオニア組織の構造、慣行、プロセス、文化を調査した。多くの場合、対象組織は30~40年にわたり、新しい組織モデルで経営を行っていた。従業員の数は数百人、数千人に及ぶ場合もあった。パイオニア組織はセクターも規模も業種もさまざまだが、試行錯誤の末、驚くほど類似した組織構造と慣行にたどりついている。
第三部では、進化型組織の必要条件や、パイオニア組織を立ち上げる、あるいは既存組織のパラダイム転換をめざす際のヒントを提示していく。
まずは、進化型組織以前の組織モデルの特徴を見ていこう。思想家ケン・ウィルバーが提唱したインテグラル理論では、意識の発達段階をそれぞれ色で識別している。本書ではそれに則り、組織モデルを色で表現する。要約では、組織の体を成していない無色、神秘的(マゼンタ)を割愛している。
・衝動型(レッド)組織:原初の組織形態。集団を統率するために、組織のトップは暴力を行使し、恐怖により支配する。短期志向でマフィアの世界に多く見られる。
・順応型(アンバー)組織:部族社会から国家、文明、官僚制の時代への移行とともに現れた。規則や規範によるピラミッド型の階層構造で、役割も固定され、安定が重視される。軍隊、行政組織によく見られる。
・達成型(オレンジ)組織:目標は競争に勝つことであり、利益を獲得するためにイノベーションをめざす。実力主義を特徴とし、目標達成のための意思決定は上層部に委ねられる。圧倒的に多くの民間企業で見られる形態だ。
・多元型(グリーン)組織:多様性、平等、文化、コミュニティを重視する。権限委譲、多数のステークホルダーの視点を活かしたボトムアップの意思決定をよしとする。
では、進化型組織は、どのようなパラダイムに従っているのだろうか。人間の進化における次の段階は、マズローの「自己実現の欲求」に相当し、「統合的(インテグラル)」「進化型(ティール)」などと呼ばれる。多元型から進化型への移行が、人類の進化においてきわめて重要だと指摘する研究者もいる。また、この進化は今後も続いていくとされる。
私たちは意識レベルが上がると、世界をより広い視点から眺められるようになる。進化型への移行が起こるのも、私たちが自分自身のエゴから自らを切り離せたときである。支配したい、自分を良く見せたいといった欲求を抑制し、人生の豊かさを信頼する能力を高めることが求められる。
エゴに埋没していると、外的な要因によって判断が左右されやすい。衝動型の観点では、自分のほしいものを獲得できるかどうかを、順応型では、社会規範への順応度を基準とする。また、達成型では効果と成功が、多元型では帰属意識と調和が判断基準となる。
これに対し、進化型では、意思決定の基準が外的なものから内的なものへと移行する。「私は自分に正直になっているか」「自分がなりたいと思っている理想の人物は同じように考えるだろうか」。このように自己の内面に照らして判断するため、一見リスキーな意思決定も下すことが可能となる。
3,400冊以上の要約が楽しめる