ティール組織

マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
未読
ティール組織
ティール組織
マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現
未読
ティール組織
出版社
出版日
2018年01月24日
評点
総合
4.3
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

『学習する組織』が日本に紹介されたとき以来のインパクトを与えるといわれる、進化型(ティール)組織。本書の読者層の幅広さ、関心度の高さは驚異的といえる。もちろん、これは一過性の流行ではない。組織の課題を乗り越え、めざす世界観を実現するには、新たな次元の組織を築き上げることが不可欠だと、多くの人が気づき始めているからではないだろうか。

人々の可能性をもっと引き出す組織とはどんな組織なのか。どうすればそれが実現できるのか。こうした問いが本書の核心となる。タイトルの通り、ティール(青緑)の優しい色合いの表紙に導かれるようにページをめくると、組織の固定概念を突き崩すような、パイオニア組織の事例が次々と目に飛び込み、釘付けになる。同時に、こうした実例から抽出された、組織構造や慣例、文化に関する骨太の理論が展開されていく。

『ティール組織』解説者の嘉村氏が、フライヤーのインタビューにて次のように語っていたのが印象的だった。「本書は、あくまで組織の方向性を示す北極星と、参考になる事例集という位置づけ」。組織の開発・運営において、「こうすればよい」という一律の処方箋はない。自分と他者、組織、社会を見つめながら試行錯誤を続けるプロセス自体が重要だというメッセージを、要約者は受け取った。

進化型組織が開く3つの突破口の1つに、「存在目的」というものがある。個人にとっては、自分の存在目的を考えることが出発点かもしれない。ぜひ本書を手に、探求の旅に出かけてみていただきたい。読者のみなさまが、自分と組織の可能性が開かれる瞬間に立ち会えることを心から願う。

ライター画像
松尾美里

著者

フレデリック・ラルー Frederic Laloux
マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わったのち、エグゼクティブ・アドバイザー/コーチ/ファシリテーターとして独立。2年半にわたって新しい組織モデルについて世界中の組織の調査を行い、本書を執筆。12カ国語に翻訳され20万部を超えるベストセラーとなる。現在は家族との生活を最も大切にしながら、コーチや講演活動などを行い本書のメッセージを伝えている。

鈴木 立哉(すずき たつや)
実務翻訳者。一橋大学社会学部卒業。コロンビア大学ビジネススクール修了(MBA)。野村証券勤務などを経て2002年から現職。専門はマクロ経済や金融分野の英文レポートと契約書等の翻訳。著書に『金融英語の基礎と応用 すぐに役立つ表現・文例1300』(講談社)、訳書に『世界でいちばん大切にしたい会社』(翔泳社)、『Q思考』(ダイヤモンド社)など。

嘉村賢州(かむら けんしゅう)
場づくりの専門集団NPO法人場とつながりラボhome's vi代表理事。コクリ!プロジェクト ディレクター(研究・実証実験)。京都市未来まちづくり100人委員会 元運営事務局長。集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、脳科学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外問わず研究を続けている。実践現場は、まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、分野を問わず展開し、ファシリテーターとして年に100回以上のワークショップを行っている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する。その中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、日本で組織や社会の進化をテーマに実践型の学びのコミュニティ「オグラボ(ORG LAB)」を設立、現在に至る。

本書の要点

  • 要点
    1
    人類の意識の発達とともに、新しい組織モデル、進化型(ティール)組織が登場している。進化型組織は、人々がエゴから自己を切り離し、内的な判断基準に従っているという点で、既存の組織モデルと大きく異なっている。
  • 要点
    2
    進化型組織のリーダーの多くは、自分の組織を「生命体」ととらえている。
  • 要点
    3
    進化型組織は、「自主経営(セルフ・マネジメント)」「全体性(ホールネス)」「存在目的」という3つの突破口を開いている。

要約

変化するパラダイム

新しい組織モデルの出現
ipopba/iStock/Thinkstock

人類は長い歴史のなかで、意識の発達段階を新たなステージへと移行させてきた。そしてそのたびに、新たな組織モデルを生み出してきた。本書の第一部では、新たな組織モデルが形成された歴史をたどる。

つづいて第二部では、すでに一歩先の段階にある、進化型(ティール)組織の実際の運営を紹介する。著者は12のパイオニア組織の構造、慣行、プロセス、文化を調査した。多くの場合、対象組織は30~40年にわたり、新しい組織モデルで経営を行っていた。従業員の数は数百人、数千人に及ぶ場合もあった。パイオニア組織はセクターも規模も業種もさまざまだが、試行錯誤の末、驚くほど類似した組織構造と慣行にたどりついている。

第三部では、進化型組織の必要条件や、パイオニア組織を立ち上げる、あるいは既存組織のパラダイム転換をめざす際のヒントを提示していく。

進化型組織以前の組織モデル

まずは、進化型組織以前の組織モデルの特徴を見ていこう。思想家ケン・ウィルバーが提唱したインテグラル理論では、意識の発達段階をそれぞれ色で識別している。本書ではそれに則り、組織モデルを色で表現する。要約では、組織の体を成していない無色、神秘的(マゼンタ)を割愛している。

・衝動型(レッド)組織:原初の組織形態。集団を統率するために、組織のトップは暴力を行使し、恐怖により支配する。短期志向でマフィアの世界に多く見られる。

・順応型(アンバー)組織:部族社会から国家、文明、官僚制の時代への移行とともに現れた。規則や規範によるピラミッド型の階層構造で、役割も固定され、安定が重視される。軍隊、行政組織によく見られる。

・達成型(オレンジ)組織:目標は競争に勝つことであり、利益を獲得するためにイノベーションをめざす。実力主義を特徴とし、目標達成のための意思決定は上層部に委ねられる。圧倒的に多くの民間企業で見られる形態だ。

・多元型(グリーン)組織:多様性、平等、文化、コミュニティを重視する。権限委譲、多数のステークホルダーの視点を活かしたボトムアップの意思決定をよしとする。

エゴから自己を切り離し、内的な判断基準に従う

では、進化型組織は、どのようなパラダイムに従っているのだろうか。人間の進化における次の段階は、マズローの「自己実現の欲求」に相当し、「統合的(インテグラル)」「進化型(ティール)」などと呼ばれる。多元型から進化型への移行が、人類の進化においてきわめて重要だと指摘する研究者もいる。また、この進化は今後も続いていくとされる。

私たちは意識レベルが上がると、世界をより広い視点から眺められるようになる。進化型への移行が起こるのも、私たちが自分自身のエゴから自らを切り離せたときである。支配したい、自分を良く見せたいといった欲求を抑制し、人生の豊かさを信頼する能力を高めることが求められる。

エゴに埋没していると、外的な要因によって判断が左右されやすい。衝動型の観点では、自分のほしいものを獲得できるかどうかを、順応型では、社会規範への順応度を基準とする。また、達成型では効果と成功が、多元型では帰属意識と調和が判断基準となる。

これに対し、進化型では、意思決定の基準が外的なものから内的なものへと移行する。「私は自分に正直になっているか」「自分がなりたいと思っている理想の人物は同じように考えるだろうか」。このように自己の内面に照らして判断するため、一見リスキーな意思決定も下すことが可能となる。

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要約公開日 2018.05.22
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