人は一人ひとり違うし、それぞれの個性がある。それは自明のことだ。だが頭の良し悪しには、どの程度の違いがあるだろうか。
研究者たちの立場は大きく分けて2つある。知能はあらかじめ規定されていて変更が効かないという説と、訓練によって知能は伸ばせるという説である。最近の研究によれば、脳の発達の余地は存外大きいことがわかってきている。
こうした学問上の論争はさておき、どちらの説を信じるかによって、その人の人生は大きく変わってくるだろう。著者は人間のマインドセットについて、「硬直マインドセット= fixed mindset」と「しなやかマインドセット= growth mindset」の2種類があると考えている。
人間の資質は変わらないと考えている「硬直マインドセット」の人は、最初に配られた手札だけで戦っているようなものだ。そのため失敗を受け入れられなかったり、自分を必要以上に大きく見せたいという気持ちが生まれたりする。
その一方で、人間は成長しつづけられると信じる「しなやかマインドセット」の人は、失敗も成長に必要なこととして受け入れ、自分の現状についても正しく受け止められることが多い。
「硬直マインドセット」は他人からの評価に、「しなやかマインドセット」の人は自分を向上させることに興味をもっているといえよう。
どちらのマインドセットを選ぶかによって、人生は大きく変わる。
能力を固定的にとらえると、一回の結果ですべてが決まってしまうと考えがちになる。そういうマインドセットをもつ人にとって、成功とは自分の賢さを示すことであり、優先すべきは他人に優秀だと評されることだ。すると困難な問題からは目を背け、短期的に解決可能な課題だけに取り組む傾向が強くなる。さらには才能さえあれば努力など必要ないと考え、自分の能力を完全に発揮できなくなることも珍しくない。しかし能力を流動的なものだと捉え、努力こそが人を賢くすると考える人にとって、失敗は自分を成長させる糧となる。
人はみな生まれた時点では、学ぶことが大好きだ。失敗を恐れないし、恥ずかしがったりもしない。ところが成長にともない硬直マインドセットが植えつけられると、たちまち失敗しないことにしか取り組みたくなくなる。そして成長が止まってしまう。
失敗を恐れずに果敢に挑戦し、欠点があれば直そうと試みる。そんなしなやかマインドセットがあれば、たとえ自信などなくても尻込みせず、気楽な気持ちで物事に挑戦できるようになる。
並外れた天才たちの業績は神話化されやすく、一人で突然輝かしい栄光を手にしたと考えられがちだ。しかし現実はかならずしもそうではない。
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