AIおよびIoT技術が進化していくなか、経営はどうあるべきか。このことを考えるにあたり、今回のデジタル革命はこれまでとなにが違うのか、その本質的な部分について見ていこう。
第一期のデジタル革命は1980年代に起きた。マイクロソフトとインテルの「ウィンテル」連合が、メインフレームの王者IBMを打ち負かすという下剋上を果たしたのだ。これによりコンピュータ産業の水平分業化が進み、EMS(製造請負サービス)という業態も大きく成長した。だがこの段階では、デジタル革命の影響はコンピュータ産業の域を出ていない。
第二期は1990年代以降、インターネットとモバイル通信技術の飛躍により、簡単に情報へアクセスできるようになった「ユビキタスの時代」を指す。通信手段は固定電話から携帯電話、そしてスマートフォンへと移行した。オーディオ&ビジュアル分野ではそれまで王者に君臨していたソニーが、それまで相手にもしていなかったアップルに首位の座を奪われた。またグーグルやアマゾンが巨大企業へと成長したのもこの頃である。まったく新しいプレイヤーが台頭し、産業構造や競争の構図がダイナミックに書き換えられた。しかし依然としてその影響範囲は、BtoCのAV機器・通信関連の範囲内にとどまっていた。
デジタル革命の第一期と第二期では、劇的な主役交代劇がくりひろげられた。とはいえそれはあくまでコンピュータやAV機器・通信関連産業という、バーチャルでサイバーな空間での出来事にすぎなかった。ほかの産業領域には波及しなかったのだ。
だがデジタル革命は、いよいよ最終段階である第三期に入っていく。AI(人工知能)とIoT技術が、ほぼすべての産業に影響をおよぼし、産業構造や競争の構図を根底から覆すだろう。これまでデジタル革命の影響がおよばなかった医療や介護、建設現場などの労働集約的なサービス産業のほか、農業などの第一次産業にいたるまで、波紋は広がっていくと予想される。
うかうかしていると、既存プレイヤーは駆逐され淘汰されてしまうにちがいない。その一方でこの大変革の波にうまく乗ることができれば、生産性を飛躍的に高め、高賃金の産業へと躍進できるかもしれない。
第三のデジタル革命は、あらゆる産業の構造を根こそぎ変えてしまうだろう。だが重要なのは、目先の事象だけで勝敗を決めてしまわないことだ。
過去の事例を見ればわかるように、マイクロソフトのMS-DOSは基本OSとして生き残れなかったし、検索サービスのビジネス化はもともとグーグルではなくヤフーから始まった。またDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)を世界ではじめて製品化したインテルは、技術面などで日本に圧倒され1985年に撤退したものの、現在は大きな成功を手にしている。
このように産業構造が激変するなか、「稼ぐ」ことのできるビジネスモデルをいち早く構築できるかどうかが、今後の明暗を分ける。技術力があれば勝てるのではない。大事なのは、現実に起きている事象の本質をつかむことなのだ。
第三のデジタル革命がもたらすものを予測することは不可能だ。破壊的イノベーションは、なにが起こるか予測できないから破壊的なイノベーションなのである。ただし過去の出来事を鑑みて、確実にいえることがいくつかある。
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