日本はいま人口減少という大きな問題を抱えている。だがそれだけが経済縮小の理由ではない。チャレンジ精神を失っている企業の多さに、真の問題があるのではないだろうか。
日本企業の大半を占めるのは、中堅・中小企業だ。その経営者年齢のピークは66歳、平均年齢は60歳である。これは若手経営者への事業承継がうまく進んでいないことを意味している。
日本では1980年頃から多くの企業が生まれ、あらゆる業界で激しい競争が繰り広げられた。しかし市場が成熟するにつれ、価格競争が激化。国内での戦いに消耗するうちに、海外市場での競争力も失った。携帯電話や家電メーカーなどの動きを見ても、日本は明らかに成熟期を迎えている。
では日本の企業はこれからどのような道を歩むべきなのか。似通ったビジネスでシェアを奪い合う時代はもう終わりだ。同じビジネスや志をもっているのなら手を組み、積極的に協調するべきである。いま私たちは「業界再編の時代」に直面しているのだから。
しかも単に規模拡大や同業者との争いに勝つことを目的にしたM&Aではいけない。新しい業態を生み出したり、次のステージに進んだりすることを目的とした「業界再編型のM&A」が必要である。その波はすでに到来しているし、今後もさらに進んでいくと考えられる。
「M&Aによる業界再編時代」とは、「2回目の創業をし、ビジネスを進化させていく時代」とも表現できる。成熟した日本で過去の延長線上のビジネスをしていても、苦しくなる一方だ。明確な経営ビジョンをもちながらも、新しいステージに進むべく、もう一度創業しなおすぐらいのインパクトが求められている。
このいわば「第2創業時代」に向けて重要なのが、強い信念をもったビジネスであり、ゆるぎない志である。経営者の大量引退を迎える2018年以降、「第2創業」できるかどうかが、生き残りの条件となる。
業界再編の動きには3つの波がある。
第1の波は、ITによって旧態依然とした業界が変わっていくことだ。従来ならインターネットと親和性が低いとみられた民泊、タクシー業界などがこれに該当する。また税理士や弁護士、医師などの専門家と、顧客との関係も変わるだろう。
第2の波は、業界・部署・技術の境界がなくなることである。これにはモノのインターネット化(IoT)やロボット技術が大きく寄与している。医療業界と旅行業界が「メディカルツーリズム」という新業態を生み出したように、異業種が近接する動きも出はじめている。
第3の波は、「顧客定義によるプラットフォーム化」戦略である。すでに大多数の人にとって必要なインフラは整備されている。そうしたなか顧客ニーズに合わせ、自社をどう定義しプラットフォームの構築をするのか、あらためて考えるべき時代になっている。
以上のようなことを意識しながら、業界再編の波をしっかりと捉え、ビジネスを進化させていくことが肝要である。
「業界再編は避けられない」と明言できる理由は主に3つある。
1つ目の理由は人口の減少だ。日本の人口は2010年をピークに減少を始め、2060年には8674万人にまで減少すると推計されている。人口が減少しはじめると、労働力の確保が容易でなくなり、企業は収益機会を失うリスクに見舞われる。
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