アニメプロデューサーになろう!

アニメ「製作(ビジネス)」の仕組み
未読
アニメプロデューサーになろう!
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アニメ「製作(ビジネス)」の仕組み
未読
アニメプロデューサーになろう!
出版社
出版日
2018年03月23日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

日本のアニメは世界中で認められるほどレベルが高い。それにもかかわらず、アニメ制作会社は経済的に苦しい状況に立たされている。

アニメ『けものフレンズ』などのプロデューサーとして知られる著者・福原氏は、「この構造を変えられるのはアニメプロデューサーだけ」と主張する。彼がとくに問題視するのが、プロデューサーになるためのしっかりした仕組みが日本にはないことである。海外にはプロデューサーになるための大学や専門学校がある。日本もプロデューサー教育に本気で力を入れていかなければ、アニメのようなコンテンツ産業に未来はないだろう。

プロデューサーになるためには、業界についての広範な知識が必要だ。アニメ業界の問題点だけでなく、制作の流れ、資金調達の方法、関連業種のビジネス概要、著作権や契約など、専門的な情報が必要となる。そういう意味で本書はアニメプロデューサーの入門書としてとてもすぐれている。上記の事柄がわかりやすくまとめられているからだ。

またアニメ制作現場の裏話が挿入されているのも、アニメファン的にはたまらないだろう。声優の給与形態やキャラソンビジネスの構造など、他ではなかなか知ることができない情報も満載である。

アニメプロデューサーになりたい人はもちろんのこと、アニメを観る人にはぜひおすすめしたい一冊だ、読めばよりいっそう、この業界の抱える問題やおもしろさが見えてくるにちがいない。

ライター画像
池田明季哉

著者

福原 慶匡(ふくはら よしただ)
ヤオヨロズ株式会社取締役、プロデューサー
1980年神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部卒。デジタルハリウッド大学大学院デジタルコンテンツ研究科修了。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科博士課程入学予定。大学在学中に歌手・川嶋あいの路上ライブの手伝いから音楽業界で働き始める。川嶋のマネージャーを務め、シングル『明日への扉』が90万枚超のメガヒットを記録。その後、アニメーションスタジオ「ヤオヨロズ」を立ち上げ、プロデューサーとして『直球表題ロボットアニメ』『みならいディーバ』『てさぐれ!部活もの』等を担当。アニメ『けものフレンズ』で大ヒットを記録した。音楽業界、そしてアニメ「製作」と「制作」両方を務めた自身の経験を活かし、世界に通用する新時代のプロデューサー教育を試みている。

本書の要点

  • 要点
    1
    時代はハードからソフトへと移行している。日本はコンテンツ産業、とくにアニメで勝負するしかない。しかしビジネス的な観点だと、日本のアニメ業界は依然として未熟なままだ。
  • 要点
    2
    日本のアニメはレベルが高いが、実際にアニメを作っている制作会社に十分な資金が回っていない。その状況を打破できるのは、クリエイティブとビジネスの両方に長けたアニメプロデューサーだけである。
  • 要点
    3
    アニメプロデューサーにもっとも必要なのはコミュニケーション能力だ。プロデューサーの仕事は、人とコミュニケーションを取ることがすべてである。

要約

アニメビジネスが日本の未来を担う

ハードからソフトへの移行

技術の発達により、ハードの性能はあらゆる分野ですでに極まっている。技術的にこれ以上の進化をしたとしても、そこまで高性能なものは求められないだろう。すると「それほど高性能でなくてもいいから、安いものが欲しい」という人が増え、価格競争になる。だが新興国に安さで勝つことはできない。日本がかつて得意としていた「ハードでの勝負」では勝ち目がないのである。

これからの日本はソフトで勝負するべきだ。資源も土地も労働人口もない日本が世界で戦っていけるとすればコンテンツ産業、なかでもアニメしかない。いまやアニメは世界中で認知されるコンテンツである。アニメ業界は、日本を強くする可能性を秘めているといえる。

ビジネスとして未熟なアニメ業界
DKsamco/iStock/Thinkstock

いまのところ日本のコンテンツ産業は輸出が少ない。日本のアニメはレベルが高く、世界中でニーズがあるにもかかわらず、輸出が下手なためビジネスとしてはまだ発展途上のままだ。

また日本のアニメ業界の問題として、実際にアニメを作っているアニメーターの報酬が低いことが挙げられる。アニメ産業の売り上げには、DVD・BDやグッズの販売も含まれるのだが、これらの売り上げはアニメスタジオに入らないことがほとんどだ。そのため現場スタッフの経済状況は非常に苦しいのが現状である。

アメリカなどの諸外国では、才能ある人間には正当な報酬が支払われている。日本のアニメ業界も構造を変えていかなければ、人材の流出や産業の先細りを招く。今後の日本を引っ張っていける可能性のある産業が、それではいけない。

プロデューサーのもっとも重要な仕事は、クリエイターに多くの報酬を払い、より制作に集中できる環境を作ることだ。日本のアニメの構造を変え、アニメビジネスを変革することができるのは、アニメプロデューサーだけなのである。

なぜアニメ界は自転車操業なのか

赤字前提のビジネスモデル

日本のアニメの多くは、製作委員会方式を取っている。これは複数の会社が資金を出し合ってアニメを作る仕組みだ。

じつは製作委員会方式の場合、赤字が前提となっており、本当に黒字なのは上位数本だけである。そもそもが「何本かに1本大当たりすればよい」というビジネスモデルでスタートしているのだ。もちろんコンテンツ産業には博打的要素がつきものだが、とくにアニメは予算回収の難易度が高い。

もともと製作委員会方式は、リスク回避のために作られたという経緯がある。アニメや映画は、制作費が高いわりに利益が保証されない。ひとつの会社が単独で制作費を出す場合、作品が失敗に終わると会社の存続に関わる。製作委員会方式は、出資者を複数募ることでリスクを分散させているのだ。

著作権がない制作会社
Jirsak/iStock/Thinkstock

製作委員会方式の場合、企業は多数の作品に少額出資することが多い。そのほうがリスクを減らせるからだ。すると投資一口の金額を増やすのではなく、投資の頭数を増やす方向へ動くようになる。その結果、アニメの本数はどんどん増え、供給過多でファンが分散し、大ヒットが生まれにくくなってしまう。

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要約公開日 2018.06.02
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