アーティストは、レコード会社、プロダクション、音楽出版社の3者と契約を結ぶのが一般的だ。アーティストはレコード会社と「専属実演家契約」を結ぶ。この契約は、アーティストがレコード会社の専属となり、契約期間中、そのレコード会社でのみ実演を行うことを約束するものだ。「実演」とは、著作権法上の用語で、歌唱や演奏を行うことを言う。アーティストは、契約したレコード会社の許諾がない限り、他のレコード会社が発売するビデオや音楽配信などのために歌ったり、演奏したりすることはできない。
また、この契約には通常、レコード会社がアーティストの実演をレコードなどにして販売できること、アーティストの氏名や肖像などを無償で自由に使えるといったことも含まれる。
次に、アーティストはプロダクションとマネージメント契約を結ぶ。これはアーティストがプロダクションに所属する契約だ。アーティストはプロダクションに無断でアーティスト活動ができなくなる。
この契約には、アーティストが創作活動や実演活動から生じたすべての権利をプロダクションに譲渡する、という内容が含まれる。プロダクションは、アーティストの演奏活動などから収入を得て、それをアーティストと分け合う。報酬の決め方には固定給制、歩合制などがある。
最後に、アーティストは音楽出版社と著作権契約を結ぶ。この契約は、音楽出版社がアーティストの楽曲の著作権を管理し、プロモーションを行うというものだ。この契約により、アーティストの著作権はすべて音楽出版社に譲渡される。
音楽著作権は大きな経済的価値を持つ権利である。この契約では、音楽出版社は著作権を得る代わりに、積極的、継続的にプロモーションを行うという義務を果たさなければならない。音楽産業では、アーティストを中心に契約を結んだ者すべてが、各自の役割を果たすことで、アーティストのブレイクをめざしていく。
レコード会社の主な機能は、企画、制作、宣伝、製造、販売の5つだ。しかし、最近は分業化が進んでおり、製造や販売業務が外部委託されることも多い。本来、企画、制作、宣伝の3つはレコード会社の存在意義と考えられている。しかし、近年はレコード会社の中核を担う機能である原盤制作(レコードの元となる音源制作)も、プロダクションや音楽出版社が手掛けることが増えている。
また、レコード会社はアーティストの実演を利用してレコードやビデオを販売し、利益を得る。その利益はアーティスト印税としてアーティストに支払われる。アーティストが印税率アップを交渉する相手はレコード会社となる。
プロダクションの主な業務は、アーティストの育成、プロモーション、スケジュール管理、仕事相手との条件交渉、ライブ・コンサートの企画運営などだ。プロダクションはこれらの業務を行うことで、アーティストの活動による収益の最大化を図る。
アーティストは煩雑な業務から解放されることで創作活動に専念でき、こちらも収益の最大化をめざす。アーティストとプロダクションは二人三脚で、アーティストのブレイクをめざす関係にある。
アーティストはレコード会社と専属実演家契約を結ぶが、ここにプロダクションが加わり、三者契約となるのが一般的だ。この場合、レコード会社からプロダクションにアーティスト印税が支払われることになる。この三者契約では、アーティストが契約期間中にプロダクションを辞めた場合、アーティストに非常に不利な契約になりやすいので気をつけなければならない。
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