よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 5th Edition

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よくわかる音楽著作権ビジネス 基礎編 5th Edition
出版社
リットーミュージック

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出版日
2018年02月23日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

アーティストや作詞、作曲家、アレンジャー、あるいはプロデューサーに憧れを抱いたことのある読者もおられるだろう。では、その中で一体どれだけの人が、「音楽著作権」について知っているだろうか。

本書は、音楽業界での活動に欠かせない「お金と権利の話」の教科書である。アーティストは華やかなイメージがあるが、音楽業界で活躍し、成功するには、こうした法律的な知識も欠かせない。「音楽に関係ないから」と、権利に関する知識を持たぬまま周囲に任せきりにしていると、知らぬ間に不利な契約を結ばされていた、ということにもなりかねない。自分の利益は自分で守らなければならないのだ。

本書は、架空のアーティスト「ケンゾウ君」が、デビューからブレイクするまでの過程で生じる様々な権利の問題について、具体的な場面を想定しながら解説する形式となっている。マンガや図、実際の判例などが随所にはさまれており、初心者にもわかりやすい。イメージがつきにくい法律の用語も、すんなり飲み込めるように工夫が凝らされている。

音楽業界に携わる方や、音楽業界に関心のある方だけでなく、一般の音楽ファンも楽しめる。ニュースで度々耳にする「所属事務所(あるいはレコード会社)とのトラブル」というのは、具体的にどのようなことが起きているのか。こうしたことも理解できるようになっている。また、コラムとして業界の裏話や有名な権利トラブルの真相なども挿入されており、興味深い。音楽著作権ビジネスの現在をとらえるのに欠かせない一冊だ。

ライター画像
池田明季哉

著者

安藤 和宏(あんどう かずひろ)
1963年生まれ、東京都葛飾区出身。東京学芸大学卒業、フランクリンピアース・ローセンター(LL.M.)、ワシントン大学ロースクール(LL.M.)修了、早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程博士研究指導終了(法学博士)。高校教諭、音楽出版社の日音、キティミュージック、ポリグラムミュージックジャパン、セプティマ・レイ、北海道大学大学院法学研究科特任教授を経て、現在は東洋大学法学部教授。専門は知的財産法、音楽ビジネス論。著書に『よくわかる音楽著作権ビジネス 実践編 5th Edition』、『よくわかるマルチメディア著作権ビジネス(増補改訂版)』、『インターネット音楽著作権Q&A』、『夢の印税生活』(共にリットーミュージック)、『情報は誰のものか?』(分担執筆、青弓社)、『アメリカ著作権法とその実務』(共訳、雄松堂出版)等がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    アーティストは一般的に、レコード会社、プロダクション、音楽出版社と契約する。レコード会社はレコード制作販売、プロダクションはアーティスト育成とマネージメント、音楽出版社は著作権管理とプロモーションを主に行う。
  • 要点
    2
    音楽出版社はJASRACに入会する。アーティストの著作権は、音楽出版社に譲渡され、さらにJASRACに譲渡される。JASRACは代理人ではなく、著作権者として作品の許諾を行い、著作権を管理する。
  • 要点
    3
    著作権には財産的権利と人格的権利があり、譲渡できるのは財産的権利だけである。

要約

【必読ポイント!】 音楽産業の基本構造

アーティストが結ぶ3つの契約
Rebbeck_Images/iStock/Thinkstock

アーティストは、レコード会社、プロダクション、音楽出版社の3者と契約を結ぶのが一般的だ。アーティストはレコード会社と「専属実演家契約」を結ぶ。この契約は、アーティストがレコード会社の専属となり、契約期間中、そのレコード会社でのみ実演を行うことを約束するものだ。「実演」とは、著作権法上の用語で、歌唱や演奏を行うことを言う。アーティストは、契約したレコード会社の許諾がない限り、他のレコード会社が発売するビデオや音楽配信などのために歌ったり、演奏したりすることはできない。

また、この契約には通常、レコード会社がアーティストの実演をレコードなどにして販売できること、アーティストの氏名や肖像などを無償で自由に使えるといったことも含まれる。

次に、アーティストはプロダクションとマネージメント契約を結ぶ。これはアーティストがプロダクションに所属する契約だ。アーティストはプロダクションに無断でアーティスト活動ができなくなる。

この契約には、アーティストが創作活動や実演活動から生じたすべての権利をプロダクションに譲渡する、という内容が含まれる。プロダクションは、アーティストの演奏活動などから収入を得て、それをアーティストと分け合う。報酬の決め方には固定給制、歩合制などがある。

最後に、アーティストは音楽出版社と著作権契約を結ぶ。この契約は、音楽出版社がアーティストの楽曲の著作権を管理し、プロモーションを行うというものだ。この契約により、アーティストの著作権はすべて音楽出版社に譲渡される。

音楽著作権は大きな経済的価値を持つ権利である。この契約では、音楽出版社は著作権を得る代わりに、積極的、継続的にプロモーションを行うという義務を果たさなければならない。音楽産業では、アーティストを中心に契約を結んだ者すべてが、各自の役割を果たすことで、アーティストのブレイクをめざしていく。

レコード会社の役割

レコード会社の主な機能は、企画、制作、宣伝、製造、販売の5つだ。しかし、最近は分業化が進んでおり、製造や販売業務が外部委託されることも多い。本来、企画、制作、宣伝の3つはレコード会社の存在意義と考えられている。しかし、近年はレコード会社の中核を担う機能である原盤制作(レコードの元となる音源制作)も、プロダクションや音楽出版社が手掛けることが増えている。

また、レコード会社はアーティストの実演を利用してレコードやビデオを販売し、利益を得る。その利益はアーティスト印税としてアーティストに支払われる。アーティストが印税率アップを交渉する相手はレコード会社となる。

プロダクションの役割
ipopba/iStock/Thinkstock

プロダクションの主な業務は、アーティストの育成、プロモーション、スケジュール管理、仕事相手との条件交渉、ライブ・コンサートの企画運営などだ。プロダクションはこれらの業務を行うことで、アーティストの活動による収益の最大化を図る。

アーティストは煩雑な業務から解放されることで創作活動に専念でき、こちらも収益の最大化をめざす。アーティストとプロダクションは二人三脚で、アーティストのブレイクをめざす関係にある。

アーティストはレコード会社と専属実演家契約を結ぶが、ここにプロダクションが加わり、三者契約となるのが一般的だ。この場合、レコード会社からプロダクションにアーティスト印税が支払われることになる。この三者契約では、アーティストが契約期間中にプロダクションを辞めた場合、アーティストに非常に不利な契約になりやすいので気をつけなければならない。

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要約公開日 2018.07.16
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