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出版社
出版日
2018年04月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「書籍PR」の本というと、出版業界以外で働く人には関係ないと思うかもしれない。だが本書には、どんな業界のどんな職業の人にも役立つヒントが満載だ。著者の仕事のスタイルをひと言で表すと、帯にある通り「巻き込み仕事術」である。素晴らしい本を、一人でも多くの未来の読者に届けるため、書店、出版社、メディア、そして読者をつなぐのが書籍PRの仕事だ。

「つなぐ」を掘り下げると、「売り込み」と「調整」になる。いくら「売り込み」が仕事とはいえ、関係者の都合を考えずに一方的に押し売りしても、当然うまくいくはずがない。著者の仕事は、あらゆる局面で全方位的な「調整」の連続だ。いかに多くの人を巻き込めるか。書籍PRの成否はここにかかっている。

著者がこの仕事を始めてから15年。100万部を超えるヒット作から、あまり世間の話題に上らず終わってしまった本まで、数多くの経験から成功の秘訣や失敗の要因を語っている。そのうえで、「なにかを売り込むことに悩みを抱える」読者にエールを送っている。

もちろん、本の話題が満載なため、読書好きの人にとっては、ヒット作の舞台裏を垣間見れるのも魅力だ。「出版不況」などと言われて久しいが、著者の熱意あふれる奮闘ぶりを知れば、「本が売れない」と嘆く前にやるべきことがいくらでもあるとわかるだろう。出版業界だけに閉じこもらず、テレビやラジオなど、隣接するメディア業界との連携によって、本の世界はまだまだ広がる余地がある。

ライター画像
小島和子

著者

奥村 知花(おくむら ちか)
本しゃべりすと/書籍PR
1973年、東京生まれ。成城大学文芸学部卒。総合アパレル商社、レストラン業界を経て、2003年より書籍専門のフリーランス広報として独立。以後、新刊書籍のパブリシティ活動のほか、「本しゃべりすと」という独自の肩書きのもと、雑誌の特集記事や書評エッセイの連載執筆、ラジオ番組などでの書籍紹介を担当している。

本書の要点

  • 要点
    1
    著者の「書籍PR」という仕事は「書籍専門のパブリシティ」だ。担当する本の存在を世間に知らせ、より多くの読者に届くように、あらゆるメディアに売り込む役割を担っている。
  • 要点
    2
    PRの肝は、人と人とをつなぐことである。すべての関係者を巻き込みながら、いいチームをつくっていくことが、PRの成否を握る。
  • 要点
    3
    出版社からは「テレビに出してほしい」という要望が多いが、テレビ制作側の事情を知らない場合も多い。本の売上につながるメディア露出には、番組に合わせた「ストーリー」が欠かせない。

要約

書籍PRという仕事

広告・宣伝とはどう違うのか?

「書籍PR」という肩書きから、その仕事内容を具体的にイメージできる人は少ないかもしれない。広義の「PR」には「広告」や「宣伝」も含まれるが、著者の仕事は「書籍専門のパブリシティ」だ。担当する本の存在を世間に知らせ、多くの読者に届くように、あらゆるメディアに「売り込む」役割を担っている。

現在は、年間に何万点もの新刊が出る。どんなに素晴らしい内容の本でも、ほかの本に埋もれてしまい、本来届くべき読者の目に触れないで終わることも多い。そこで、テレビ番組で取り上げてもらったり、雑誌で著者インタビューをしてもらったりして露出を図り、「本と読者の出会い」を増やすのが書籍PRという仕事だ。単純に対価を払ってメディアの広告枠を買う仕事とは異なる。

テレビに出れば本が売れるとは限らない
Nastco/iStock/Thinkstock

出版社からの依頼で最も多いのは、「この本をテレビに出してほしい」というものだ。テレビ離れなどとも言われているが、依然として、お茶の間へのテレビの影響力は大きい。テレビで紹介されれば、新聞や雑誌の書評欄を熱心に見るような読書家以外にも広くアピールできる。

だが、書籍をテレビで取り上げてもらうのは簡単なことではない。出版社側が「売り」だと思っているポイントと、テレビ制作側が取り上げたいポイントに、ズレがあることが多いためだ。例えば、一般にビジネス書はテレビでの宣伝が難しい。書籍紹介コーナーを持つような情報バラエティ番組は、主婦や年配者を主なターゲットにしている。そのため、本の購買層と合わない。あるいは、ダイエット本なら視聴者と読者層が合うだろうと思っても、あまたあるダイエット本の中で、類書とどう違うのか、どれほど番組に向いているのかを制作スタッフに納得してもらえなければ、取り上げてもらえない。

PRに向く本を見極める4つのポイント

依頼があった仕事を受けるかどうかを決める際、著者は4つの基準をもとに、パブリシティに向く本を見極めている。1つめは、公序良俗に反していないこと。例えば、自殺のハウツーを説いたものなど、社会的によくないと思われる内容の本や、本の著者が訴訟沙汰で争っているものは、十分なパブリシティの効果を見込めない。

2つめのポイントは、本の内容が「旬」であること。例えば片付けの本であれば、年末の大掃除シーズンに向けて売り出したい。そうした旬がある、もしくは旬を作りだせる可能性がある作品を選んでいる。

3つめのポイントは、著者もしくは著者に代わる著名人がメディアに出演できること。そのほうが断然説得力が増すからだ。著者が海外在住で来日が難しい場合には、その道の専門家や翻訳者など、著者の代わりになる人の存在が重要になる。

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要約公開日 2018.07.30
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