「書籍PR」という肩書きから、その仕事内容を具体的にイメージできる人は少ないかもしれない。広義の「PR」には「広告」や「宣伝」も含まれるが、著者の仕事は「書籍専門のパブリシティ」だ。担当する本の存在を世間に知らせ、多くの読者に届くように、あらゆるメディアに「売り込む」役割を担っている。
現在は、年間に何万点もの新刊が出る。どんなに素晴らしい内容の本でも、ほかの本に埋もれてしまい、本来届くべき読者の目に触れないで終わることも多い。そこで、テレビ番組で取り上げてもらったり、雑誌で著者インタビューをしてもらったりして露出を図り、「本と読者の出会い」を増やすのが書籍PRという仕事だ。単純に対価を払ってメディアの広告枠を買う仕事とは異なる。
出版社からの依頼で最も多いのは、「この本をテレビに出してほしい」というものだ。テレビ離れなどとも言われているが、依然として、お茶の間へのテレビの影響力は大きい。テレビで紹介されれば、新聞や雑誌の書評欄を熱心に見るような読書家以外にも広くアピールできる。
だが、書籍をテレビで取り上げてもらうのは簡単なことではない。出版社側が「売り」だと思っているポイントと、テレビ制作側が取り上げたいポイントに、ズレがあることが多いためだ。例えば、一般にビジネス書はテレビでの宣伝が難しい。書籍紹介コーナーを持つような情報バラエティ番組は、主婦や年配者を主なターゲットにしている。そのため、本の購買層と合わない。あるいは、ダイエット本なら視聴者と読者層が合うだろうと思っても、あまたあるダイエット本の中で、類書とどう違うのか、どれほど番組に向いているのかを制作スタッフに納得してもらえなければ、取り上げてもらえない。
依頼があった仕事を受けるかどうかを決める際、著者は4つの基準をもとに、パブリシティに向く本を見極めている。1つめは、公序良俗に反していないこと。例えば、自殺のハウツーを説いたものなど、社会的によくないと思われる内容の本や、本の著者が訴訟沙汰で争っているものは、十分なパブリシティの効果を見込めない。
2つめのポイントは、本の内容が「旬」であること。例えば片付けの本であれば、年末の大掃除シーズンに向けて売り出したい。そうした旬がある、もしくは旬を作りだせる可能性がある作品を選んでいる。
3つめのポイントは、著者もしくは著者に代わる著名人がメディアに出演できること。そのほうが断然説得力が増すからだ。著者が海外在住で来日が難しい場合には、その道の専門家や翻訳者など、著者の代わりになる人の存在が重要になる。
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