人と会わなくても仕事が進められる時代になった。資料は直接持参するのが最も丁寧だとされていた20世紀とは異なり、今や、資料を送ってくれる相手の顔や声を全く知らないということも珍しくない。
もしこんな時代に、手書きの資料を届ける人がいたらどうか。非合理的だが、印象には必ず残る。そこで自分をアピールできるのだ。特に営業を仕事にしている人なら、取引先に対して自分をアピールしたくないと思う人などいないはずだ。営業とは、何らかの形でアピールし、覚えてもらい、仲良くなり、そこから仕事が始まるものだからだ。
日本では今、接待が減っている。10年前と比較して、交際費などの支出額が1476億円も減っているのだ。そんな時代だからこそ、周りがやっていない接待をするべきだ。周りがやっていないことをアピールするしかない。
接待の目的は、相手と仲良くなることだ。つまり、相手を知り、こちらを知ってもらうことだ。そうすれば、情報を得やすくなるし、こちらのお願い事を聞いてもらいやすくなる。
接待は真剣勝負だ。いい店で、いいものを食べながらいいものを飲み、楽しい話をして2時間ほど過ごす。勘定はこちらがすべて持ち、2軒目、3軒目があるにせよ、最後にはしっかりお見送りするというのが接待のパターンだ。
ここでは、接待する側のセンス以上に、本気度が問われる。つまり、どんな店を選ぶのか、どんなものを食べて飲むのか、どんな話をするのか、2軒目以降にどんな店を用意しておくのかといったことだ。
接待はプロジェクトなので、入念な準備が欠かせない。グルメサイトで話題になっている店を予約するだけでは不十分だ。どんな特徴のある店なのか? その店までの行き方を説明できるか? 店の雰囲気は悪くないか? BGMがうるさすぎはしないか? 周りにはどんな客が多いか? 店員は呼んだらすぐに来てくれるか? 先方の苦手な食材、料理が売りではないか? 先方にアレルギーはないか? 2軒目以降のプランは? それらを考え、調査し、決定しなければならない。
しっかりと準備されているか否かは、接待される側にはすぐにわかる。だから、準備が不十分な接待なら、しないほうがましだ。一方、しっかりと準備された芸術的な接待は、相手の心に残る。
接待で重要なのは、頻度よりインパクトだ。
目指すべきは、「あの人の接待はすごい」と周りに言ってもらえるような接待だ。たとえそつがなかったとしても、印象に残らない接待は、なかったに等しい。一方で、強烈なインパクトを残す接待は、語り継がれるものだ。インパクトを与えることができれば、その接待の経験者からは「また接待してほしい」と言われ、話を伝え聞いた人からは「私も接待して欲しい」という声が聞こえてくる。接待は本来、こちらからお願いしてセッティングするものだ。それを相手から求めてくるのだから、願ってもないことだろう。
接待の準備において最も重視すべきは、店選びだ。これが接待のほぼすべてと言っていい。
接待をする店は、決してグルメサイトの星の数だけで選んではならない。まず、
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