2004年、スポーツ記者の著者は1918年以来となるワールドシリーズ制覇を成し遂げたボストン・レッドソックスを密着取材した。以前のレッドソックスは規律に欠け、有力なチームとは見られていなかった。しかし2004年のレッドソックスは違った。一体感をもってプレーする、不屈のチームへと姿を変えていたのだ。
レッドソックスはなぜ強いチームへと変貌したのか? その火つけ役はなにか? そんな疑問を抱いた著者は、スポーツでトップクラスの業績をあげたチームの類似点を探るべく、約11年にわたって世界各国主要スポーツ37種、1200以上のスポーツチームを研究した。そして歴史に残る業績をあげつづけたチームに共通していたのは、たった1つの要素だったという事実を発見する。そのたった1つの要素とは、チームを率いる「常勝キャプテン」の存在であった。
著者は1000以上のチームのなかから、卓越した業績を残したチームとして、以下の16チームを選抜した。
(1)オーストラリアンフットボール(1927-30)のコリングウッド・マグパイズ
(2)MLBのニューヨーク・ヤンキース(1949-53)
(3)ハンガリー・サッカー男子代表(1950-55)
(4)NHLのモントリオール・カナディアンズ(1955-60)
(5)NBAのボストン・セルティックス(1956-69)
(6)ブラジル・サッカー男子代表(1958-62)
(7)NFLのピッツバーグ・スティーラーズ(1974-80)
(8)ソ連・アイスホッケー男子代表(1980-84)
(9)ニュージーランド・オールブラックス(1986-90)
(10)キューバ・バレーボール女子代表(1991-2000)
(11)オーストラリア・フィールドホッケー女子代表(1993-2000)
(12)アメリカ・サッカー女子代表(1996-99)
(13)NBAのサンアントニオ・スパーズ
(14)プロサッカーのバルセロナ(2008-13)
(15)フランス・ハンドボール男子代表(2008-15)
(16)ニュージーランド・オールブラックス(2011-15)
本書ではこれら16チームを、もっとも高い階層にいるという意味で「ティア1」と呼ぶ。
ティア1に該当するチームのキャプテンの経歴を調べてみると、興味深いことがわかった。ティア1のチームを率いるキャプテンは、典型的なリーダー像に一致しなかったのだ。
まず彼らはスーパースターの素質にかけており、スポットライトを好まなかった。チームをリードする従来の意味での「リーダー」ではなく、そのほとんどが補佐的な役割に終始している。
加えて理想的なスポーツマン像ともかけ離れていた。反則すれすれのプレーも辞さず、スポーツマンらしからぬ行為をとる場合もあった。ときには監督の命令を無視したり、チームのルールや戦略に従わなかったりと、チーム内に分裂を生みかねないこともしている。
さらに世間では典型的なキャプテンといわれている人たちのほとんどが、ティア1のチームのキャプテンではないことにも注目してほしい。たとえばニューヨーク・ヤンキースのデレク・ジーターは、このリストから外れている。
卓越した業績を残したティア1のキャプテンは、行動、信念、仕事への取り組み方が共通している。一見すると衝動的、自滅的で不適格とも思われた彼らの行動は、実のところチームを強化するうえで役立っていたのだ。
ティア1のキャプテンには7つの共通点がある。
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