アナログの時代には製品・サービスに差があったものだが、今や、製品・サービスの優位性や差別化で勝負することは非常に難しくなっている。かといって、安さで勝負することもできない。なぜなら、実店舗を持たないネットショップなどで、同じものがもっと安く販売されているからだ。
日本のメーカーが陥っている根本的な問題は、自社で抱えている製造設備と人間を稼働させなければならないということだ。だから操業度重視になり、市場のニーズよりも企業側の意向を優先した発想になってしまっている。こうした発想は、大きく時代からずれてしまっているといえる。
現代における勝ち組企業の必須条件は、製造設備や人材を社内に抱え込まないことに加え、「お客さんのことが分かっていて、お客さんの意見を聞いて、それを実現するためのソリューションが作り出せる」ということだ。つまり、「ソリューションファースト」の発想である。
「ソリューションファースト」の企業は、顧客のことがよく分かっている企業、つまり「お客さんを握っている企業」だといえる。たとえば、NTT(日本電信電話株式会社)は、電話料金の徴収を通して、膨大な顧客の信用情報(支払い能力)を握っている。もしNTTが握っている顧客のデータ、信用情報をベースにプラットフォーム(顧客管理・決済)機能を強化すれば、NTTは巨大な決済専業銀行になれるはずだ。
なぜ日本企業は「ソリューションファースト」と「客を握る」の2つが実現できていないのか。その理由は、「業界秩序」と国・行政の「規制」にある。
今、中国では、スマートフォンを使った「スマホ決済」が支払いの主流となっている。これは、中国のEC最大手企業・アリババと、中国最大のチャットサービス・Wechatのテンセントがスマホ決済サービスを提供したことによる。この2社が中国の決済システムを変えられたのは、中国には業界秩序がほとんど存在しなかったからだ。
一方、日本には、強固な業界秩序があり、それをいきなり崩すことはできない。決済システムの例で言うと、日本では、クレジットカード決済によって銀行が儲ける仕組みになっている。銀行は、クレジットカード決済の処理業務を請け負うことによって儲けているのである。
また、「NTTが銀行になる」ということが簡単に実現できないのは、通信事業と金融事業では行政の管轄が異なるからだ。こうした規制も、日本企業をしばる足かせとなっている。
業界秩序と規制があるなかで勝ち組企業になるには、
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