世界最先端のマーケティング

顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略
未読
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顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略
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世界最先端のマーケティング
出版社
出版日
2018年02月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書のタイトルである『世界最先端のマーケティング』。これが具体的に指すのは「チャネルシフト戦略」のことである。ネットとリアルを組み合わせたチャネルを通して顧客データを収集。そのデータを使って販促・価格・商品のすべてを個々の顧客に合わせて最適化する戦略だ。

ただ、「チャネルシフト戦略」と聞いても、自分とは無縁の話のように感じる方もいるかもしれない。しかし、本書はそう感じている方の固定観念を突き崩してくれる。自営業者から中小企業、大企業に勤務する人まで全てのビジネスパーソンにとって有用な一冊となるだろう。

近年、購買行動はより複雑なものへ変化してきている。その変化はスマートフォンの普及によるところが大きい。顧客はオフライン店舗において商品購入前にネット上の商品レビューを参考にしたり、逆に店舗で実際に商品を見てから価格が安いオンラインで購入したりするようになった。

本書ではこのような購買行動の変化を味方につけるための具体的な戦略と指針が、国内外の豊富な最新事例や図解とともに、わかりやすく解説されている。オンラインとオフラインのチャネルを組み合わせて顧客とのつながりを強化し、躍進を続けているアマゾンの実例などは、学ぶべきものが多く、非常に理解しやすい。マーケティングに関わる方の必読書として本書をお薦めしたい。

著者

奥谷 孝司(おくたに たかし)
オイシックスドット大地COCO(チーフ・オムニチャネル・オフィサー)
1997年良品計画入社。店舗勤務や取引先商社への出向(ドイツ勤務)、World MUJI企画、企画デザイン室などを経て、2005年衣料雑貨のカテゴリーマネージャーとして「足なり直角靴下」を開発して定番ヒット商品に育てる。2010年WEB事業部長に就き、「MUJI passport」をプロデュース。201年10月にオイシックス(現オイシックスドット大地)に入社し、現職に。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)。2017年10月Engagement Commerce Lab.設立。日本マーケティング学会理事。

岩井 琢磨(いわいたくま)
1993年大広入社。インストア・プランナー、クリエイティブ・ディレクター、ブランド・コンサルタントなどを経て現職。流通業・製造業などの企業を対象とした、部署横断型の事業変革プロジェクト、企業ブランド再生および企業コミュニケーション設計プロジェクトを数多く手がけている。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了(MBA)。著書に『物語戦略』(共著、日経BP社)『ゲーム・チェンジャーの競争戦略』(共著、日本経済新聞出版社)がある。日本マーケティング学会会員。

本書の要点

  • 要点
    1
    ネットとリアルを融合させたチャネルを通して、顧客の行動データを収集し、データを使って販促・価格・商品のすべてを、「個客」ごとに最適化する。この戦い方を「チャネルシフト戦略」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    ECを出自とするアマゾンのような企業は、顧客の購入段階だけでなく、選択・使用段階においても接点をつくろうと試みる。さらに、オフラインにおいても、オンラインと同じような感覚で店舗や個客との接点を構築していく。
  • 要点
    3
    「チャネルシフト戦略」を実行するにあたり、把握すべきデータは、顧客を「個客」として認識できるプロフィールデータと購買行動を可視化できる行動データである。

要約

チャネルシフトを進めるアマゾンの脅威

アマゾンがリアル店舗を展開する理由

チャネルシフト戦略とは何か。それは、オンラインを基点としてオフラインに進出し、顧客とのつながりを創り出すことによって、マーケティング要素全体を変革しようとする戦い方である。こうした動きに対抗するには、チャネルの認識を「販売の場」から、「顧客とのつながりをつくる場」へと変えなければならない。

アマゾンはオンラインに軸足を置く企業である。しかし現在は、オフラインにおいても次々とチャネルを設け、顧客を取り込んでいる。顧客の自宅ではAmazon DashやAmazon Echoを、リアル店舗としてはAmazon GoやAmazon Booksを展開。さらに2017年には、高級スーパーのホールフーズ・マーケットを買収している。

これらは単なる「販路の多様化」ではない。ネットとリアルを融合させたチャネルを通して、顧客の行動データを収集する。そのデータを使って、販促・価格・商品のすべてを「個客」ごとに最適化するのがアマゾンの狙いだ。これこそチャネルシフト戦略である。

オフラインに出現したオンライン購入のゲートAmazon Dash
scanrail/iStock/Thinkstock

2016年12月、アマゾンはAmazon Dashというボタンを日本で導入し始めた。飲料や洗濯洗剤、おむつなどの特定銘柄を、ボタンを押すだけで購入できるというものだ。

Amazon Dashはプライム会員のみ使用できる。対象商品は、日用品を中心に約20カテゴリ・130種類以上のブランドに及ぶ。これまではアマゾンユーザーでも、洗剤などの日用品は近所のドラッグストアに行って、複数の商品を比較して購入することが多かった。しかし、Amazon Dashを使用して事前に銘柄を登録すれば、商品を探し、比較することすらなくなる。つまり顧客を全面的に囲い込めるというわけだ。

オンライン情報を活用したリアル店舗Amazon Books

Amazon Booksはアマゾンが展開するオフラインのブックストアである。特徴は、本の表紙が見えるように面置きされている点だ。店舗には選抜された本のみが並んでいる。本に価格は表示されていない代わりに、商品コードが記載されている。顧客はスマートフォンで商品コードをスキャンすれば、オンラインで価格やレビューを確認できる。オンラインでも購入できるし、レジカウンターで本を購入し、持ち帰ることも可能だという。

さらにプライム会員の場合、オフライン店舗での購入であっても、オンラインと同じ優待価格で購入できるというから画期的だ。

【必読ポイント!】 店舗至上主義の限界

チャネル形態の変遷
hakule/iStock/Thinkstock

チャネルシフト戦略では、オンラインとオフラインを柔軟に「組み合わせて」戦う発想が求められる。そのためにはチャネルがどのように進化してきたのか、その変遷を知ることが大切だ。

チャネル形態は時系列で「シングルチャネル」、「マルチチャネル」、「クロスチャネル」、「オムニチャネル」と変遷してきた。まず、「シングルチャネル」は店舗を1つだけ持つ手法だ。「マルチチャネル」は複数の店舗を持つ手法である。たとえば、地域の顧客には実店舗で販売し、遠方の顧客にはオンライン店舗で販売するといった形だ。店舗ごとにそれぞれ対象顧客が異なり、顧客管理も別になる。

これに対し、「クロスチャネル」は、同じ顧客が使い分けられる店舗を複合的に提供する手法だ。同一の顧客が週末はスーパーのオフライン店舗で買い物をし、平日にはそのスーパーのオンライン店舗をモバイルから使用するといったイメージである。これも顧客管理は店舗ごとに異なる。

そして、「オムニチャネル」は、ネットとリアルの融合を進めて、店舗を横断して顧客を管理できるようにする手法である。あらゆるチャネルを統合し、消費者にシームレスなショッピング体験を提供する。

オムニチャネルとチャネルシフト戦略の違い

オムニチャネル化の背景には、スマートフォンの普及がある。スマートフォンがあれば、あらゆる場所であらゆる情報にアクセスし、あらゆる店舗を選択してあらゆるものを購入できる。たとえば、家電量販店の店頭で商品を試し、価格コムでレビューを見て、アマゾンで購入するといったように、1つの店舗で選択から購入まで完結しなくなるのだ。このように、オムニチャネルの本質は顧客の購買行動の変化にある。

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要約公開日 2018.07.13
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