ビジネスパーソンが仕事で使う数字は、「実数」と「割合(%)」の2種類しかない。実数とは、ヒト・モノ・カネといったものの「量」を表現する「リアルな数字」のことである。割合とは、2つの実数を比較することで作られるもので、その実数の「よい・悪い」を表現する数字のことだ。
割合(%)という数字の裏には、必ず2つの実数がある。たとえば、「顧客満足度80%」という数字があったとき、これだけで「すごいね」と解釈するのは危険である。たとえば、「5名のうち4名が満足」と「1000人の超優良顧客のうち800人が満足」、どちらも同じ80%の満足度だ。しかし、中身は全く違う。だから、割合(%)だけで「よい・悪い」を判断するのではなく、必ず「もとの数字」が何なのかを把握し、「よい・悪い」「すごい・すごくない」の判断をすることが重要になる。このようなケースにおいては、「その割合(%)の分母(もとの数字)はなんですか?」と指摘してみよう。そうすれば、数字の落とし穴にはまらずに済むはずだ。
ビジネスシーンにおいては、「なるべく早く対処します」や「ちょっと値段を下げてガンガン売っていきましょう」などのように、数字で表現されていない言葉もたくさんある。しかし、「なるべく早く」とはいつまでなのか、「ちょっと」とはいくらまでのことを指すのだろうか。数字になっていない言葉を数字に変換することは、ビジネスパーソンに必須のビジネススキルだ。
その方法とは、相手から聞かれる前に「どれくらい?」を自分自身に問いかけ、具体的に考えることをサボらず、ざっくりと数字に置き換えることだ。たとえば、「いまから2時間以内に対処します」「最大10%まで値下げし、1日あたり50個のペースで売ります」などと会話に落とし込めばよい。
ビジネスシーンでは、相手に「どれくらい?」と尋ねられたらアウトだと心得よう。「どれくらい?」と聞かれてしまうということは、数字に変換するべきだった言葉を、変換せずに使ってしまった証拠だからだ。
論理的に考えるコツは、「数学コトバ」を使うことだ。数学コトバとは著者の造語であり、数学で用いられる論理表現のこと。わかりやすくいえば「要するに」「一方で」「または」などの接続詞のことである。
数学コトバは、前後にある2つの文の関係を表現し、それらを整理して1つの表現にする機能を果たしている。つまり、物事を考えるにあたり、頭の中で整理したり要約したりするために役立つのだ。意識的に数学コトバを使うことで、論理的に考えることができるようになっていくはずだ。
数学コトバの中で特に重要なのは、「なぜなら」と「したがって」だ。この「なぜなら」と「したがって」は、物事を判断する際や、失敗してしまった原因を分析する際にも役立つ。論理的に考えたいとき、まずは「なぜなら」という言葉で、ここでも自分に問いかけてみる。
「なぜなら」という問いを経て、理由がはっきりしたら、それをふまえてどうするかを考える。そのときに使うのは、「したがって」という言葉だ。
誰かの発した「要するに○○」の○○が、少しも要約されていないケースは、多くの人の〝あるある〟だ。では、どうしたら的確な「要するに○○」がつくれるかというと、もし1分しか時間がなかったら、もし1行しかスペースがなかったら、という制限を自分の中で持って要約するとよい。
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