過労死にならないためにできること

会社や仕事につぶされない働き方・休み方

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会社や仕事につぶされない働き方・休み方
出版社
出版日
2018年01月31日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書によると、毎年300人のビジネスパーソンが過労による脳卒中・心筋梗塞などで死亡、あるいは闘病生活を送っているという。あくまでもこの数字は国が定める労災認定基準を満たした人の数だ。その予備軍はさらに多く存在するだろう。

こうした厳しい現状を変える一歩として、著者が打ち出しているのは「過労の兆候を知ろう」というメッセージだ。眠れない、寝ても疲れが取れない、仕事のことが頭から離れないなど、過労になる前には必ず何らかの身体反応がある。それに気づけば、うつ病を始めとする精神障害になる前に対策を立てられるはずだ。

本書の第一章では、まず過労について理解を深めていく。過労の兆候で最も危険なのは不眠だ。睡眠の質を測る質問とその解説をぜひ参考にしていただきたい。その他、過労になりやすい人、過労を引き起こしやすい仕事、そして過労にならない働き方のヒントなど、貴重な情報が詰まっている。何度も読み返して効果的なセルフケア方法を身につけたい。

続く第二章では、過労になってしまった人の事例が8つのパターン別で紹介されている。過労までの経緯と原因が詳しく描写されているため、自分自身の防衛策としてはもちろん、部下を束ねる立場にある人にとっても非常に参考になるだろう。

働く場所が辛い場所であってはならない。よりよい環境にする方法は必ずある。そう訴える著者の使命感が感じられる一冊だ。本書を手に、「働き方」について再考してみてはどうだろうか。

ライター画像
二村英仁

著者

茅嶋 康太郎(かやしま こうたろう)
医学博士・産業医/産業医事務所を運営する株式会社ボーディ・ヘルスケアサポート代表取締役/前・独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所・過労死等調査研究センター長/元・産業医科大学産業医事務研修センター准教授。
1990年産業医科大学医学部卒業。臨床研修を含め当初5年間は外科医として臨床分野で勤務。
1999年産業医科大学大学院医学研究科生体適応系専攻博士課程修了。
2001年鹿児島県労働基準協会鹿児島労働衛生センター副所長。
2006年産業医科大学産業医実務研修センター助手 産業医事務研修センター在職時は、後進の産業医育成、全国での産業医研修を通した産業医の質の向上を目指した。専門は「中小企業の産業保健」「過重労働対策」「メンタルヘルス対策」。
2012年産業医科大学産業医実務研修センター准教授。(副センター長)。
2015年株式会社ボーディ・ヘルスケアサポート設立 代表取締役。
2015年労働安全衛生総合研究所過労死等調査研究センター・センター長
2014年11月の過労死等防止対策推進法の施行に伴い過労死等調査研究センター・センター長として過労死ゼロ、過重労働による健康障害を出さない施策につながる研究に従事。
2017年労働安全衛生総合研究所を退職し、産業医業務を本格稼働。今後は、これまでの経験を生かし、産業保健の現場で産業医活動を通して、働く人々の健康を守り、企業のコンサルタントとして貢献していく。
ボーディ・ヘルスケアサポート http://bodhihcs.com

本書の要点

  • 要点
    1
    過労とは、仕事による疲労が回復しない状態のことである。過労への対処としては、その兆候を見逃さないことが重要となる。特に不眠には最も気をつけなければならない。
  • 要点
    2
    過労死の原因は長時間労働、人間関係の悪化、仕事の内容のミスマッチ、この3つに分けられる。
  • 要点
    3
    自分のエネルギーの消耗と充電についてセンサーをもつことが必要だ。また、心が弱っているときは、真っ先に自分の心を守る術を考えなければならない。

要約

疲労はどのようにして「過労」になるのか?

過労を引き起こす2つの疲労
grinvalds/iStock/Thinkstock

「過労」とは、働き過ぎた末にたまった疲労がそのまま回復しない状態である。疲労は「身体的疲労・精神的疲労・脳疲労」の3種類に分かれる。このうち、精神的疲労はプレッシャーや不安などを感じた際に生じる疲労だ。そして、エネルギーを使い過ぎたときに待ち受けるのは「うつ病」である。

脳疲労もうつ病を引き起こす要因となる。脳疲労は脳を長時間使うことで生じるが、通常なら寝れば回復する。しかし、疲労の度合いがひどくなり過ぎた場合、交感神経が過剰に働いて眠れなくなる。最終的に体のエネルギーが枯渇してうつ病になってしまう。肉体労働からくる身体的疲労が原因の過労死もあるが、ホワイトカラーが多い私たちの職場環境では、この精神的疲労、脳疲労の2つが絡み合い、同時に起きている。

こうした過労がもとで命を落とすのが「過労死」である。過労死の調査によると、過労の原因は大きく3つに分けられる。長時間労働、人間関係の悪化、仕事の内容である。大事なのは、過労の兆候を見逃さないことだ。

過労への理解を深める

何よりも大切な「睡眠」

過労の症状は様々である。眠れない、やる気が出ない、めまい、頭痛などの症状が表れるといった具合だ。中でも、最も注意すべきなのは「不眠」である。睡眠不足は、うつ病の発症と相関関係にある長時間労働よりも危険だという。

睡眠の質を確かめるには、次の5つで評価するとよい。(1)寝付きはよいか、(2)中途覚醒の有無、(3)早朝に目覚めるか、(4)目覚めの感覚、(5)日中の眠気。

各質問のチェックポイントは次の通りだ。(1)は寝床に入ってから30分以内に入眠できるか。(2)は中途覚醒の理由だ。たとえばトイレではなく仕事が頭に浮かんで起きてしまうのは「危険」だと判断できる。(3)については眠りの深さを見る。早朝に目覚めるのは眠りが浅い証拠だ。そして(4)朝目覚めたときにしっかり疲れが取れており気力も回復しているかについて確かめる。最後の(5)については、脳が夜の間に十分休めていれば日中に眠くなることもないので、日中の眠気の有無で確かめる。

睡眠で一番重要なのは質である。睡眠時間は7時間半が理想だが、その質が高ければ比較的短くても十分回復できる。まずは5つの評価項目に沿って、睡眠で疲れが十分に取れているかどうかを確認していただきたい。

質の高い睡眠を得るには
GeorgeRudy/iStock/Thinkstock

著者からの不眠に悩む人々へのアドバイスは、「寝る前に2時間のリラックスタイムを持つ」である。2時間もあれば、仕事モードから休息モードに切り替えられ、過労を防ぎやすい。

では、その2時間をどのように使えば、上手く休息モードに移行できるのだろうか。最も避けるべきなのはゲームなどスマホの操作だ。画面からの光が交感神経を刺激すると、休息モードに入りづらくなる。ただし、スマホで友人と会話することが気分転換になるという人は、無理にやめる必要はない。

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要約公開日 2018.07.14
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