人は、協調を築くために嘘をつくこともある。たとえば祖母が作ったミートローフの味や、友だちの結婚披露宴の感想については、嘘をつくのが「正しい行い」だということもあるだろう。
嘘はときに敬意のあかしでもある。職場のパーティーを欠席する理由が、本当はテレビドラマを見逃したくないからであったとする。しかしあなたは、その理由を正直に伝えることはない。病気を理由にして欠席するはずだ。
誰しも、嘘をつくのは反道徳的でいけないことだと教わってきただろう。しかし実際には、嘘が人と人との絆を作り、信頼を高めていることは多いのだ。
前項で説明したように、嘘が協調を築くこともある。だが多くの場合、嘘は、我々の大切なものを奪ったり傷つけたりするものだ。偽装や搾取から身を守るために、嘘つきがどんなシグナルを発しているのかを知っておこう。
シグナルを見つけるまえに必要なのは、ふだんの相手の行動を知っておくことだ。そうすれば、ふだんの行動を基準として、嘘をついたときの相手の変化に気づくことができる。
次に、正しく質問をし、相手の答えに注意を払う。たとえば、あなたが中古車を探しているとしよう。売り手に「この車はどんな車ですか?」というような一般的な質問や、肯定的な答えを前提とした「トランスミッションに問題はないですよね?」というような質問をするよりも、「この車にはどんな問題がありますか」というような否定的な答えを前提とする質問をするとよい。そうすれば、相手は情報を正しく伝えるか、嘘をつかなくてはならなくなるからだ。
加えて、「認知的負荷」をかけることも必要だ。嘘をつくときには、つじつまを合わせなければならないから、より多くの情報を覚えておかなくてはならなくなる。これが、認知的負荷のかかった状態だ。捜査官は、時系列をわざと前後させて質問をしたり、本筋とは関係のなさそうな質問をしたりして、尋問する相手に認知的負荷をかける。そして、相手がボロを出すのを待つのだ。
次に、相手の動きに目をこらす。嘘つきのシグナルは、次に挙げる4つだ。
(1)「ふつう」と違う:相手の行動がふだんと違うものかどうかだ。
(2)逃げ道を探す:嘘をつくと、ばれるのではないか不安になり、逃げ出したくなる。厳しい質問をしたときに、相手が部屋の出口に目をやった場合、嘘をついている可能性は高い。
(3)やりすぎる:「嘘ではない」と繰り返し言ったり、饒舌になりすぎたりして、うっかりボロを出すことはよくある。
(4)言葉と態度がちぐはぐになる:相手の話の内容と、話すときの態度が一致しているかどうかに注目しよう。相手が自分の気持ちについて語っているときには、相手の表情をよく観察しておく。
本人の専門分野(本業)における裏切り行為は、評判に決定的なダメージを与えることが多い。しかし、そうでなければ、長期的な影響は少ないものだ。マーサ・スチュワートの例を見てみよう。
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