本書で著者は、会社に対するこれまでの偏見から自由になるため、会社のことをあえてカタカナで「カイシャ」と書く。カイシャという言葉が指すものは、オフィスのビルではなく、また社員でもない。カイシャには、「これだ」と指させるような実体がないのだ。しかし、「会社法」に沿って運用されているカイシャは「法人」として認められ、法律の上では「人」として扱われる。つまりカイシャは、「妖怪」のように、人間が作り出した想像上の生き物なのだ。
カイシャは、口座を持つことができたり、社員が稼ぎ出したお金を保有して大金持ちになっていたり、人間より有名だったり、尊敬されていたり、「カイシャのために頑張ります!」と言われたりする。事業が成功するにつれ、カイシャの資産やカイシャが雇用する社員はどんどん増えていき、モンスターのように巨大化していく。
実体がなく意思もないカイシャは、誰によって操られているのだろうか。
カイシャのお金を動かす権利を持っているのは、カイシャの代理人である取締役たちと、取締役の代表である代表取締役だ。彼らは、自分の給料を倍に増やすといったこともできてしまうし、自分にとって都合のよい人を入社させることも可能だ。特に代表取締役の持つ権限は強く、非常に「美味しい」ポジションだと言える。
「カイシャのために働く」と言う人がいるが、実際には、実体のないカイシャのためではなく、そのトップにいる代表たちのために働いているのだ。だからこそ、カイシャのブランドやイメージよりも、代表取締役が信頼できる人なのかどうかをよく見ておかなければならない。それによって、仕事の楽しさが左右されるからだ。
「今の代表がイケてなくても、次はイケてる代表になる可能性もあるのでは?」と思うかもしれない。しかし、ここで忘れてはいけないのは、「次の代表を選ぶのは、今のイケてない代表」だということだ。人事権を持つ代表は、次の代表として、自分にとって都合のいい人を選ぶものだ。もしあなたが「このカイシャを何とかして変えたい」と思っても、カイシャを変える権力を手にするには、「イケてない人に選ばれ続ける」という我慢レースを耐え抜かなければならない。
意思を持たないカイシャは、生身の人間である代表の意思に従って進む。だから、楽しく働くためには、代表のビジョンと自分の夢が重なっているのが理想だ。100パーセント重なっているというのはありえないにしても、部分的にでも重ね合わせることができ、カイシャに入った後も自分の夢を探求していくことができればよい。
仕事を楽しめている人は、ビジョンの重ね合わせができているかどうかの確認作業を怠ることがない。
3,400冊以上の要約が楽しめる