プライベートバンカーの表紙

プライベートバンカー

驚異の資産運用砲


本書の要点

  • プライベートバンカーとは、富裕層に仕える「マネーの執事」のことだ。海外のプライベートバンクでは、顧客とバンカーがWin-Winの関係を築き、富裕層の資産を守っている。

  • 資産運用のポイントは「レバレッジ」の存在にある。海外のプライベートバンクは金融資産に担保価値を高く認めるので、海外保険やオフショア法人を使いながら、レバレッジを効かせた高い利回りでの運用が実現できる。

  • 今後の経済環境を考えると、USドル建てのハイイールド債ファンドを複数銘柄もつのが望ましい。

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プライベートバンカーの仕事

富裕層に仕える「マネーの執事」

Ridofranz/iStock/Thinkstock

「プライベートバンカー」を直訳すると、「私人銀行家」となる。つまりプライベートバンカーの仕事は、富裕層に仕える「マネーの執事」と表現できる。具体的な仕事は、個人の富裕層をメイン顧客として、オーダーメードで最適な資産の管理・運用・保全方法を提案。顧客の資産防衛と、運用のためのインフラ・環境を提供する。プライベートバンクは(1)伝統的プライベートバンク、(2)近代的プライベートバンク、(3)海外の日本人対応可能プライベートバンク、(4)日本国内に店舗を構えるプライベートバンクの4つに分かれる。このうち(4)日本国内に店舗を構えるプライベートバンクは、世界的に見て複雑な日本の法規制に阻まれ、提供できるサービスが限定されている。さらに日本の金融機関は、海外に比べて手数料が高い。よって日本国内のバンカーの場合、顧客へ頻繁に金融商品を売り買いさせることへのインセンティブが働いてしまう。一方で海外金融機関の収益源となるのは、預入口座の年間管理費用だ。管理費用は顧客から預かった資産が増えれば増えるほど大きくなるので、海外のバンカーは純粋に顧客の資産増加をめざすようになる。だから海外金融機関の場合、顧客とバンカーはWin-Winの関係を築けるのだ。

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プライベートバンカーになった理由

プライベートバンカーに目覚める

杉山氏は静岡大学を1992年に卒業後、新卒社員として野村證券に入社した。杉山氏にとって野村證券は「プライベートバンカー養成学校」であり、営業の極意として顧客の「懐に入る」ことを徹底的に叩きこまれた。顧客との関係構築とファンドマネージャー両方の役割が求められたことで、プライベートバンカーとして必須の能力が身につけたわけだ。野村證券で学べるだけのスキルを身につけた杉山氏は、2005年に三井住友銀行に転職。野村證券で身につけた提案力を発揮すると、顧客からは「こんな風に提案してくれた人ははじめてだ」と感動された。「自分にはプライベートバンカーの資質があるのではないか」と気づいたタイミングで、ヘッドハンターからソシエテ・ジェネラル信託銀行で働かないかというオファーがあり、杉山氏は2007年にふたたび転職する。

外資系銀行への転職

ソシエテ・ジェネラルの口座開設の基準は1億円以上である。杉山氏はこの基準を満たす顧客を、三井住友銀行から引き連れて転職した。その総額は35億円にものぼる。日本の銀行員は異動が多く、長期にわたり資産を預かるという考えが芽生えにくい。だが杉山氏は、顧客に対してこまめに情報を伝えてさまざまな提案をしていた。だから杉山氏個人に顧客がつくようになっていた。ただし外資系銀行でも、日本に支店を構えるかぎり、日本の金融規制にはあらがえない。杉山氏は次第に、日本国内でのプライベートバンカー業務の限界を感じるようになっていった。

日本からシンガポール、シンガポールから日本へ

tawatchaiprakobkit/iStock/Thinkstock

杉山氏が次の舞台として選んだのは、アジアの金融センターと呼ばれるシンガポールだった。リーマンショックの相場が落ち着いてきた2010年、シンガポールのバンク・オブ・シンガポールに入社。その後は「富裕層ビジネスの最高峰」に到達したいという思いから、イタリア銀行シンガポール支店に転職する。

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要約公開日 2018.06.11
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