これが長期投資の王道だ

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ジャンル
出版社
明日香出版社

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出版日
2017年08月21日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

素人が投資に手を出してもうまくいかない。世間ではこのようなイメージが一般的ではないだろうか。多くの場合は、株価とにらめっこしながら売買をしても、労力のわりに儲けが小さかったり、逆に原資が目減りしてしまったりする。一方、しばらくの間、株を寝かせていたら、気づけば株価が3倍になっていたということも起こりうる。本書を読めば、こうした投資の本質が一気にクリアになる。

著者はまず、投資に関する一般的な誤解を解くために、繰り返し「投資運用」と「資金運用」の違いについて言及している。個人投資家であっても機関投資家であっても、短期間に値ザヤを抜くことにしか価値を置かない人たちがやっているのは、投資ではなく資金運用だという。

資金運用の世界では、プロの機関投資家たちと同じ土俵で勝負をすれば、資金力でも組織力でも個人ではとうていかなわない。ところが、投資運用つまり長期投資をめざせば、個人でもしっかりとリターンを得られる。

本書は、投資運用の現場に46年間も身を置いてきた著者が、「これぞ長期投資」というものを、8年がかりで体系化した一冊である。かなり力を入れて執筆したことが、文章の端々から伝わってくる。丁寧かつ本格的な投資の指南書である本書を教科書がわりに、投資に再チャレンジするのもいいだろう。

ライター画像
金井美穂

著者

澤上 篤人 (さわかみ あつと)
株式会社さわかみホールディングス
代表取締役
1971年から74年までスイス・キャピタルインターナショナルにてアナリスト兼ファンドアドバイザー。その後、80年から96年までピクテ・ジャパン代表を務める。96年にさわかみ投資顧問を設立し、99年に日本初の独立系投資信託会社であるさわかみ投信を設立。販売会社を介さない直販にこだわり、長期投資の志を共にできる顧客を対象に、長期保有型の本格派投信「さわかみファンド」を運営している。同社の投信はこの「さわかみファンド」1本のみで、純資産は約3000億円、顧客数は約11万5000人を超え、日本における長期運用のパイオニアとして熱い支持を集めている。著書多数。『日経マネー』に2000年9月号より連載中。

■近著
『国債暴落をものともしない長期投資』(産経新聞出版)
『お金に支配されない生き方』(ビジネス社)
『その時、あなたの預貯金は本当に安全か?』(明日香出版社)
『将来が不安なら、貯金より「のんびり投資」』(PHP研究所)

■共著
『長期投資でお金の悩みから自由になった人たち』(日経BP社)
『実話コミックエッセイ 不幸にならない投資法 月1万円からできる人生を変えるお金の育て方』(主婦の友社)

本書の要点

  • 要点
    1
    多くの投資家がやっているのは投資ではなく「ディーリング」である。株価などの価格変動のみ重視し、短期間でいかに値ザヤを稼ぐかに専心する。これを資金運用という。
  • 要点
    2
    投資運用とは、ただ「安く買って、高くなったら売る」ことを長期的スパンで繰り返すことだ。儲けてやろうと欲を出すものではない。
  • 要点
    3
    長期投資で大事なのは、このような景気の大きな動きを先取りし、アセット・アロケーションを切り換えることである。

要約

投資とは

投資とマネーゲーム

投資に難しさを感じている人は少なくない。損をするのではないかと警戒したり、なかなか儲からないと嘆いたりする。こうした投資で苦労している個人投資家や機関投資家がやっているのは、実は投資ではない、と著者はいう。

世の投資家の多くが考えることは、お金を殖やすことだ。つまり、買った時より高く売って、いかに値ザヤを稼ぐかだ。そのために株価などの価格変動を常に追いかけている。その様相はまるで博打のようで、お金の分捕り合戦であり、単なるマネーゲームにすぎない。こうした投資のやり方を著者は「銭ゲバ」投資といい、本来の投資の姿ではないと警鐘を鳴らす。

マーケットの本質
lovelyday12/iStock/Thinkstock

マーケットというものは、ありとあらゆる人や組織が、それぞれの利益目的をもって自由気ままに集まり、参加できる場である。「銭ゲバ」投資であれ投機であれ、参加者が多ければ多いほど価格が変動する。そして、マーケットの価格形成を厚くする。

マーケットの値動きは、需要が多ければ上がり、供給が多くなれば下がっていく。一見すると単純だが、ここから値ザヤを抜いて儲けることは実に難しい。

株価が勢いよく上昇し出すのを見ると、儲かりそうな気がしてくる。それは他の人も同じだ。参加者が「儲かりそう」と思えば思うほど、買いが多くなり株価は上昇する。そこで飛びついて買ってみたものの、その後株価は思ったほど伸びなかったとする。「儲かりそうにない」と思った瞬間、参加者はすぐに売ってくる。下げに転じた株価を見て、さらに参加者は逃げ売りに走る。売りが殺到すると株価は急落する。そしてその後、買いが盛り返す。こうした相場の基本パターンが延々と繰り返されるのだ。

このように、マーケットの値動きは、投資家の心理にいかようにも左右される。値動きに飛びつくだけの「銭ゲバ」投資家が実に多い。それを投資だと勘違いしているため、儲からないし、投資は難しいと思いこんでしまう。

本物の投資、長期投資とは?

「銭ゲバ」投資家たちが行う値ザヤ稼ぎを、著者は「ディーリング」と呼んで、投資行動と区別している。彼らが相手にするのは価格変動のみだ。興味の対象は、いくら儲けが出たか。それは投資運用ではなく資金運用である。こうした資金運用と一線を画するのが、著者が本物の投資だと考える「長期投資」だ。

長期投資家は、短期の値ザヤ稼ぎには目もくれない。マーケットと常に一定の距離を保っており、価格変動を追いかけたりはしない。安い時に買っておいて、高くなったら売る。このシンプルな投資行動を繰り返すだけだ。

たとえば、景気や業績の悪化から相場が暴落するとする。すると、たいていの投資家は売り逃げに走る。誰も買おうとしないから暴落相場となる。そんな時でも長期投資家は、将来価値が高まると思えば、躊躇なく上機嫌で買い増しにいく。

この行動は、はたから見ると、リスクを取っているかのように見える。しかし、その後はどこで売っても投資リターンが得られる。これこそが投資運用の本質なのだ。

長期の投資運用から短期の資金運用への変遷

投資運用と資金運用の違い

投資運用とは、リスクを取ってリターンを得ることをいう。その運用資金はマーケットを通して経済の現場に投入され、経済活動を活発化させる。

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要約公開日 2018.04.18
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