年利5%を実現する 投資の教科書の表紙

年利5%を実現する 投資の教科書


本書の要点

  • 日本は米国に比べて金融資産における株式投資の割合が少ないが、それにはいくつかの要因がある。中でも投資信託の手数料の差は大きく、日本の投資家は収益を圧迫されている。

  • 著者は高い投資成果を上げるために、世界の株式市場に時価総額に応じて分散投資をすること、定額を定期的に長期に渡って投資することという2つの条件を挙げており、これらによって個人投資家でも堅実に投資をしていくことができる。

  • うまく活用することで高い収益を上げる可能性がある注目トピックとして、ETF、NISA、金を解説している。

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日本の投資環境

日本には投資が根づいていない

日本銀行のデータによると、日本人の金融資産の割合は現預金が半分以上を占め、株式や投資信託などの合計は十数%である。一方、米国の数字は証券投資が半分を超え、現預金は十数%とちょうど日本とは対照的な結果となっている。これには日本人の投資マインドと日本経済の構造という2つの原因があった。日本人は物作りやおもてなしなどから対価を得て成功することはよしとしてきたが、投資によってお金でお金を稼ぐことはギャンブルのように悪いイメージが持たれてきた。また、日本経済は個人が銀行にお金を預け、銀行が企業に融資を行うことにより成長し、株式はあくまでも企業同士の持ち合いが中心という歴史があった。これらによって、日本人の個人資産は現預金中心に形成されるようになったのである。

日本の投資家の多くは損をさせられている

Fuse/Thinkstock

バブル崩壊以降の日本経済は景気が低迷し、「失われた20年」と呼ばれる低金利デフレ環境が続いた。銀行は預金の支払金利と融資の金利収入の差から利ざやを取るストックビジネスでは十分な収益を得られず、投資信託販売から販売手数料を得るというフロービジネスに頼るようになった。これにより、日本の投資信託の販売手数料は非常に高く設定され、投資信託の運用収益を悪化させている。現在販売されている公募投資信託の平均販売手数料は約2.8%で、平均信託報酬は約1.5%と算出されている。これは初年度の平均コストが約4.3%であることを意味し、投資信託の運用成績がそれを上回らなければ運用収益はマイナスとなる。ちなみに米国では販売手数料は概ね撤廃され、平均信託報酬も約0.75%であり、ETFでは0.2%程である。いかに日本の投資信託ビジネスの手数料が高いかが分かる。また、一般的に投資家は自国への投資に偏りがちであるが、長引く不況により日本市場はパフォーマンスが悪く、そのことも日本の投資家の収益が伸びない理由の一つである。

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【必読ポイント!】 世界市場に目を向ける

世界経済の成長を享受する

Rawpixel Ltd/iStock/Thinkstock

世界経済はリーマン・ショック以降減速しているものの、それでも実質ベースで3%の成長は保たれており、インフレを加味すれば少なくとも5%程度の名目成長が中長期的に期待されている。そのため、世界の株式市場に時価総額に応じて投資をすることができれば、そのまま放置していても経済成長と同じだけの投資収益を得ることができる。そもそも世界の株式市場の中で日本市場の割合は時価総額でわずか7%程度であり、日本市場に集中して投資をすることは世界全体で見ると効率的であるとは言えない。世界経済が成長を続けるという前提の下では、世界に中立に投資をしてその成長を享受することが最も安全かつ最良の投資行動なのである。

株式投資は貯蓄行為である

著者は、銀行預貯金が貯蓄で株式は投資という表現をしてしまうのは、「株式投資はリスク行為で危険を伴う」という考え方があるのではないかと提唱している。しかし、株式投資が本来の貯蓄で、ゼロ金利環境下での銀行預金は資金をただ寝かせているだけにすぎないというのが事実である。貯蓄とは財貨を蓄え増やしていく行為を指す。もしインフレが発生してしまえば預貯金は目減りしてしまうため、ゼロ金利での預貯金は貯蓄とは言えない。実際に、米国では株式や投資信託が貯蓄だと捉えられており、長期保有資産として扱われている。それは米国の投資信託の売買回転率が日本と比較してとても低水準であることからも分かる。

定期的な定額投資を長期に行う

バブル時の高値から見ると日本の株式市場は現在でもまだ大きく下落しており、世界の主要国の中で長期的に最もパフォーマンスが悪かったと言える。しかし著者は、その日本市場においても、バブル時の高値から定期的に定額投資を25年続けていたとすれば、その投資家は儲かっているという驚愕のデータを導き出した。

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要約公開日 2015.05.12
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