日本の個人投資家で「通算」で儲かっているのは全体の2割ほどで、7割以上の投資家は損をしている。そして、その損失額は平均で525万円、ベンツ1台分に相当する。投資信託に投資をした場合の平均損失率は30%だという調査結果もある。なぜ日本人は損をしてしまうのだろうか。
米モーニングスターが世界25カ国の投信市場を評価したレポートによると、日本は下から2番目で、南アフリカよりも下である。日本の投信業界で問題視されているのは、運用報告書にファンドマネジャーの名前や実績が非開示であることで、これは会社の肩書きしかないサラリーマン型のファンドマネジャーが多いことを意味している。また、そもそも日本で販売されている投信で「過去10年以上年率10%以上」の運用成績をあげたファンドはないため、積極的に実績を開示しないことが多いと推察される。
米国の格付け会社であるS&Pの調査によると、日本の金融リテラシーはG7の中で6位、世界では38位である。特に「インフレ」や「複利」に関する理解度が低い。金融庁によるアンケート調査では、投資未経験者の83%が「投資を必要としない」と回答している。日本人はそもそも資産運用について学びたいという知識欲がないのである。これらを踏まえ、個人投資家が勘違いしがちなことや、どうすれば適切な投資ができるのかについて整理していきたい。
一般的な投資指南として、マスコミに出る評論家や、個人投資家向けの教科書では「国際分散投資」を第一に勧められる。日本や世界の株・債券等を組み合わせ、リスクを分散させよう、その際には低コストのETFを使おう、という具合だ。それ以外に選択肢のない一般的な投資家はそれでもいいだろう。だが、まとまった資金を持つ富裕層がリターンの最大化を狙うのであればそれだけでは不安だ。リーマン・ショックのような世界的な金融危機が起こると、株式・不動産など多くの資産が暴落してしまい、分散投資理論は当てはまらなくなる。
過去の研究によれば、運用成果の90%を決めるのは個別銘柄ではなく、資産配分、アセット・アロケーションである。値上がりする銘柄を必死になって探したところで、資産に与える影響は5%ほどだ。
では、どのように資産を配分すればいいのだろうか。
3,400冊以上の要約が楽しめる