起業家として最初にすべきことは、会社という組織の土台づくりをすることだ。立ち上げる会社の目的は何か、その目的達成の手段となる商品やサービスは何か、販売経路をどうするのか。これらを明確にする、すなわち自社の輪郭を築くことで、いざ仲間を集める際にも迷うことなく前進できる。
会社の輪郭を築くためにはWhy、How、What、Whoという4つの要素が必要だ。それぞれ順に、事業目的(ビジョン)、商品またはサービスの提供方法(ビジネスモデル)、商品またはサービスの内容(商品)、誰に提供するのか(顧客)を意味する。上手くいかない会社は得てして、こうした4つの要素が明確でなく、それらの整合性がとれていないことが多い。このことを、起業の第一歩として理解しておきたい。
これらの要素は、起業家を含め、起業時のメンバーに必要なスキルセットにも対応する。大切なのは、起業家自身と似たスキルを持ったメンバーではなく、足りないスキルを補ってくれるようなメンバーを集めるという視点だ。スキルのバランスが取れた組織をつくるには、起業家自身が自分の得意なスキルを把握しておくことが欠かせない。
得意とするスキルに応じて、起業家のタイプは、ビジョナリー型、技術者・アナリスト型、デザイナー・営業型と、大きく3つに分けられる。
まず、ビジョナリー型の起業家は、事業目的(ビジョン)を示すWhyを第一に考える。このタイプの起業家は、明確なビジョンで人を魅了し、共感を得ることを最も得意とする。ただし同様のタイプばかりが集まると、新しいビジョンが顧客に受け入れられるまでの赤字期間が長引く傾向がある。そこで少しでも早く成長軌道に乗るために、ビジネスにおける理想と現実のバランスを考えられるメンバーをチームに加えたい。
2つ目のタイプは、商品や技術の開発、つまりWhatに強い関心を寄せる技術者型、ビジネスモデル(How)の考案を得意とするアナリスト型である。両者に共通する点は、誰に売るのかという顧客の理解、何のためにやるのかという事業の目的の追求が疎かになりがちということだ。したがって、メンバーを加える際は、商品やサービスの顧客・販路をよく知る人を加えることが望ましい。
3つ目のタイプ、デザイナー・営業型は、誰に(Who)何を(What)提供するかといった顧客理解に長けている。このタイプは顧客から要望をヒアリングして仕事を進めるウェブデザイナーや、トップセールスを経た起業家に多い。このタイプは、顧客の要望を重視するあまり、起業した当初の目的を見失うことが往々にしてある。そのときは、改めて原点に立ち戻り、ビジョンを見つめ直すことが成長のカギとなるだろう。
Why、How、What、Whoの4つの中で、起業家にとって最も大切なスキルはビジョン(Why)をつくるスキルといえる。なぜなら、今後メンバーを集める際には、相手に自社のビジョンに共感してもらう必要があるからだ。
ビジョンを明確化するには「なぜ、あなたがそれをするのか?」という問いを常に自分自身に投げかけることが有効となる。これにより、曖昧だったビジョンがより具体的になっていく。
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