起業家とつくった

起業の教科書

未読
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出版社
出版日
2016年12月20日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

起業を志す方にうってつけの起業の入門書が登場した。本書を手掛けたのは、起業支援のプロ集団トーマツ ベンチャーサポート(注:2017年9月から社名はデロイト トーマツ ベンチャーサポート)だ。これまでに支援してきたベンチャー企業は3000社にも及ぶ。

本書は、起業を成功に導くための基本事項とノウハウを体系的に説明した本編と、起業に役立つメディアやイベント情報などを紹介する資料編とで構成されている。本編は第一章、ビジョンの描き方から始まる。ビジョンがあるからこそ、どんな逆境が訪れようとも果敢に立ち向かえる。ビジョンは第二章、成長を促すチームのつくり方にも密接に関連してくる。採用やメンバーのベクトル合わせに関する解説は、人間の本質を突いており、読みどころの一つだ。第三章以降は、資金調達、PR戦略、大企業との提携を成功させる方法など、起業した会社のさらなる成長に必要な知識が、実践にすぐ生かせる形で説明されている。

本書の醍醐味は何と言ってもビジョン実現に燃える起業家たちへのインタビューである。彼らが大切にしているビジョンを確立するきっかけとなった原体験が紹介され、読み進めながら、壁をどう打破していったのかを追体験できる。ビジョン実現へと情熱を傾ける姿には勇気づけられること必至だ。

起業家は、胸の奥に熱い思いがあるからこそ前に進める。事業を軌道に乗せるための知識やノウハウだけではなく、起業という人生の選択に正面から向き合う機会を与えてくれる書として、起業に少しでも興味がある読者に薦めたい。

ライター画像
二村英仁

著者

トーマツ ベンチャーサポート
デロイト トーマツ グループに属し、全国3000社のベンチャー企業に対する成長支援を中核業務とする。そのネットワークを生かし、大手企業に対するベンチャーとの協業による新規事業創出支援、官庁および全国自治体によるベンチャー政策の立案・実行支援を手掛けている。2017年9月より社名をデロイト トーマツ ベンチャーサポートに変更。

本書の要点

  • 要点
    1
    起業家にとってビジョンをつくるスキルは欠かせない。ビジョンとは、「自分が何者で、何を目指し、何を基準に進んでいくのか」である。
  • 要点
    2
    チームづくりにおいてもビジョンが重要となる。人を採用する際は、起業家と候補者のビジョンが一致しているかどうかを見極めることが必要だ。
  • 要点
    3
    創業期の起業家にとってファイナンスの知識は必須となる。創業にかかる費用やその流れ、資金調達方法といった最低限必要な知識を正しく理解しておきたい。安易に株をわたすと、経営権が分散して苦労することになる。

要約

【必読ポイント!】 起業前後にまず決めること

起業家としての第一歩

起業家として最初にすべきことは、会社という組織の土台づくりをすることだ。立ち上げる会社の目的は何か、その目的達成の手段となる商品やサービスは何か、販売経路をどうするのか。これらを明確にする、すなわち自社の輪郭を築くことで、いざ仲間を集める際にも迷うことなく前進できる。

会社の輪郭を築くためにはWhy、How、What、Whoという4つの要素が必要だ。それぞれ順に、事業目的(ビジョン)、商品またはサービスの提供方法(ビジネスモデル)、商品またはサービスの内容(商品)、誰に提供するのか(顧客)を意味する。上手くいかない会社は得てして、こうした4つの要素が明確でなく、それらの整合性がとれていないことが多い。このことを、起業の第一歩として理解しておきたい。

これらの要素は、起業家を含め、起業時のメンバーに必要なスキルセットにも対応する。大切なのは、起業家自身と似たスキルを持ったメンバーではなく、足りないスキルを補ってくれるようなメンバーを集めるという視点だ。スキルのバランスが取れた組織をつくるには、起業家自身が自分の得意なスキルを把握しておくことが欠かせない。

3つの起業家タイプ
olm26250/iStock/Thinkstock

得意とするスキルに応じて、起業家のタイプは、ビジョナリー型、技術者・アナリスト型、デザイナー・営業型と、大きく3つに分けられる。

まず、ビジョナリー型の起業家は、事業目的(ビジョン)を示すWhyを第一に考える。このタイプの起業家は、明確なビジョンで人を魅了し、共感を得ることを最も得意とする。ただし同様のタイプばかりが集まると、新しいビジョンが顧客に受け入れられるまでの赤字期間が長引く傾向がある。そこで少しでも早く成長軌道に乗るために、ビジネスにおける理想と現実のバランスを考えられるメンバーをチームに加えたい。

2つ目のタイプは、商品や技術の開発、つまりWhatに強い関心を寄せる技術者型、ビジネスモデル(How)の考案を得意とするアナリスト型である。両者に共通する点は、誰に売るのかという顧客の理解、何のためにやるのかという事業の目的の追求が疎かになりがちということだ。したがって、メンバーを加える際は、商品やサービスの顧客・販路をよく知る人を加えることが望ましい。

3つ目のタイプ、デザイナー・営業型は、誰に(Who)何を(What)提供するかといった顧客理解に長けている。このタイプは顧客から要望をヒアリングして仕事を進めるウェブデザイナーや、トップセールスを経た起業家に多い。このタイプは、顧客の要望を重視するあまり、起業した当初の目的を見失うことが往々にしてある。そのときは、改めて原点に立ち戻り、ビジョンを見つめ直すことが成長のカギとなるだろう。

なぜ、あなたがそれをするのか?

Why、How、What、Whoの4つの中で、起業家にとって最も大切なスキルはビジョン(Why)をつくるスキルといえる。なぜなら、今後メンバーを集める際には、相手に自社のビジョンに共感してもらう必要があるからだ。

ビジョンを明確化するには「なぜ、あなたがそれをするのか?」という問いを常に自分自身に投げかけることが有効となる。これにより、曖昧だったビジョンがより具体的になっていく。

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要約公開日 2017.09.18
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