投資を 始めるまで、いわゆる「ネトゲ廃人」の状態だった片山氏は、ある偶然で株式市場という世界最高水準のオンラインゲームと出会ったことで人生が大きく変わった。バイトで貯めた65万円を元手に、個人投資家の道を歩み始めたのだ。
株式投資に まつわる思い込みで多いのは、「個人投資家はプロである機関投資家に勝てるはずがない」というものだ。確かに機関投資家には、プロのアナリストの知見や、投資候補となる企業の経営者とのミーティングといった豊富な情報にふれられるメリットがある。しかし、顧客の資産を預かって運用する立場上、投資には透明性と説明責任が伴い、トレーダーに課せられたルールによって、意思決定が遅くなるというデメリットもある。この弱点を知っていれば、機動力のある個人投資家が機関投資家に太刀打ちできるわけだ。
投資の 勝ち方は一つではなく、人それぞれである。投資にはその人の性格や、リスクに対する考え方が色濃く現れるからだ。自分に合ったやり方を見つけるには、実際にいろいろなやり方に触れてみて、それを実践している先駆者のブログや書籍から考え方を学び、しっくりくるまで試すことが大切である。
著者の主な投資手法は、小型の成長株がその頭角を現し始める初動を捉えて集中的に投資をするという方法だ。そのため、小型株を常にウォッチしながら、世の中の次のトレンドを考え続けなくてはいけない。小型株は特定の製品やサービスに特化していることが多いので、時代の風によって業績や評価が一変する可能性を秘めているからだ。省エネやクラウド、IoTといった世の中の変化を予測し、銘柄という形に落とし込んで先取りするのが成長株投資の基本である。企業業績に関する研究や分析に、それなりの時間と情熱を注ぐ覚悟がいる。
こうした地道な作業が向いておらず、値動きを読んでトレードで勝つセンスもなさそうだという人は、投資で大きく儲けることは諦めた方がいい。現実的には次の三つの選択肢のどれかを取るしかない。
(1)適性のなさを自覚して、無理のないリターンをあげる手法を磨く
(2)信頼できるプロフェッショナルを見つけ、かわりに運用してもらう(=投資信託)
(3)「心理的にやりにくいことを合理的に処理できる」という「投資で勝てる性格に少しでも近づく
最初にぶつかるのは、どんな銘柄に投資するのかという問題だ。片山氏はEPS(一株当たり利益)の成長を重視している。PBR(株価純資産倍率)が大きく下落している銘柄に分散投資をしても、大きなリターンは得られない。企業の純資産は1年程度で大きく変わらないためだ。大事なポイントは、そのPBRやPER(株価収益率)が将来どのように変わっていくかという点である。著者は「その銘柄が将来実現すると考えられるEPSに対して現在の株価が割安かどうか」を見ることで、必然的に成長株を見極めている。
見極めのポイントは、決算短信(決算速報)の業績数値の変化の「中身」である。
3,400冊以上の要約が楽しめる