勝つ投資 負けない投資
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ジャンル
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2015年05月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

大規模な金融緩和が進み、先行き不透明な現在において、もはや投資は大事な資産を防衛する手段となった。本書では、65万円の資金を25億円にふやした究極の個人投資家である片山氏と、巨大ファンドを運用し、不敗の機関投資家として知られる小松原氏が、投資の「オモテとウラ」を語るという非常に贅沢な企画になっている。前半では、片山氏がネットゲーム廃人を経て、大投資家になるまでの試行錯誤の変遷を交えながら、そこで得た貴重な知見や、実際の投資行動を惜しげもなく公開し、非常に実践的なアドバイスを盛り込んでいる。また後半では、小松原氏が機関投資家としての立場から、投資にあたっての基礎知識や銘柄の見方、「伸びる会社」の見極め方を一挙公開する。

二人の考えと行動には共通項もあれば違いもある。共通しているのは、「投資のストーリーの組み立て方」が卓越している点だ。株式市場に潜む、10倍、100倍などの大化けする株を探し出すための「ストーリーづくり」の秘訣も、本書に盛り込まれている。

片山氏が「投資には『こうすれば必ず勝つ』という普遍的な方法は存在しない」と述べているように、二人の見解を読み比べながら、読者それぞれに合った方法を見出していってほしいというメッセージが込められた一冊だ。投資の初心者はもちろん、資産運用の基本に立ち返り、投資の神様に愛されたいと願うビジネスパーソンにとって、本書は「勝つ投資」の必読書だといえるだろう。

ライター画像
松尾美里

著者

片山 晃
シリウスパートナーズCEO
専門学校を中退後の4年間をネットゲーム廃人として過ごした後、22歳で株式投資に出会い、投資活動を開始。2005年5月から7年半で、65万円の投資額を12億円まで増やした。2013年には運用会社レオス・キャピタルワークスに転じて機関投資家業務に従事。2014年、ベンチャー投資を行うシリウスパートナーズを設立して再独立。複数の上場企業に名を連ね、本格的な長期投資を実践している。現在の総額は25億円。ペンネームは「五月(ごがつ)」。

小松原 周
大手資産運用会社にてファンドマネージャー・アナリストを務める。徹底した企業リサーチと業績予想をもとに投資を行うファンダメンタリストであり、長いキャリアの中で一度も負けたことがないため「不敗の投資家」として知られる。これまでに日本通算で5000社以上の会社へ取材した経験を持つ。様々な業種業界に通じており経営戦略からコーポレートファイナンス、経済学、財務分析等の知識が豊富であることから、上場起業の経営者の間でも氏との面談は評価が高い。巨大ファンドを運用する現役のファンドマネージャーであり、株式市場への影響が大きいため、氏名以外の個人情報は基本的に非公開としている。

本書の要点

  • 要点
    1
    投資の勝ち方は人それぞれである。自分に合ったやり方を見つけるには、実際にいろいろなやり方に触れてみて、それを実践している先駆者の考え方を学び、しっくりくるまで試すことが必要だ。
  • 要点
    2
    片山氏の成長株を見極めるポイントは、業績数値の変化の「中身」である。変化の端緒を見つけたら、決算資料を読み込み、「想像力」を働かせて、その先にあるストーリーを考え尽くすことが大切である。
  • 要点
    3
    小松原氏の投資する会社選びの最低限のポイントは、その会社の社長の質が高く、フェアでオープンな組織づくりができているかどうかである。

要約

投資家になるということ

個人投資家の強みを生かす
junpinzon/iStock/Thinkstock

投資を 始めるまで、いわゆる「ネトゲ廃人」の状態だった片山氏は、ある偶然で株式市場という世界最高水準のオンラインゲームと出会ったことで人生が大きく変わった。バイトで貯めた65万円を元手に、個人投資家の道を歩み始めたのだ。

株式投資に まつわる思い込みで多いのは、「個人投資家はプロである機関投資家に勝てるはずがない」というものだ。確かに機関投資家には、プロのアナリストの知見や、投資候補となる企業の経営者とのミーティングといった豊富な情報にふれられるメリットがある。しかし、顧客の資産を預かって運用する立場上、投資には透明性と説明責任が伴い、トレーダーに課せられたルールによって、意思決定が遅くなるというデメリットもある。この弱点を知っていれば、機動力のある個人投資家が機関投資家に太刀打ちできるわけだ。

どんな投資手法が向いているかは人それぞれ

投資の 勝ち方は一つではなく、人それぞれである。投資にはその人の性格や、リスクに対する考え方が色濃く現れるからだ。自分に合ったやり方を見つけるには、実際にいろいろなやり方に触れてみて、それを実践している先駆者のブログや書籍から考え方を学び、しっくりくるまで試すことが大切である。

著者の主な投資手法は、小型の成長株がその頭角を現し始める初動を捉えて集中的に投資をするという方法だ。そのため、小型株を常にウォッチしながら、世の中の次のトレンドを考え続けなくてはいけない。小型株は特定の製品やサービスに特化していることが多いので、時代の風によって業績や評価が一変する可能性を秘めているからだ。省エネやクラウド、IoTといった世の中の変化を予測し、銘柄という形に落とし込んで先取りするのが成長株投資の基本である。企業業績に関する研究や分析に、それなりの時間と情熱を注ぐ覚悟がいる。

こうした地道な作業が向いておらず、値動きを読んでトレードで勝つセンスもなさそうだという人は、投資で大きく儲けることは諦めた方がいい。現実的には次の三つの選択肢のどれかを取るしかない。

(1)適性のなさを自覚して、無理のないリターンをあげる手法を磨く

(2)信頼できるプロフェッショナルを見つけ、かわりに運用してもらう(=投資信託)

(3)「心理的にやりにくいことを合理的に処理できる」という「投資で勝てる性格に少しでも近づく

【必読ポイント!】勝つ投資(個人投資家 片山晃氏)

勝つための銘柄選別法
ene/iStock/Thinkstock

最初にぶつかるのは、どんな銘柄に投資するのかという問題だ。片山氏はEPS(一株当たり利益)の成長を重視している。PBR(株価純資産倍率)が大きく下落している銘柄に分散投資をしても、大きなリターンは得られない。企業の純資産は1年程度で大きく変わらないためだ。大事なポイントは、そのPBRやPER(株価収益率)が将来どのように変わっていくかという点である。著者は「その銘柄が将来実現すると考えられるEPSに対して現在の株価が割安かどうか」を見ることで、必然的に成長株を見極めている。

見極めのポイントは、決算短信(決算速報)の業績数値の変化の「中身」である。

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要約公開日 2015.06.08
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