株式投資の世界では、企業業績・市場動向に関わる分析スキルは非常に重要である。しかし、投資で利益を上げ続けるためには、こうした「フィジカル(物理的)」面だけでなく、メンタル面の強化が求められる。
マーケットは常に上下動し、ときに大きく乱高下する。想定外の状況に対する、投資家の非合理的な行動が、非合理的な価格の動きを助長してしまうのだ。そこで、投資家心理・行動を反映したマーケットの変化を理解するための「行動ファイナンス」理論や、自分自身の心理的な動きに対処するための「メンタルコントロール」理論を学ぶことが、適切かつ柔軟な対応のための必須事項となる。
株式投資の基本となるのは「ファンダメンタル分析」と「テクニカル分析」の2つである。前者は、企業の業績を予測し、そこから今の株価水準の割高・割安を判断し、理論株価や将来の方向性を予測する方法だ。一方、後者は、マーケットの動き自体を分析し、過去のパターンから将来の株価の動きを予想する方法である。
いずれも、企業業績や株価という対象を客観的に分析するものの、ここにも心理的要素が入りこんでいる。例えばファンダメンタル分析では、株価は一株利益の何倍の位置にあるのか、その倍率の高低によって割高か割安かが判断されるが、相場全体が強気になれば高倍率でも割高感は消える。つまり、株価の割高・割安を判断する指標は心理的要素で大きく動くのだ。
経済学は、合理的かつ私益を追求する「経済人(ホモ・エコノミクス)」の存在を前提に、「効率的市場仮説」という仮説に立っている。この仮説とは、「株価に影響を及ぼす情報は、経済人である市場参加者によって瞬時に、かつ適正に株価に反映される。株価が少しでも割高になれば売られ、割安になれば買われるためすぐに適正価格に落ち着く」という内容である。しかし、実際に取引する人間は、合理的な「勘定」だけでなく、非合理的な「感情」にも左右されるため、理論通りの価格に収れんするとは限らない。
1980年代から、株式市場や投資家心理をテーマに、現実の人間を前提にした意思決定や行動の法則を理論化した「行動ファイナンス」が広まってきたことにより、暴騰・暴落のような、非合理的だが、生身の人間にありがちな行動の傾向が明らかになってきた。
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