これからの日本には、世界に類を見ない高齢化と、莫大な国の借金により、大増税時代が到来する。アベノミクスではデフレ脱却と景気回復を目指すが、インフレは、実はデメリットのほうが多い。インフレによって資産の価値が目減りするからである。また、「機動的な財政出動」は国債の乱発に他ならない。ハイパーインフレが起きれば、利回りが0.3%しかない日本国債など、買い手がつかなくなる。国債を大量に保有する金融機関は大打撃を受け、借金をカバーするために大増税が行われるだろう。
その準備の第一歩が2015年秋に導入される「マイナンバー制度」である。情報管理の一元化により行政手続きを効率化するというのが表向きの目的であるが、最大の狙いは、社会保障・税制度の効率性や透明性を高めることである。国民の資産を把握し、庶民だけでなく富裕層への課税をも強化しようとしているのだ。
日本はとりわけリスクの高い国である。地震や噴火といった大規模な自然災害のリスクや、尖閣諸島問題などの地政学的リスクも抱えている。こうしたリスクは円安や国債の暴落、国民の資産の価値低下につながるだろう。ハイリスクな日本に資産を置いていても、ハイリターンを望むことはできない。
日本の金融機関ほど、資産を預けて運用するのに適していない場所はない。手数料が高く、資金の運用利回りも海外と比べて低い状況だ。また、預金者から預かった資金の大半を日本の国債で運用しているため、国債の金利が上昇した際には、金融機関の経営が一気に危うくなり、預金者はペイオフの危機に見舞われる。
さらには、円安の進行で日本円は世界の負け組通貨になりつつある。日本円で資産を保有すること自体がハイリスクになってしまった。
そこで、著者は、資産を海外の金融機関に預け、海外の複数の通貨に分散して保有することをおすすめする。世界の基軸通貨であるドルと、世界ナンバー2の通貨であるユーロ、そして安定性と信頼性が抜群のスイス・フランへ分散しておくのが理想的である。
とはいえ、どの国でも自由に金融機関に口座を開設できるわけではない。口座開設ができるのは、その地域に居住していなくても口座の開設や資産の運用が認められ、かつ税金面での軽減措置がある地域、つまり「オフショア」や、租税回避が可能な「タックス・ヘイブン」が活用できる地域においてである。オフショアを活用すると、資産家は、節税や、低コストでの世界各国の通貨の保有、世界中の金融商品への投資、資産に関する秘密保持、資産の効率的な継承といったメリットを得ることができる。
オフショアの選択肢として、同じアジアにある香港とシンガポールが挙げられるが、いずれも政治的リスクを抱えている。長期的な視点では、全資産を避難させることはおすすめできないという。
オフショアとしての歴史と実績が抜きんでているのが
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