著者は、小泉純一郎内閣、安倍晋三内閣に長くいた経験から、組織を生き抜き、権力をつかむ方法を伝授する。
組織にいる限り、上司や同僚、部下を自らの意思で替えることはできない。では、組織の落ちこぼれに対しては、あえて権限を与えるのか、飼い殺しにするのか、どちらが正しい扱いだろうか。正解は前者である。明らかに能力不足の部下に大きな権限を与えて重用すると、その部下は自分に対して敬意を払うようになる。逆に、優秀な人材を重用しても、本人は自分の実力だと思うだけで、あなたに感謝しないどころか、あなたのことを軽視するおそれがある。人材登用は、敵か味方かどうかで行うのが現実的な知恵だ。
自分の組織で年齢差が5歳以内の人間は、潜在的な敵なのか、もしものときの味方なのか、どちらだろうか。正解は「潜在的な敵」である。小さなことが嫉妬の対象になりえるし、人事の局面でも邪魔者になってくる。よって、水面下では蹴飛ばし合いをする覚悟が必要になる。相手にとっては自分が抹殺対象だったというのは、よくあることだからだ。
逆に、5歳以上離れた先輩や後輩は、自分の味方にしなくてはいけない。先輩なら、自分を真っ先に引き上げてくれるかもしれない。後輩なら、退職後の再就職の世話をしてくれる可能性があるので、大事に扱いたいところだ。
また、成果を上げる人事登用の秘訣は、上司と部下には正反対の性格の人間を据えることである。上司がよく喋り、よく行動する「動」のタイプなら、その直属の部下・参謀には冷静に物事を判断できる「静」のタイプを置くと、組織がうまく機能する。歴代最長の連続在任期間を誇る佐藤栄作元総理大臣は、人事の能力を組閣で発揮した。動の田中角栄、静の福田赳夫という二人をうまく配置し競わせることで、自民党の長期政権を盤石なものにしたのである。
企業の多くが、いい人材の獲得に頭を悩ませている。もし著者が入社試験をするとしたら、「上司が『カラスは白いと思う』と言ったら、どう反応するか。」という問いを就職活動生に答えさせるという。
著者の採点基準はこうだ。ニコニコ笑って受け流すは5点。「白いかもしれません」と弱い肯定をするのは5点。「カラスは真っ白」と断言できれば10点だ。著者なら「白いカラスを連れてきて、やっぱり上司の言うことは正しいと宣言する」という。ここで「カラスは黒い」と言う人は組織に向いていない。組織に理不尽はつきものだ。上司が少しおかしなことを言っても、笑って受け流さなければいけない。
どんな学生を採用するか迷ったときは、面接の場で、デタラメな人間だとわかる態度を取ってしまう学生を採るとよい。そうした学生は怒られ慣れているため、入社後に失敗してもめげないからだ。
週刊誌がスキャンダルを報道するのは、スキャンダル情報が手に入ったときではなく、相手が大臣になるなど有名になったときなのである。
3,400冊以上の要約が楽しめる