一流の人は、鏡の使い方からして、一般人とは異なる。多くの人は、鏡を見るときに、「見てほしい理想的な角度」でしか自分を見ない。これに対し、一流の人は、鏡を使って全方位から全身を確認する。自分からは見えにくい脇や腰、振り返った姿、シャツの襟や袖口ののぞき具合など、確認するべき箇所は無数にある。「他人から見た自分」を常に意識し、必要があれば修正を加えていくのである。「他人の目」で毎朝行う厳しい身だしなみの確認が、一流の人の洗練されたイメージを形作っている。
イメージ演出の中でも、とりわけ重要なのが、正しい姿勢である。腹筋を締め、そこからすっと自然に背筋を伸ばし、肩甲骨を意識して後ろに引っ張ると、自然に堂々とした感じになる。仕上げにアゴを少し引いて、口元を引き締める。アゴの角度も、人の印象を左右する重要なポイントである。
アゴの角度が、いかに相手に大きな印象を与えるかという具体例は、枚挙にいとまがない。たとえば、著者はある企業の人事担当者から、コンサルティングを依頼された。その企業は、採用活動で「最終選考の面接担当者が偉そうだった」という評判が書き込まれてしまって困っていたのである。役員の一人のコンサルティングを行い、著者はすぐに、学生が偉そうだと言った理由が分かったという。「アゴの角度を上げてしまう」という、初対面でやってはいけないことを、その役員はやってしまっていた。アゴを上に向けてしまうと、どうしても横柄で偉そうな印象を与えてしまうのだ。
また、姿勢と並んでイメージ演出の大きな役割を果たしているにも関わらず、効果的に使われていないのが、「笑顔」である。普段は真顔で、近寄りがたい印象の、とあるエグゼクティブは、リクエストに答えると『ありがとう』の言葉とともに、何とも言えないふわっと優しい笑顔になるというので、みんなが「この人のためにがんばろう」という雰囲気が自然と生まれたという。笑顔は普段の表情にメリハリをつけるアクセントとなるゆえ、極上の笑顔を手に入れて効果的に駆使すれば、それは大きな武器になるのである。
著者が秘書をしていた頃、お客様にお茶を差し出す際、頭を下げてくれたのは、決まって「かなり偉い方々」だったという。相手に思いやりや礼儀正しさを示すことは、示された側のやりがいや喜びを高める。そのような振る舞いが自然にできる人だからこそ、彼らは「上」に行けたのだ。
一流の人は、「相手が聴く頼み方」を心得ている。何かを頼む時は、相手の名前をきちんと呼びかけ、相手がリクエストに応じたら、「ありがとう」「助かったよ」などとお礼の言葉を述べることも忘れない。頼み方ひとつに、風格が出るのだ。部下や裏方の仕事に対して、気を配り、感謝の心を持っている。
その一方で、経営者や管理職の立場にいる人が、感謝の心を軽視すると、組織の崩壊にもつながりかねない。しかし、「部下に感謝を伝えることイコール部下に甘い顔をすること」と誤解している管理職は意外に多い。人間は、自分のことを認めてくれない態度の人には、反発するか自分からも無関心を返すかである。一流の人と同じく、きちんとした感謝の表現を振る舞いに取り入れていくことが大事なのだ。
一流の振る舞いは、名刺交換の場でも問われる。重要なのは、「正しい名刺交換のマナー」というようなレベルの話ではなく、「自分の役職や格にふさわしい態度で名刺交換ができているか」という点である。
3,400冊以上の要約が楽しめる