ビジネスでは、投入時間にかかわりなく、アウトプットの質と量が問われる。本書で提唱する「時間力」とは、「やる気のある時間」をいかに増やしていくのかを指している。「やる気」と「自由度」を軸に取ったマトリクスを考えたときに、「やる気があって自由度の高い時間帯をどれだけ持てるか」が、アウトプットを左右する。また、自由度の低い仕事を、いかにやる気を持って取り組めるかが、上達の度合いを左右する。
まずは、最も高いパフォーマンスが出せる「自分の調子のいい時間帯」を把握して、その時間帯を最大活用することが重要だ。他人や本来やるべきではない仕事によって、邪魔されるのを防ぐのだ。例えば著者は、調子のいい朝の時間に原稿を一気に書き上げられるよう、原稿を書くための資料をわざと出しておくなど、翌朝スタートダッシュしやすい状態を準備している。
始業時間に良いスタートダッシュを切るためには、仕事の段取りを、前日の夜や朝の通勤時間に考えておくとよい。自分の使える時間とやるべきことを事前に把握していると、自分で時間をコントロールしている感覚も生まれやすくなる。
やる気の高い時間を増やすには、目的・目標を持つことがポイントだ。目的というのは、存在意義であり、目標はその通過点というのが著者の定義である。今、自分の存在意義がわからなくても焦ることはない。良いアウトプットを出して多くの人に喜ばれ、さらに良いアウトプットを出そうと努力するスパイラルの中で、徐々に存在意義が見えてくるはずだ。
まずは、長期的目標ではなく、短期的な月間目標を立てることをおすすめしたい。仕事に関係する本を一章読むというような目標でもよい。今月、自分が少しでも幸せになるためにやりたいと思うことを「やると決める」のだ。そして、一カ月たったら、また月間目標を立てるというサイクルを繰り返すと、一年以内に長期の目標が見つかるだろう。
人生の目的と直結する大きな目標を立て、それを今年の目標、月間の目標に落とし込むというブレークダウン式のやり方だと、いきなり実践するのは難しい。それに対し、小さな月間目標を積み重ねて長期目標にしていき、最終目的を見つけ出すステップアップ式ならば、目標を達成しやすく、人生の目的を見つけやすくなるはずだ。
ビジネスパーソンは、良質なアウトプットをできるだけ短時間で、いかにたくさん出せるかが問われる。そのためには、良質なインプットが必要になる。
必要な知識を短時間でインプットできるようになるには、アップデートしていくことが重要だ。例えば著者は、日経新聞の景気指標欄の指標の定義を覚えている。定義を覚えたうえで、毎日数字を見ていくと、経済の動きが見えてくるのだ。フレームワークは、いわば「整理棚」のような働きをする。その整理棚に情報がきれいに入っていくと、すぐに忘れてしまうのを防げる。インプットされた情報の相互関連もわかりやすくなり、違う整理棚に入っている情報同士の関連性も見えやすくなるのだ。
まずは、自分の担当している仕事に関わる基本的なフレームワークを知ることが大切だ。
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