選挙制度は、定数が1であれば「小選挙区制」、定数が2以上であれば「中選挙区制」または「大選挙区制」に分類される。中選挙区制には、選挙のための腐敗を招きやすいという問題点がある。その理由は次の二つである。一つは、各選挙区で選ばれる国会議員が、個人として有権者を代表する傾向が強くなるため、票を集めてくれる特定の団体への便宜を図ることを優先しがちになってしまうからである。もう一つの理由は、強い力をもつ「派閥」に関連している。一つの政党が議会で過半数の議席を得るには、選挙区内で同じ政党同士で競争し、複数の候補者を当選させなくてはいけない。すると、経済的・人劇な資源をもたらす派閥の長が、将来的に議員を味方につけるために資金を配るなどの政治腐敗が起こりやすくなる。
中選挙区制では、同じ政党の議員同士の意見の調整が難しくなるものも問題である。一人ひとりの議員が互いにライバルとなるため、共通の目的を掲げて協力する「組織」が成立しにくくなるのだ。結果として、各議員は、国や自治体全体よりも、自分を支持する個別の地域や業界の利害を重視しがちになってしまう。同時に、様々な主張が乱立することになるために、有権者はどの候補を選んだらいいのか判断しづらくなり、投票を見合せてしまいがちだ。
こうした状況を変えるには、議員個人への投票ではなく、政党という単位に対して投票できるようにすることが必要だ。そうすれば、有権者が代表を選びやすくなり、選ばれる代表が有権者の動向に敏感になるというメリットが生まれる。
世界の選挙制度は、勝者総取りで代表を決める「多数制」、政党の得票に応じて議席を配分する「比例制」、そして両者を組み合わせた「混合制」の三パターンに類型化できる。こうした選挙制度の違いが、実は政治そのものを大きく変えてしまう。
まず、一つ目の「多数制」とは、ある選挙区内で多数の支持を受けた候補者やグループが代表となる制度である。典型的なのは、各選挙区から一人の代表が選出される形だ。多数制では、一定の票数を獲得した少数派が議会で得票に見合った議席を獲得できないという非比例制が生じやすくなる。これがいわゆる死票の問題だ。
二つ目の「比例制」は、選挙区に複数の議席が割り当てられ、その議席が得票比率に応じて複数の政党に配分される選挙制度だ。死票が減るという利点があり、議会に多様な政党が進出し、政権獲得には複数の政党の連立が常態となる。
多数制のもとで選挙に勝つためには、大きな政党であることが圧倒的に有利であるため、大きな政党に集約しておく必要がある。基本的には単独政権になるので、政治に対する責任を問いやすい。一方、比例制の場合は、多様な意思を議会で表出させられるのと同時に、いくつもの政党で連立政権を作る必要があるため、有権者側からすればどの政党が悪いのかを判断しづらく、政党の責任を追及しにくいということになる。
三つ目の「混合制」は、多数制と比例制の長所を活かすことを狙っており、日本でも衆議院総選挙・参議院通常選挙で利用されている。両者を組み合わせた効果として、より多様な代表が選ばれ、小選挙区部分で大政党に議席が偏るのを、比例代表部分で是正することができると期待する考え方もある。
しかし、制度を混ぜ合わせたときにどのような効果が起こるかは慎重に考える必要がある。
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