日本郵政株式会社の下には、郵便事業と郵便局を運営する日本郵便株式会社、貯金を扱う株式会社ゆうちょ銀行、保険を扱う株式会社かんぽ生命保険という三つの主要子会社がある。あまり知られていないが、その事業規模は国内でもトップクラスだ。たとえば従業員数でみると、トヨタの33万人、日立製作所の32万人、パナソニックの27万人に次いで、NTTと日本郵政グループは約22万人と圧倒的に多い。売上高では2014年3月時点で、トヨタに次いで第二位の約15兆円(連結)。経常利益は、トヨタ、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャル・グループ、NTTに次いで第五位で、約1兆1000億円(連結)。持株会社も合わせたグループ全体(2014年3月期連結決算)では、純利益が4790億円に上る。また、所有不動産簿価も全国有数の規模を誇る。
2007年の郵政民営化後、さまざまな試みが施されてきたが、株式を上場するということになると、さらなる事業の発展や収益基盤の強化が求められるだろう。
郵便局は全国津々浦々、1741すべての市町村に存在しており(2014年4月5日現在。東京都の特別区を含む)、その数は2万4511(2014年3月末現在)局と、全国の銀行の店舗数よりも多い。コンビニ最大手のセブン―イレブン・ジャパンの営業拠点と比較すると、東京都と茨城、栃木など関東6県ではセブン―イレブンの店舗数が上回っているが、それ以外の地方では圧倒的に郵便局の方が多い。民間の金融機関であれば、採算に合わないことを理由に店舗を閉鎖したり、あえて進出しない地域にも郵便局は設置されており、その地域の人々の暮らしを支える役割を担っている。
郵便局は大きく分けて、日本郵便が直接運営する郵便局(直営郵便局)と、地域の人々に郵便局の運営を委託している簡易郵便局の二種類がある。また、直営郵便局のなかでも、窓口業務だけではなく、郵便局の外に出て顧客へ保険商品の営業活動を行ったり、郵便物などを届けたりする社員がいる比較的大規模な郵便局と、窓口業務のみを行う中小規模の郵便局がある。後者が圧倒的に大多数を占めていて、その内の半数近くに及び、特に地方に立地する郵便局は2、3名程度の社員で運営されていることが多い。他方、簡易郵便局は、過疎地等を中心に立地しているが、直営郵便局の手の届かない地域にも郵便局のサービスを提供するために、必要不可欠な存在となっている。
このように全国あまねくサービスを提供できるよう、地域のニーズや顧客の利便性を考慮して戦略的に店舗が配置されている。この先、地方では郵便局ネットワークは確実にライフラインとして重要性を増していくだろう。
郵便局では、さまざまな商品・サービスを提供している。郵便物・ゆうパックの引き受けや、郵便切手・はがきの販売といった郵便のサービス、あるいは、貯金・預金、送金・決済サービスの取り扱い、国債や投資信託の販売といった貯金の商品・サービス、また生命保険の募集や保険金の支払いといった保険の商品・サービスなど、私たちが生活をしていくうえで必要不可欠なものばかりだ。
しかし、近年引受郵便物の数やゆうちょ銀行の貯金残高、かんぽ生命の保有契約件数は減少傾向にある。今後は、より顧客一人ひとりの多様なライフスタイルやライフステージに応じたさまざまな商品・サービスを提供する、「総合サービス企業」を目指す必要がある。アメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)との業務提携はその一歩であり、規制の足かせのない新規事業を相次いで打ち出し、郵便局ネットワークの活用を本格化させようとしている。
国内最大の営業拠点網を武器に、郵便・貯金・保険のユニバーサル・サービスを維持しながら、「攻め」に転じられるかどうかが民営化の成否を握ることとなるだろう。
郵便貯金はもともと国の事業として1875年に創設されたのが始まりで、140年という長い歴史がある。この長い年月で培われたブランド力は、ゆうちょ銀行の強みといえるだろう。
3,400冊以上の要約が楽しめる