金利を見れば投資はうまくいく
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運用キャリア25年超のファンドマネージャーが教える
金利を見れば投資はうまくいく
出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2016年01月22日
評点
総合
3.3
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

「炭鉱のカナリア」という言葉がある。カナリアは周囲の異変に敏感であり、危険を感じると鳴かなくなるため、かつての炭鉱労働者は坑道に入る際、3羽のカナリアを鳥かごに入れて持っていったという。

投資の世界でこの「炭鉱のカナリア」にあたるのが金利である。タイトルにもあるように、「金利のことを知れば投資の確実性は向上する」というのが本書のメッセージだ。景気には日本のように春・夏・秋・冬の四季があり、季節ごとにどんな株や債権がいいかは異なる。より確実な投資をするためには、金利を指標にして景気の移り変わりを読み解くべき、というのが著者の主張である。

アメリカで起きたリーマンショックについても、まっさきにその変化に反応したのは金利であったという。当時の金利動向が何らかの「警告」であることがわかっていれば、たとえ好景気の中であっても、2006年頃からの住宅価格の陰りを、深刻な事態としてとらえることができたかもしれない。複雑な経済の移り変わりを、金利という武器を手にして読み解いていく著者の手腕には、これまで経済にあまり関心がなかった人でさえ惹きつけられるだろう。

これから投資を始めようとしている人だけでなく、経済の動きがこれからどうなっていくのか、大局的な視点を持ちたいと思っている人にもぜひお薦めしたい一冊だ。

ライター画像
原ユキミ

著者

堀井 正孝(ほりい まさたか)
SBIボンド・インベストメント・マネジメント(株)代表取締役。国内有数である先進国債券ファンド「グローバル・ソブリン・オープン(通称グロソブ)」元運用責任者。第一生命保険(株)および系列運用会社(現DIAM)で債権運用ファンドマネージャーとして従事した後、2005年から2015年12月まで国際投信投資顧問(株)(現三菱UFJ国際投信(株))でグロソブを担当。2008年「国内債券型・国際債券型部門モーニングスター最優秀ファンド賞」受賞。債権運用歴25年。早稲田大学理工学部卒。

本書の要点

  • 要点
    1
    リーマンショック前後に真っ先に景気の変化に反応したのは「金利」である。景気の動向を知りたければ、「金利」を注視することだ。
  • 要点
    2
    景気を読み解く上で重要になるのが「政策金利」「国債利回り」「社債利回り」の3つの金利である。
  • 要点
    3
    景気には3つのサイクルが存在しており、この3つのサイクルの低迷期が一致したときに世界的な恐慌が起きる。
  • 要点
    4
    最大の消費者であるアメリカの影響力は依然として大きい。世界について知りたければアメリカのことをまず知る必要がある。

要約

【必読ポイント!】金利は景気の「今」を表す

市場心理は景気に表れる
TimArbaev/iStock/Thinkstock

投資で一番の恐怖は価格の下落だ。自分が買った直後に相場が下がったり、逆に売った直後に相場が上がったりという苦い経験は、投資をしているほとんどの人が一度は経験していることだろう。できるかぎり投資で損をしないためには、今が景気サイクルのどのあたりに位置するのかを把握しなければならない。今の状態がわからなければ、次にどうなるかの予測を立てることはできない。

景気には市場心理が如実に表れており、金利はそれをどの指標よりも正確に表す。つまり、金利動向から景気を判断すれば、投資で大きな失敗をすることも回避できる。

投資をするうえで金利が特に重要なのは、金利が景気の「今」を表しているという点である。なぜなら金利には、(1)日次でデータの取得ができる速報性、(2)データが改定されない確実性、(3)個々の企業の影響を受けやすい株式などと異なり個別要因が少ないという特徴が備わっているからだ。

経済指標も経済状況の変化を把握するうえで重要な指標ではあるが、一方で経済指標では今の景気を判断するのは難しい場合が多い。たとえばアメリカのGPDや雇用統計などには、発表時期が遅かったり、数値が何度も修正されてしまったりという問題がある。これらは過去の分析をするうえでは有用ではあるが、今の景気状況を判断するうえでは望ましい指標ではない。

もちろん、ISM経済業景気指数のように現状を分析するうえで有効なものもある。しかしいずれにせよ、経済指標を適切に用いるためには、景気状況や経済によって適切な指標を使い分ける専門的な知識が求められてしまう。

3つの金利で景気は予測できる

1つ目の金利「政策金利」

金利には大きく分けて短期金利と長期金利がある。一般的に、短期金利は期間が1年未満の、長期金利は期間が1年以上の金融資産の金利を指す。

景気の予測に使う金利はたった3つだけだ。1つ目の「政策金利」は短期金利のひとつで、具体的には、中央銀行が一般の銀行に融資を行う際に受け取る金利、すなわち中央銀行に支払う金利のことを指す。

中央銀行は景気を安定的に拡大するため、政策金利を変更し、市中に出回るお金の量を調節している。景気が良いとには政策金利を上げてお金を借りる人を減らし、景気が悪くなれば政策金利を下げ、お金を借りる人を増やす。この政策金利の引き上げを「利上げ」、引き下げを「利下げ」と呼ぶ。

当然、政策金利は金融政策の影響を大きく受ける。私たちにとっても身近な預金やローンの利率など、期間の短いものはこの政策金利が基準の1つとなっている。

2つ目の金利「10年国債利回り」
Eugenia Chaikina/Hemera/Thinkstock

第2の指標は「10年国債利回り」という長期金利の1つである。

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要約公開日 2016.09.09
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