投資で一番の恐怖は価格の下落だ。自分が買った直後に相場が下がったり、逆に売った直後に相場が上がったりという苦い経験は、投資をしているほとんどの人が一度は経験していることだろう。できるかぎり投資で損をしないためには、今が景気サイクルのどのあたりに位置するのかを把握しなければならない。今の状態がわからなければ、次にどうなるかの予測を立てることはできない。
景気には市場心理が如実に表れており、金利はそれをどの指標よりも正確に表す。つまり、金利動向から景気を判断すれば、投資で大きな失敗をすることも回避できる。
投資をするうえで金利が特に重要なのは、金利が景気の「今」を表しているという点である。なぜなら金利には、(1)日次でデータの取得ができる速報性、(2)データが改定されない確実性、(3)個々の企業の影響を受けやすい株式などと異なり個別要因が少ないという特徴が備わっているからだ。
経済指標も経済状況の変化を把握するうえで重要な指標ではあるが、一方で経済指標では今の景気を判断するのは難しい場合が多い。たとえばアメリカのGPDや雇用統計などには、発表時期が遅かったり、数値が何度も修正されてしまったりという問題がある。これらは過去の分析をするうえでは有用ではあるが、今の景気状況を判断するうえでは望ましい指標ではない。
もちろん、ISM経済業景気指数のように現状を分析するうえで有効なものもある。しかしいずれにせよ、経済指標を適切に用いるためには、景気状況や経済によって適切な指標を使い分ける専門的な知識が求められてしまう。
金利には大きく分けて短期金利と長期金利がある。一般的に、短期金利は期間が1年未満の、長期金利は期間が1年以上の金融資産の金利を指す。
景気の予測に使う金利はたった3つだけだ。1つ目の「政策金利」は短期金利のひとつで、具体的には、中央銀行が一般の銀行に融資を行う際に受け取る金利、すなわち中央銀行に支払う金利のことを指す。
中央銀行は景気を安定的に拡大するため、政策金利を変更し、市中に出回るお金の量を調節している。景気が良いとには政策金利を上げてお金を借りる人を減らし、景気が悪くなれば政策金利を下げ、お金を借りる人を増やす。この政策金利の引き上げを「利上げ」、引き下げを「利下げ」と呼ぶ。
当然、政策金利は金融政策の影響を大きく受ける。私たちにとっても身近な預金やローンの利率など、期間の短いものはこの政策金利が基準の1つとなっている。
第2の指標は「10年国債利回り」という長期金利の1つである。
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