金融機関の営業担当者は資産運用のプロでもコンサルタントでもなく、金融商品の売り手であることをまずは理解したい。銀行や証券会社は営利企業のため、顧客の手数料によって経営が成り立っている。「お客様にとってのコストは、金融機関にとっての利益」であり、ここに利益相反の関係が生じる。
加えて、金融機関と顧客の間には資産運用の時間の意識に決定的な違いがある。大半の方が資産を長期的に殖やしたいと考えているが、営業担当者は一定期間ごとにノルマがあり、それは顧客からの手数料収入を増やすことにより達成できるものだ。したがって、自分の営業成績や昇進のために、短期で効率よく手数料を稼げる投資信託に誘導しがちになる。
顧客が投資信託を購入後、運よく値上がりしたら、利益の確保のために別の投資信託に買い替えるようにアドバイスして、次々に商品を乗り換えてもらい、顧客から購入手数料を取る。これではせっかく殖えたお金も手数料によって削り取られ、資産形成など望めない。
銀行には本当に優秀な営業担当者もいるが、それはごく少数で、大半は普通の営業担当者だ。その中でも専門知識やコンサルティング能力ではなく、高いコミュニケーション能力のみで信頼を勝ち得てしまう営業担当者には注意が必要だ。そのターゲットは金融の知識をもち合わせていない女性や年配の顧客である。
最近は「退職金運用プラン」などの商品を販売している銀行も増えているが、この種のプランは手数料を考慮すると割高であることも多い。退職金は老後の生活を支える大事なお金なので、くれぐれも見せかけの利回りにだまされてはいけない。
30代、40代の人たちが定年を迎えるころには年金財政はいま以上に厳しくなっているだろうから、本当の意味で資産運用が必要なのは若い人たちだ。しかし、若者は
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