1949年、19歳だったバフェットは、ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』を読んだ。彼はその後、コロンビア・ビジネス・スクールでグレアムの授業を履修し、1954年から1956年までは株式アナリストとしてグレアムのもとで働くことになる。グレアムの思想が、彼の成功の礎を築いたのである。
グレアムは、投資を次のように定義した。「投資とは詳細な分析に基づいて、元本の安全性と満足できるリターンを確保する行為だ。これらの原則を満たさない行為は投機と言える」。
グレアムの言う投資における3つの重要な要素は、次の通りだ。
(1)詳細な分析:投資とは、会社の一部を保有する行為である。投資する際には、会社の一部ではなく全体を買う場合と同様の質問を自分自身に問いかけなければならない。たとえば、「売上高と利益の過去の推移はどうか」「顧客からの評判は良いか」「資産は潤沢で負債は少ないか」「競争環境はどうか」「経営陣は有能で誠実か」といったことだ。グレアムはこうした分析において、定性的な側面よりも定量的に証明された事実を最重要視した。
(2)元本の安全性:株式を買うときは、取得価格と自分自身が計算した企業の本質価値の間に大きな安全性マージン(安全性の余裕度のこと)があるときのみ買うべきだ。
(3)満足できるリターン:卓越したリターンを目指してはならない。
さらにバフェットはグレアムから、投資リターンが投資家の持つ知識、経験、気質に左右されることを学んだ。
まず、知識についてだ。投資家は、ビジネスについて理解しておかなければならない。特に、会計とファイナンス、経営戦略については、ある程度の知識が必要となる。
これらの知識は、投資家としての経験を通じて深まり、拡がるものでもある。ほかの投資家の失敗や成功から学ぶことも多いだろう。
また、投資においては、IQよりも気質が重要である。いくら賢くても、精神面での正しいアプローチを心得ていなければ、投資はうまくいかない。たとえば、一部の投資家が最新のテクノロジーに投資して利益を上げていることにつられ、便乗してしまう投資家がいる。根拠なき熱狂に参加してしまうのは、悪い気質のひとつだ。
グレアムはバフェットに、「ほかの投資家を出し抜きたいのであれば、マーケットで彼らが何に気を取られているのかを理解する必要がある」と言い聞かせた。
多くの投資家たちは、企業の将来への期待に関心を持っている。しかし、将来のことを確実に予測することは不可能だ。そうしたことに気を取られていると、貸借対照表や過去の利益の推移、株価など、もっと重要なことに注意が向かなくなってしまう。ビジネスストーリーに気を取られ、その企業の本来の姿を無視してはいけない。
バフェットが生まれたのは、ウォール街大暴落の直後、1930年8月だった。子どものころは、ゴルフボールを拾い集めて売ったり、パックで買ったコカ・コーラを1本ずつ売ったりしてお金を稼いだ。ワシントンに住んでいたときは、通学前に3つの配達ルートでワシントン・ポストを配ったという。
11歳のときにはすでに6年間働き、120ドルの貯金があった。その貯金と姉のお金を合わせて、シティ・サービスの優先株を6株取得した。
ところが、
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