エンジェル投資とは立ち上げ最初期の非公開企業に投資し、投資した以上のリターン(利益)をめざすことである。ほとんどのケースにおいてその期間は3年以内で、投資対象は誰も見向きしないような、クレイジーかつ実績のないビジネスである。というのも誰もが理解できるようなビジネスなら、そもそもエンジェル投資家は必要とされないからである。著者のような投資家が「エンジェル投資家」と呼ばれるのは、スタートアップ創業者のビジネスモデルを信じる者がひとりもおらず、絶体絶命となったまさにその時、天使のごとく救い出すことに由来する。
一般的な投資と比べると、エンジェル投資のリスクははるかに高い。おそらく世界でもっともリスクの高い投資だろう。しかしそのぶん見返りも大きい。しかも世界でもっとも創造的かつ高いモチベーションをもつ人々と働くチャンスも得られる。こうしたコネクションは何物にも代えがたいし、日々得られる学びも大きい。
たしかにたった1つのスタートアップだけにすべてを賭けるのは無謀の極みである。だがスタートアップ100社に賭ければ、トータルで見た成功確率は非常に高い。もはや賭けないのがバカらしくなるぐらいに。
エンジェル投資家になるためには(1)金、(2)時間、(3)人脈、(4)専門知識という4つの能力が求められる。(1)~(3)はいうに及ばず、創業者がミスを犯して時間や金をムダにするのを防ぐ意味でも(4)は重要である。
加えて人付き合いの能力も欠かせない。エンジェル投資を仕事にしていると、さまざまな人々とコーヒーを飲みながら話し合うことになる。しかもその話し相手は、まともな創業者だけではない。むしろ大半のリターンをもたらすのは、「頭がおかしい」「ひどいナルシスト」と呼ばれているような起業家の方だ。すぐれた起業家ほど自分のビジョンを追うことに一生懸命で、他人の感情などにはまったく注意を払わないものである。
エンジェル投資家としての最初の仕事は、揚げ足取りや後ろ向きの批評が得意な考えのスケールが小さい人間に、そういう起業家が邪魔されないよう盾になることだ。小さく考えてしまうと、人間は小さくなる。スタートアップの創業者であれば小さい成功を狙わず、ビッグな目標を追ってもらいたいというのが著者の考えだ。
ここ50年もの間シリコンバレーは、さまざまなビジネスを大きく変える震源地となってきた。世界で時価総額トップ5の企業のうち、3社がシリコンバレーにあることからもそれがわかる(残りの2社はシアトル)。アメリカのベンチャーキャピタル総額の30%が、サンフランシスコとシリコンバレーを含むベイエリア一帯で投資され、シリコンバレーへの投資額はいまやボストンやニューヨーク、ロサンゼルスにおける投資額の合計の2倍だ。そういう意味でベイエリアが「世界の中心」なのはまちがいない。
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