日本人は、「和をもって貴しとなす」とする民族性がある。だから若い人も「みんなと同じがいい」「ふつうがいい」と幼いころから刷り込まれてしまっているかもしれない。
しかし、それではいけない。「みんなと違っていても、いい」と考え方を変える必要がある。なぜなら今は、「ふつう」でいることのリスクのほうが格段に高いからだ。
昨今、グーグル、アップル、アマゾン、フェイスブックといった企業が圧倒的な強さを見せている。これらの企業が、この3、4年で世界の半分以上のビジネスを牛耳るのではないかとさえ言われているほどだ。これらの会社は、いわば「変な人」集団である。とくにグーグルは、「変な人」を採用し、彼らの遊び心を促進する社内制度を整えていることで知られている。だからこそ、革新的な事業を考案することが可能となっているのだ。
こうした状況において、「ふつうの人」集団である日本企業はもう太刀打ちできないだろう。横並びになってことを成す時代は終わろうとしている。
一方、JTには「変な人」が多い。夢みたいな企画を実現したり、失敗ばかり繰り返しながらも1本の見事な場外ホームランを放ったりといった人がいる。そうした人たちを、JTは「やりたいようにやれ」と表だってけしかけているわけではない。しかし「変な人」に対して「どうせやめろと言っても聞かないから、やらせよう」とあきらめてくれる風土がある。
「社員のやる気にふたをしない」社風も特徴的だ。勝算がないことでも、高い確率でやらせてくれるという。
またJTでの仕事が楽しい理由のひとつに、JTの人は「後輩が好きだ」というものがある。先輩社員は無意識のうちに「変な後輩」を探している。他部門であっても、「あいつは変だ」という話を耳にすると「ちょっかい」を出しにかかる。後輩の何気ない思いつきに対して「おもしろいからやってみたら?」と何気なくサポートするのだ。そうすると、後輩もいつの間にか「やってやろう」となるという。このようにして上下横で「変な人」がつながったネットワークがつくられている。
著者が人材採用において重視していたのは、能力(ポテンシャル)と成長度(社風に合っているか)だ。それらに加えて、「流れのいい人」であるかどうかにも注目していた。「これからの10年は過去の10年の延長線上にある」という仮説を前提とし、中学に入学する前後からの10年、どのように生きてきたかを質問するようにしていたという。重要なのは「何をしたか」ではなく、ターニングポイントにおいてどのように意思決定をしてきたかだ。
たとえば、留学を経験した学生が2人いるとしよう。
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