自動運転と、カーシェアリングやライドシェアリングなどの新型モビリティーサービスは、今後どう普及していくのか。まずは、前提となる観点を整理しよう。
第一の観点は、「交通システムで解決すべき社会的課題・ニーズ」と、その「国ごとの違い」だ。自動運転や新型モビリティーサービスによる交通システム変革が求められる理由は何か。まずは、個人の利便性や個別事業者の生産性向上といった、ミクロレベルのニーズがあるからだ。同時に、よりマクロな社会的課題の解決への貢献が期待されている。
自動運転や新型モビリティーサービスの普及には、法整備やインフラ整備などの点で、各国政府や地方自治体の関与が欠かせない。そうした公共部門が積極的に関与するためにも、社会的課題の解決に貢献するという大義が必要になる。
自動運転に期待されているのは、直接的には「交通事故の削減」や「交通渋滞の減少」だ。渋滞を減らした結果として、新興国で深刻化している「大気汚染の軽減」や「CO2排出量の削減」も期待できる。つづいて運輸・物流業界では、「不足する労働者(=運転者)の代替」という効果が見込める。
他方で、新型モビリティーサービスへの期待としては、「高齢化・過疎化に伴う交通弱者対策」が挙げられる。欧米などの一部先進国では、「貧困に伴う交通弱者対策」になるだろう。
また、こうした自動運転や新型モビリティーサービスが、他の政策手段よりもコスト的に優位ならば、「財政負担の軽減」にもつながり得る。
こうした社会的課題のうち、どれがどのくらい深刻なのかは、国により状況が異なる。「高齢化」やそれに伴う「労働力不足」は、先進国や将来的には中国などの新興国にも共通の課題だ。特に日本では、欧州諸国より約10年、米国より約20年、中国より約30年先行して、問題が顕在化しつつある。
また、「過疎化」が社会問題化しているのは、先進国の中でも日本だけである。もちろん「交通事故の削減」は、各国共通の課題だ。だが、先進国ではシートベルトの着用義務化やエアバッグなどの安全装備の普及により、事故数は減少傾向にある。最近では自動緊急ブレーキなどの普及が、より即効性のある解決策になっている。
このように見ると、自動運転や新型モビリティーサービス導入の必然性が相対的に高いのは、実は日本なのである。よって日本では、これらの変革を社会政策の一部として進める意義がかなり大きい。
新型モビリティーサービスの市場は拡大しつつある。新型モビリティーサービスは、利用者が自分で運転する車を借りるカーシェアリングと、運転者付きの車に乗客として乗るライドシェアリングとに大別できる。
カーシェアリングには、借りた場所に返す「ステーションベース型」(日本で主流)と、決められた場所に乗り捨てできる「フリーフローティング型」(欧州で主流)とがある。これらは事業者が保有する車両を貸し出すサービスだ。今では、自家用車が空いている時間に個人間で貸し借りをする「PtoP型」のサービスも徐々に登場している。
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