「働き方改革」が叫ばれるようになって久しい。だが生産性向上や業務効率化の手だてがなく、限界を感じている企業も多いだろう。
RPA(Robotic Process Automation)とはホワイトカラーの生産性を革新的に高める技術であり、その技術を利用した業務改革手法である。人間を補完して業務遂行できることから、「デジタルレイバー(Digital Labor):仮想知的労働者」とも呼ばれる。人とロボットが分業・共生し、人がデジタルレイバーを部下の一員としてマネジメントする時代が到来したのだ。
RPAには画面認識技術と自動プログラム生成技術があり、それぞれ人間の「目」と「脳」にあたる役割を果たしている。こうした技術が人間の作業を自動的にコピーし、再現することを可能にさせている。RPAは人間がアクセス可能なデータであれば収集できるし、定型ルールにもとづいてロジックを組みこめば、データの加工からエラー発見時の確認作業まで対応できてしまう。たとえばRPAは次のような業務で活用できる。
・販売処理、経理処理などの事務処理作業
・商品登録、在庫連携などのバック処理
・競合他社の動向、商品などのWeb調査
・社内複数システムにまたがる情報の集計・分析資料作成
つまりこれまで人間にしかできないと思われていた企業の人事・経理・資材調達・営業事務の多くは、デジタルレイバー(RPA)で代替できるわけだ。
膨大なデータを圧倒的な正確さとスピードで処理するという点で、RPAと人工知能(AI)は似ている。しかし両者には業務効率化の点で大きな違いがある。
AIがルールをみずから発見・定義して作業を自動化するのに対し、RPAは人間が決めたルールの範囲内で作業を自動化する。ゆえにAIの場合、100%の精度で処理できるようになるまでには多大な時間とコストがかかるが、RPAは限定された範囲内で処理をおこなうため、100%のレベルまで短期間で到達する。
多くの企業が求めているのは、自分たちの決めたルールの範囲内で、正確性と生産性を高速で担保する仕組みだ。そういう意味で即戦力となるのはRPAのほうなのである。
残念なことに先進国のなかで、日本の労働生産性はきわめて低い。労働人口も減少の一途をたどっているし、残業問題が象徴するように労働環境も決していいとはいえない。
日本企業がグローバルな競争に勝ち抜くためには、イノベーションを起こすような創造的な業務に専念できるよう、「真の働き方改革」に取りかかることが急務である。しかし現場では日々の単純作業に追われ、創造的な業務に時間を割くことができていない。
こうしたなか2017年以降のRPAの採用企業が急増し、金融からサービス業、メーカーへと拡大している。ある調査によると導入企業の約半数が、1カ月もかからずにRPAの導入を完了。さらに97%の企業が5割以上の業務削減を実現したという結果が出ている。
しかも「RPAの威力」はそれだけではない。「従業員の意識までが変わり、自発的、自動的に行動しはじめる」という、副次的な変化まで表れているのだ。「今後RPAを活用しない企業は生き残れない」といっても過言ではないだろう。
RPA導入のコツと成功のポイントは次の5つである。
(1)考えるより触れ
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