さらば、GG資本主義

投資家が日本の未来を信じている理由
未読
さらば、GG資本主義
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投資家が日本の未来を信じている理由
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さらば、GG資本主義
出版社
出版日
2018年06月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

どこまでも加速し続ける日本の高齢化。高齢化が引き起こす問題として真っ先に挙げられるのは、財政問題だ。たしかに、年金や医療・介護費用を維持するのが難しいというのは、深刻な事態である。しかし、この高齢化社会は、日本の会社や経済においても、より広範囲に「みんなの成長」を妨げているのではないか――。著者の指摘に大いに共感させられ、要約者は最後まで一気に本書を読み進めてしまった。

著者は、「資産運用のプロ」といえるファンドマネージャーの藤野英人氏。主に日本の成長企業に投資する投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用し、驚異的な運用成績を上げている。ひふみ投信は、2017年の「カンブリア宮殿」で取り上げられ、世代を超えて共感の嵐を生んだことも記憶に新しい。投資への無知や恐れがまだまだはびこる日本において、投資の意義を啓蒙している。そんな著者が、データや経験をもとにあぶり出す、日本社会の「不都合な真実」には、ただただ圧倒されるばかりだ。

高齢世代がいつまでも経済の中心を担い、牛耳り続けているために、若者が活躍するチャンスがやってこない――。この構造的問題を「GG資本主義」と名づけ、メスを入れていく様は痛快そのもの。しかも、決して暗澹たる読後感は残らない。「GG資本主義」脱却に向けて、すでに変化の兆しが生まれていることが明らかになるためだ。何より、著者が提示する処方箋を読めば、「日本にこれほどのチャンスがあるのか」と、むしろ明るい展望を抱けるようになるだろう。現代最強の投資家が語る、真の日本活性化のストーリーをお楽しみいただきたい。

ライター画像
松尾美里

著者

藤野 英人(ふじの ひでと)
レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長・最高投資責任者。1966年富山県生まれ。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資教育にも注力しており、明治大学商学部兼任講師、JPXアカデミーフェローを長年務める。一般社団法人投資信託協会理事。主な著書に『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『ヤンキーの虎 新・ジモト経済の支配者たち』(東洋経済新報社)、『投資レジェンドが教えるヤバい会社』(日経ビジネス人文庫)。

本書の要点

  • 要点
    1
    高齢世代が重要ポストに居座り、企業の新陳代謝を阻んでいる。この構造的問題を、著者は「GG資本主義」と呼ぶ。
  • 要点
    2
    上場企業の売上高や株価のデータでは、若い人に会社を任せればうまくいくことが明らかになっている。
  • 要点
    3
    個々人がもっと仕事を楽しむためには、「オーナー・シップ(当事者意識)」をもって自分の道を切り開く「虎になる生き方」がおすすめだ。とりわけ、会社の中で存在感を発揮する「トラリーマン」の存在は、日本活性化においても欠かせない。

要約

日本の「GG資本主義」にモノ申す

高齢化社会が「みんなの成長」を邪魔している!
SIphotography/iStock/Thinkstock

高齢世代が組織の重要ポストに居座って、実権を譲ろうとしない。そのせいで、若い人が活躍するチャンスがやってこない――。この現象が日本経済においても、より広範囲に「みんなの成長」を妨げている。

この象徴的な事例が、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)の現・名誉顧問、鈴木敏文氏の電撃退任だ。セブン&アイの取締役会で、鈴木氏はセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長の退任を強く求めた。しかし、井阪社長のもとで業績は大きく伸びていることもあり、取締役会の承認は得られず、井阪社長の続投が決まった。鈴木氏は退任を表明する会見で、恨み言を並べた。さらに衝撃的なことには、井阪社長の社長続投を阻止するよう、井阪社長の父親に進言していたという。

井阪社長はすでに還暦近い経営者である。だが、退任当時83歳だった鈴木氏にとっては、自分たちのような「大人」がついていないと、経営など任せられないと思っていたのかもしれない。

このように、高齢世代が重要ポストに居座り、企業の新陳代謝を阻んでいる。そして日本企業は、旧来型の発想から抜け出せずにいる――。これを著者は「GG資本主義」と名づけた。

データが示す真実、「若い社長に任せれば結果が出る」
julief514/iStock/Thinkstock

GG資本主義が与える影響力の大きさは、データからも明らかとなっている。まず、日本企業の社長の平均年齢は、上昇の一途をたどっている。2017年時点で59.5歳だという。また、個人の消費活動に目を転じると、消費で存在感を放っているのも60歳以上である。2015年の消費シェアに占める30~39歳の割合は、たった9.9%にすぎない。40~49歳ですら19.8%だ。一方、60歳以上は47.8%にものぼる。

つづいて、各資産の保有者の割合を年代別に見ると、60歳以上の保有率が金融資産で68.8%、土地保有で56.4%である。他の世代に比べて圧倒的に高いことから、安心して消費できる人が多いことも頷ける。このように、会社経営、消費のいずれにおいても、60歳以上が経済に与えるインパクトはかなり大きい。

ただし、問題は高齢者ではなく、GG資本主義という「構造」にある。著者はファンドマネージャーとして、7000人近くの社長を取材した。実際に会社に足を運び、投資判断をしてきた。そこで判明したのは、「若い人に会社を任せればうまくいく」という、シンプルな事実だ。

上場企業を社長の年齢別にグループ分けして、3年間の株価のパフォーマンスと売上高の変化率を見てみよう。すると、60代以上が社長を務める会社より、30代、40代が社長を務める会社のほうが、売上高の伸び率も、株価の上昇率も高い。もちろん、上場したてのベンチャーなど、会社自体も若く、急成長しているところが多いというのもあるだろう。とはいえ大企業であっても、トップの若返りで業績が伸びることは多い。通常、若い人ほど時代の流れに乗りやすく、柔軟な発想ができる。経営陣の若さは強みの1つなのだ。

よって、企業のパフォーマンス向上はもちろん、経済・社会の成長のためにも、権限と責任を若い世代に託すことが欠かせない。

オーナー・シップが欠如した日本企業

GG資本主義がはびこるようになった背景は何か。それは、日本人のサラリーマン体質によって、「オーナー・シップ(当事者意識)」が欠如していることだ。

欧米では、株主が創業者の代理人として、承継者にオーナー・シップを促し、経営を任せる。ストック・オプションなどの株式報酬にも、この発想が現れている。業績を上げれば莫大な利益を得られる。かわりに、失敗したら容赦なく交代させられる。そのため承継者は、当事者意識をもって業績を伸ばそうと必死になるというわけだ。

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要約公開日 2018.08.30
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