問題児

三木谷浩史の育ち方
未読
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三木谷浩史の育ち方
未読
問題児
出版社
出版日
2018年02月07日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

日本は、エネルギー問題をはじめとした様々な問題を抱えている。こういった問題を解決していくためには、多くの人の意識を変えなければならない。意識の転換を行うためには、柔軟な発想を持つ実業家の存在が重要だ――そのような思いを抱く著者、東北芸術工科大学の教授である山川健一氏が「未来を見せてくれる希少な人物」と評するのが、楽天株式会社の代表、三木谷浩史である。

三木谷は楽天株式会社の創業者で、代表取締役会長兼社長として、70以上のサービスを国内外に展開する楽天グループを統括している。活動の場は自社にとどまらず、新経済連盟代表理事、東北楽天ゴールデンイーグルス会長兼球団オーナー、Jリーグヴィッセル神戸オーナー、東京フィルハーモニー交響楽団理事長をつとめている。

希代の実業家である三木谷は、一橋大学を卒業して興銀(日本興業銀行)に就職し、社費でハーバード大学へ留学したエリートである。しかし少年時代の三木谷は、中学で煙草を吸い、ギャンブルに打ち込んで父親の財布から金をくすねる問題児で、成績は平均以下であった。そんな彼が道をそれることなくエリートへの道を歩み始めたのは、その姿を見守る両親の存在があったからだ。

本書は、愛情溢れる父と母に導かれた問題児が、どのように育ち、どのような教育を受け、そしてこれからどこへ向かおうとしているのかを紐解いている。日本を変えるために奮闘する実業家の半生は、同じ時代を生きる私たちに、重要な示唆を与えてくれるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

山川 健一(やまかわ けんいち)
1953年千葉市生まれ。東北芸術工科大学芸術学部文芸学科教授、学科長。77年「鏡の中のガラスの船」で群像新人文学賞優秀作受賞。著作は百冊を超える。

本書の要点

  • 要点
    1
    小学校から高校2年生まで平均以下の成績であった三木谷浩史は、両親に見守られながら成長し、日本を代表する実業家となった。
  • 要点
    2
    三木谷は、新卒で日本興業銀行に入行する。しかし、阪神淡路大震災をきっかけに、起業を決意する。1997年には、インターネット・ショッピングモールを立ち上げ、現在に至るまでに「楽天経済圏」と呼ばれるサービスを形成した。
  • 要点
    3
    三木谷は、実業家が国の問題を解決するアイデアを出していくべきだと考え、日本の英語教育改革などに積極的に関わっている。

要約

大学に入学するまで

学校の成績は悪かった

三木谷浩史(以下、三木谷)は、まったく勉強しない少年だった。小学校時代の通信簿は、5段階評価でほとんど2か3であり、5はひとつもない。中学校から高校2年生まで、通信簿は2と3ばかりだった。欠席も多く、2週間に1回は学校を休んでいた計算だ。

しかし父の良一も、母の節子も、彼の成績が悪いことをほとんど気にかけなかった。それよりものびのびと育てることを心がけた。父は、三木谷が「自分の頭で考える子」であることを理解していた。母は、本人にやる気がなければどうしようもないが、本人が何かをやりたいと言い出した時にはできる限りのバックアップをしようと考えていた。

アメリカに暮らした2年間
djedzura/iStock/Thinkstock

父、三木谷良一は、世界恐慌の年である1929年、神戸市灘区に生まれた。神戸経済大学(現神戸大学)を卒業し、ハーバード大学、スタンフォード大学などを経て、1993年に神戸大学名誉教授となった人物である。

1973年、三木谷が小学校2年生の時、良一がイェール大学の研究員に就任。最初は、父が1人でアメリカに行くつもりだった。しかし、母、節子の、子どもたちにアメリカの教育を受けさせたいという思いから、家族で渡米することとなる。

三木谷が初めて登校する日、両親ともに都合がつかず、彼に付き添うことができなかった。両親に教わった「男子トイレはどこ?」というフレーズ以外、英語がまったく話せない三木谷だったが、初日に友達を作り、自宅に連れてきたという。

アメリカでも、成績はCばかりだった。それでも、英語にはすぐに慣れ、2年間のアメリカ生活を楽しんだ。日本に帰国した時には、日本語よりも英語のほうが上手なほどだった。

大学受験に挑む

小学校卒業後、三木谷は、スパルタで有名な中高一貫全寮制の学校に入学した。その学校にあまり馴染めず、2年生の時に退学。地元の公立中学に編入した。地元の学校での生活を楽しんだが、勉強はせず、麻雀や競馬、パチンコに熱中する悪ガキだった。

その背中を見守っていた父、良一だが、道を正すべく三木谷にテニスを勧める。すると彼は父の狙い通りにテニスに熱中しだし、高校に入学してからも、その熱中は続いた。テニスのプロになることも考えたが、高校2年生の時の大会で優勝できなかったことを機に、大学に進むことを決意したのだった。

しかし当時、三木谷の成績は学年350人中320番だった。行ける大学があるかどうかとまで言われたほどだったが、ある先生から「今から一生懸命やれば、国公立大学でも入れる」と言われたことを励みに、夏休み明けから勉強を始めた。3年生になる頃には、神戸大学を受験できるレベルまで成績が向上していた。結局、1年浪人ののち、一橋大学に入学する。

就職、そして起業へ

日本興業銀行に入行、アメリカへ留学
scyther5/iStock/Thinkstock

大学卒業後、日本興業銀行に入行した三木谷は、本店外国為替部の送金セクションに配属された。経営や営業の最前線に関わる部署ではなく事務方だったが、スキームを考える仕事に、三木谷自身はやりがいを感じていたという。行内での評判も良く、ハーバードビジネススクールへの社費留学生にも推薦された。同期社員の40~50人が留学生を決める試験を受けたが、三木谷1人が留学生に選ばれた。学生時代から、海外留学を夢見てコツコツと英語の勉強を続けていた彼の夢が叶った瞬間だった。

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要約公開日 2018.06.23
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