我々が住むこの宇宙が何でできているのか、じつは、まだよくわかっていない。宇宙といえば、暗闇に浮かぶ美しい星や銀河を思い浮かべるかもしれないが、それらを全部かき集めたとしても、宇宙全体のエネルギー構成のうち0.5%ほどにしかならないのだ。
さらに、私たちの身体も構成している「原子」だが、原子でできている物質は宇宙全体で4.4%ほどしかなく、これらを足し合わせても100%には到底及ばない。私たちの身体を含め、身の回りのすべての物質は原子という粒子によって構成されていると学校で習ったはずだが、じつは、この宇宙にある原子を全部集めても5%にもならないのだ。
では、残りは何なのかといえば、まだわかっていないというのが答えだ。NASAの観測衛星WMAPによると、宇宙の23%は暗黒物質で、73%は暗黒エネルギーで占められていることがわかっているという。しかし、暗黒物質も暗黒エネルギーもその正体はわかっていない。つまり、正体不明の物質やエネルギーにとりあえず名前をつけて100%に到達するようにしただけなのだ。
「ニュートリノ」と呼ばれる素粒子のひとつは、宇宙のエネルギー構成のうち0.1~1.5%を占めており、このニュートリノの親戚にあたる物質は暗黒物質の正体の有力な候補として考えられている。
パーセントで見るとニュートリノはあまり宇宙全体に関与していないように感じられるが、じつは粒子の数を比較すると見方が大きく変わってくる。エネルギー量では宇宙全体の4分の1を占めている暗黒物質だが、その粒子の数は一立方センチメートルあたり1000万分の1個くらいしかないと考えられている。ところが、ニュートリノは一立方センチメートルあたりに300個も粒子がある。私たちの身体をつくる原子、さらにそれを構成する陽子、中性子、電子などはニュートリノの10億分の1しかない。
つまり、粒子の数でいえばこの宇宙はニュートリノであふれているのだ。ニュートリノは太陽などの星からも出ていて、一秒間に数百兆個のニュートリノが私たちの身体を通り抜けている。それにもかかわらず、私たちはその存在に気付くことがないのは、ニュートリノが重力や電磁気力などと反応せずにただ素通りしてしまうからなのだ。
ではどうすればニュートリノの存在を知ることができるだろうか。その検証方法はじつに単純で、「ものをたくさん置くこと」だという。朝の通勤時間帯の駅のホームは、人が多すぎるためになかなか前に進めないなんてことがあるが、昼間のすいている駅のホームでは難なく前に進めるだろう。
それと同じことで、「ひとつの場所にたくさんの物を置けば、たまにはひとつぐらいニュートリノがコツンとぶつかってくれるはず」というわけだ。それでも、たとえば鉛でニュートリノを捕まえようとすると、地球上には存在しないほど大量の鉛がなければ、通り過ぎるニュートリノを捉えられないという。
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