1章では、統合失調症、PTSD、うつ、擬態うつ、アルコール依存症、覚せい剤中毒、自己臭症、アスペルガー、高次機能障害、解離性障害の症状についての相談を読むことができる。
・弟が統合失調症では?という相談から始まり、意外な回答に至る「【1087】家の中にストーカーがいます」
・PTSDの相談に対し、診断根拠とともに、人の苦しみはすべて病気となるのか?という風に考えさせる「【1034】離婚をきっかけに出た私の症状はPTSDでしょうか」
・自身がうつであるが故に部下がうつとは思えないと推測し、擬態うつ(新型うつ)の問題に焦点をあてた「【0406】休職して遊びまわっている部下は擬態うつでしょうか」
・うつ治療中の当事者による相談に対し、「典型的なうつの症状」だと回答した「【0559】うつがよくなってきたのですが、「自分は治るべき人間ではない」という考え方が頭をよぎるようになりました」
・覚せい剤をやめたはずなのに症状が出る、という妻からの相談に「おそらく覚せい剤をやめていない」と喝破した「【1883】夫は覚せい剤をやめたのに、他人からもらった普通の薬をのむと精神症状が出ます」
などが掲載されている。
ここでは書籍のタイトルにもなった「家の中にストーカーがいます」を抜粋して紹介しよう。「Q:38歳の弟のことです。もう7~8年、定職に就かず家にいます。以前から、姉である私に対して、幼稚な嫌がらせをしたりしていましたが、最近はそれがエスカレートしております。(中略)私が二階へ上がると、直ぐに二階に上がって来て、私の部屋の前で気味の悪い声を上げて笑い、自分の部屋のドアを勢いよく閉めます。(中略)私よりも先にお風呂に入りたいらしく、常にタイミングを見ています。私の休日には、いつにもまして早起きし、早朝から大音量でラジオをかけます。(中略)これだけの異常行動をするのは、統合失調症などの精神病なのではないかと思いますが、いかがでしょうか」
これに対する著者の回答は次の通りであった。「A:事実がこのメールの通りだとすれば、あなたのおっしゃるように、弟さんは統合失調症の可能性があると思います。しかし、どうもこのメールの内容は解せないところがあります(中略)『○○が自分の行動を監視し、いちいちそれに合わせて嫌がらせをする』というのは、統合失調症の方の典型的な被害妄想の訴え」
「まさかとは思いますが、この「弟」とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか。もしそうだとすれば、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないと思います。 あるいは、「弟」は実在して、しかしここに書かれているような異常な行動は全く取っておらず、すべてはあなたの妄想という可能性も読み取れます」。
もちろん、メール文章だけしか情報がないなかでのQ&Aのため、全くの的外れな回答であるかもしれないと断った上で、筆者が考えられる可能性として、事実を伝えて患者さんと向き合っていることが窺える。
第2章では、普段想像も及ばないような事柄について相談を持ちかける、いろいろな精神症状の方からの相談事例を紹介している。
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