こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます

“こころの風邪”などありません、それは“脳の病気”です
未読
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こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます
“こころの風邪”などありません、それは“脳の病気”です
著者
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こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます
ジャンル
著者
出版社
ーーー
出版日
2013年12月13日
評点
総合
4.3
明瞭性
5.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

自分がうつっぽいと感じる/身近な人・職場の人がうつになった/親戚が認知症になった、などは誰もが経験する可能性をもつ脳の病気だ。そんなとき「精神医学ではどのように考え、どのような見解を提示するか」を知ることができたら、有体に言って「役に立つ」、つまり「無駄な治療をなくす・適切な治療機会の提供」となるだろう。

本書は人気webサイト「精神科Q&A」に寄せられた質問とその回答を50件ほど厳選してまとめて掲載。この「精神科Q&A」は医療相談ではない。事実を伝えるQ&Aであり、そのため明るい事実もあるが、同時に暗い事実もある。「希望か絶望か、そういうことは意に介さず、事実だけを伝える」という明確なポリシーで運営されている。

この姿勢から生まれた快診断・名診断は、web上でも有名で、webサイトは月間150万PVのアクセスを誇るそうだ。今からweb上にある2500件の事例を読み返すのはなかなか大変だが、この電子書籍にまとめられた55件を読む価値は十分にある。

はじめから読み通してもよし、キーワードごとにまとめて読んでもよし。本書のプロローグにもあるように「興味本位は無関心に優ります」「興味本位の人、精神科の勉強をしたい人、勉強まではしたくないがちょっとのぞいて見たい人、精神科が好きな人、精神科が嫌いな人、通りすがりの人。精神科Q&Aはそういう人たちのための読み物」だ。本書は3部構成になっており、それぞれを紹介していく。

著者

林 公一(はやし きみかず)
精神科医。医学博士。ウェブサイト「Dr.林のこころと脳の相談室」を1997年に解説。月のアクセス数が150万を超えるこのサイトのメインコンテンツである「精神科Q&A」は、インターネットの読者から受け付けた質問に、林医師が事実を回答するもの。なお、サイトがクリニックの宣伝の要素を持つことを避けるため、実際の診療場所などは一切公開していない。

本書の要点

  • 要点
    1
    精神科医の林公一先生が、2500件以上回答してきた人気ホームページ「精神科Q&A」の傑作選。
  • 要点
    2
    統合失調症、うつ、擬態うつ・新型うつ、アスペルガーなどについて、当事者(患者本人や家族)からの質問と、答えというわかりやすい形式で学べる。
  • 要点
    3
    患者当人やその周辺の人でしかわかりえない事例の独特さが興味を引く。
  • 要点
    4
    質問者の背景や思いなどから、伝えられた文面通りではない、深層心理まで読み解いた回答にはっとさせられる。

要約

【必読ポイント!】 いろいろなこころと脳の病気とその症状

Feverpitched/iStock/Thinkstock
統合失調症、PTSD、うつ、擬態うつ、アルコール依存症などの症状を知ることが出来る

1章では、統合失調症、PTSD、うつ、擬態うつ、アルコール依存症、覚せい剤中毒、自己臭症、アスペルガー、高次機能障害、解離性障害の症状についての相談を読むことができる。

・弟が統合失調症では?という相談から始まり、意外な回答に至る「【1087】家の中にストーカーがいます」

・PTSDの相談に対し、診断根拠とともに、人の苦しみはすべて病気となるのか?という風に考えさせる「【1034】離婚をきっかけに出た私の症状はPTSDでしょうか」

・自身がうつであるが故に部下がうつとは思えないと推測し、擬態うつ(新型うつ)の問題に焦点をあてた「【0406】休職して遊びまわっている部下は擬態うつでしょうか」

・うつ治療中の当事者による相談に対し、「典型的なうつの症状」だと回答した「【0559】うつがよくなってきたのですが、「自分は治るべき人間ではない」という考え方が頭をよぎるようになりました」

・覚せい剤をやめたはずなのに症状が出る、という妻からの相談に「おそらく覚せい剤をやめていない」と喝破した「【1883】夫は覚せい剤をやめたのに、他人からもらった普通の薬をのむと精神症状が出ます」

などが掲載されている。

ここでは書籍のタイトルにもなった「家の中にストーカーがいます」を抜粋して紹介しよう。「Q:38歳の弟のことです。もう7~8年、定職に就かず家にいます。以前から、姉である私に対して、幼稚な嫌がらせをしたりしていましたが、最近はそれがエスカレートしております。(中略)私が二階へ上がると、直ぐに二階に上がって来て、私の部屋の前で気味の悪い声を上げて笑い、自分の部屋のドアを勢いよく閉めます。(中略)私よりも先にお風呂に入りたいらしく、常にタイミングを見ています。私の休日には、いつにもまして早起きし、早朝から大音量でラジオをかけます。(中略)これだけの異常行動をするのは、統合失調症などの精神病なのではないかと思いますが、いかがでしょうか」

これに対する著者の回答は次の通りであった。「A:事実がこのメールの通りだとすれば、あなたのおっしゃるように、弟さんは統合失調症の可能性があると思います。しかし、どうもこのメールの内容は解せないところがあります(中略)『○○が自分の行動を監視し、いちいちそれに合わせて嫌がらせをする』というのは、統合失調症の方の典型的な被害妄想の訴え」

「まさかとは思いますが、この「弟」とは、あなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか。もしそうだとすれば、あなた自身が統合失調症であることにほぼ間違いないと思います。 あるいは、「弟」は実在して、しかしここに書かれているような異常な行動は全く取っておらず、すべてはあなたの妄想という可能性も読み取れます」。

もちろん、メール文章だけしか情報がないなかでのQ&Aのため、全くの的外れな回答であるかもしれないと断った上で、筆者が考えられる可能性として、事実を伝えて患者さんと向き合っていることが窺える。

精神症状を持つ本人からの相談

Jakub Pavlinec/Hemera/Thinkstock
他人では決して知ることのできない貴重な証言と記録

第2章では、普段想像も及ばないような事柄について相談を持ちかける、いろいろな精神症状の方からの相談事例を紹介している。

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要約公開日 2014.04.11
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