映画『ブリジット・ジョーンズの日記』や『セックス・アンド・ザ・シティ』等で見られるような、仕事をバリバリこなして都会の生活を楽しむような女性は、実は一昔前の定番だと著者は語っている。今の若い女性のなかでは、クラブやバーで飲み騒ぐよりも、週末の夜に家でカップケーキを焼いて料理ブログに写真を載せたり、自宅でのミニ園芸を楽しんだりする事が新たな定番になってきているのだ。
このように若い世代が専業主婦を目指し、昔ながらの暮らしに憧れを持つようになっていることを本書では「ハウスワイフ2・0」と呼んでいる。なぜ、若い人の人生観はこんなにも大きく変化してしまったのだろうか。
それは、今の若い女性にとって、親の世代が幸せな人生を送ったとはとうてい思えないからだろう。1960年代の男女平等を叫ぶフェミニズム運動のなかで仕事と家庭を両立しようと悪戦苦闘した結果、ストレスだらけで離婚を経験したベビーブーマーたち。そんな母親を見て育った若い世代は、意義のある幸せな人生のヒントを、遠い昔の古き良き時代に求めているのである。
ハウスワイフ2・0現象の根本には職場への不満がある。フェミニズム運動は、女性も男性と同じように一生懸命働けば、会社で出世できるという期待をつのらせた。だが、現実は全く異なり、産休もろくに取れず、頑張っても出世できない職場に女性たちは失望することになる。会社に幻滅した女性たちは、会社を辞め、手間をかけた育児、家庭菜園、編み物などに生き甲斐を見出すようになった。著者はこのことを「選択的離脱革命」だと述べている。
現に農業や裁縫、手作り保存食に関連する本が続々とアメリカで多く発行されているそうだ。家事を嫌々行っていた1960年代の無気力な専業主婦とは異なり、「ハウスワイフ2・0」は退屈でなければ欲求不満でもない。彼女たちは目的意識を持って家事をこなしている。すなわち、「手作り」に熱中し、子育てに力を入れ主婦業を楽しんでいるのである。
一方で著者は、主婦転向化賞賛の流れについての疑問も提示している。女性は家庭におさまるほうが幸せだという話に、科学的な根拠はひとつもない。専業主婦の母親より、働く母親のほうがはるかに幸せで、充実していると示した調査もあるほどだ。「選択的離脱革命」は、マスコミが専業主婦の母親のほうが幸せだと喧伝してきたことが影響している点も無視してはならない。
「ハウスワイフ2・0」と一昔前の専業主婦との大きな違いは、インターネットを駆使し、ブログで人々と繋がり、サイドビジネスを行っているという点だ。
現在アメリカの多くの専業主婦がブログにはまっている。母乳育児の心得や笑える失敗談が満載の子育てブログ、よだれが出そうなスコーンや伝統料理を載せたブログ、そのほかにもおしゃれなインテリアや手作りの小物について書いたものなど、主婦ブログにはファッションカタログのような「素敵な家庭生活」が公開されている。
3,400冊以上の要約が楽しめる