宇宙の成り立ちを探求する学問「宇宙論」はここ100年で激動を迎えてきた。かつて永遠に不変とされていた宇宙への認識に大きな変化が起こったのだ。著者の最近の研究によると、宇宙の成り立ちとその性質というのは、理論上は存在するはずであるものの、未だ観測できていない「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」による所が大きいという。この考えに至るまでには、多くの科学者による理論構築と観測・検証、そして仮説の棄却が繰り返えされてきた。本要約では、宇宙研究者を惹きつけてやまない謎の多い二題テーマである「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」を中心に紹介する。
「暗黒物質」とは、観測はできないが、暗黒の空間に存在すると考えられている、質量をもった物質のことである。なぜ観測できないモノの存在がわかったのか?それは「ビッグバン」「宇宙の膨張」「宇宙の空間的性質」、この3つの発見が大きく関係している。
ビッグバンという言葉を聞いたことがあるだろうか。宇宙の全てのはじまりを説明するビッグバンモデルは、カトリックの司祭にして二つの博士号を持つルメートル氏によって提唱された。宇宙のはじまりとは、つまり「無」の空間から、「有」が生まれたということだ。
以前は宗教的な観点から宇宙は変わらないものと考える研究者も多くいたが、星までの距離を観測する技術の進歩により、我々から遠くにある銀河ほど大きな速度で我々から遠ざかっていることがわかった。我々から二倍遠くにある銀河は二倍だけ大きな速度で、三倍遠くにある銀河は三倍だけ大きな速度で遠ざかっているというのだ。つまり、我々の「宇宙は膨張している」のだ。
そして、あらゆる銀河が互いに遠ざかっているということは、過去においては、どの銀河もお互いにもう少し接近していたことになる。二倍の距離にある銀河が二倍の速度で遠ざかるのだから、時間を逆向きにすれば、つまり宇宙のすべてがある一点に集中していたはずだ。そう、これこそが、ビッグバンにほかならない。
そして、第三の重要な発見である「宇宙の空間的性質」も忘れてはならない。過去の研究から、この宇宙は光が延々とまっすぐ進む空間的性質(「平坦な宇宙」タイプと呼ばれている)をもつことが、証明されている。
しかし、宇宙空間に存在する物質の質量に注目すると理論上の計算と観測でその量が合わない。平坦な宇宙を前提とした時に、この宇宙が理論的に持っているはずの質量と、観測された天体の質量との間に大きな差があることがわかった。ここで暗黒の空間に観測できない物質の存在、つまり暗黒物質の存在が示唆される。
宇宙が平坦であるために必要とされる膨大な質量はどこに隠されているのか。私たちが観測できない暗黒の世界にある物質を求めて研究者達の探求は続いており、未だ謎が多い。
ここでは、もう一つの謎である「暗黒エネルギー」について紹介しよう。
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