アルツハイマー病 真実と終焉
アルツハイマー病 真実と終焉
"認知症1150万人"時代の革命的治療プログラム
アルツハイマー病 真実と終焉
出版社
出版日
2018年03月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

平均寿命が伸び続ける今、アルツハイマー病は最も恐れられる病気のひとつである。人の顔がわからなくなる、考えがまとまらなくなる、物忘れがひどくなる……認知機能が低下してこれらの症状が出始めると、自分が自分でなくなるような感覚におちいるという。

これまでアルツハイマー病は不治の病であると考えられてきた。その常識を覆すのが本書である。著者はアルツハイマー病を、「予防できる」、さらには「すでに発症していても回復させることができる」と主張している。

本書によれば、アルツハイマー病の原因は炎症・ホルモンや栄養素のバランス・毒物の3つであり、これらの原因を取り除くことで治療・予防が可能なのだという。そのためのプログラムが「リコード法」であり、本書にはその詳細が記されている。治療というと薬物療法や外科療法をイメージしがちだが、リコード法は食事や運動など、生活習慣全体を改善するプログラムだ。服薬は治療の一部に過ぎないし、状況によっては不要の場合もあるという。

高齢化が進む現代において、アルツハイマー病の治療・予防は深刻な課題のひとつである。誰もが当事者になりうる病なのだ。身内など身近にアルツハイマー病患者がいる人はもちろんのこと、健康な老後を過ごしたいすべての人に読んでほしい一冊である。

ライター画像
池田明季哉

著者

デール・ブレデセン
アルツハイマー病などの神経変性疾患の世界的権威。カリフォルニア工科大学を卒業後、デューク大学メディカルセンターでMDを取得。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で神経学のチーフ・レジデントを務めた後、ノーベル賞受賞者のスタンリー・B・プルシナー博士に師事し、プリオンとアルツハイマー病の関連性について多くの研究を行う。UCSF、UCLA、カリフォルニア大学サンディエゴ校で教職を歴任。バーナム研究所にて高齢化プログラムを指導後、1998年、加齢専門研究所であるBuck Instituteの創業時社長兼最高経営責任者(CEO)に迎えられる。現在数百人の医師に「リコード法」の教育・普及を行うMPI Cognitionを創立、最高医療責任者を務める。

本書の要点

  • 要点
    1
    アルツハイマー病には、3つのタイプがある。アルツハイマー病を治すためには、患者が3つのうちのどのタイプに該当するのかを明らかにしたうえで、それぞれのタイプに合わせたプログラムを実施しなければならない。
  • 要点
    2
    アルツハイマー病を予防するポイントは、炎症の予防、ホルモン・栄養素・栄養物の最適化、体内の毒素の除去の3つだ。
  • 要点
    3
    アルツハイマー病の原因を取り除き、脳の認知機能を上昇させるための治療・予防プログラムを「リコード法」という。

要約

アルツハイマー病は不治の病か?

タイプ別の治療でアルツハイマー病を治す
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

1980年代以来、アルツハイマー病の原因は、アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積することだと考えられてきた。それゆえ、アミロイドβを蓄積させないこと、そしてアミロイドβを除去することがアルツハイマー病の予防法であり、治療法であるという説が有力だった。しかし実際には、その方法を実施しても効果があらわれることはなかった。

また、アルツハイマー病は単一疾患であるという考え方が主流で、「アリセプト」と「メマンチン」という薬剤を併用するか、もしくはいずれか1剤を使う治療が主流である。

しかし、著者による研究の結果、アルツハイマー病は単一疾患ではなく、3つのタイプに分かれることが明らかになった。患者がどのタイプに該当するのかを明らかにしたうえで、タイプごとの治療を施す必要があるのだ。そうすれば、アルツハイマー病を治すことができる。

遺伝的要因にも打ち勝てる

ApoE4(アポイーフォー)と呼ばれる遺伝子の型がある。これを持つ人は、アルツハイマー病になりやすいと考えられている。しかしこの遺伝子を持つ人でも、症状が出る前から予防プログラムを始めれば、認知症の有病率を劇的に減らす可能性があるのだ。

この遺伝子の有無にかかわらず、40歳以上のすべての人は予防プログラムを行ったほうがいい。アルツハイマー病の症状は老年期によって表出するが、脳の認識能力の低下はおおよそ40歳から始まるが、早い段階から始まっているのだ。

【必読ポイント!】 アルツハイマー病は予防できる

炎症を予防する

アルツハイマー病は、脳の防御反応であることがわかっている。認知機能の低下は、炎症、栄養とホルモンの不足、そして毒物への曝露に対する防御反応としてあらわれる。したがって、この3つの要因を取り除けばアルツハイマー病は防げるのだ。

まず炎症だ。人間の体に侵入してくるウイルスや菌類などと闘うとき、免疫システムが活性化する。この反応が炎症である。この外敵が慢性的で、炎症性反応が継続的に活性化されると問題になる。

炎症の原因には、さまざまなものがある。感染はもちろんのこと、胃腸へのダメージも炎症を引き起こす。

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要約公開日 2018.08.18
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