理不尽な言動をとるやっかいな人に打ち勝つためには、相手の異常さを受け入れ、それに合わせることが重要となる。
著者がトラブル続きの最悪な日に経験した出来事を紹介しよう。著者が帰り道に車を運転していたら、ある男性の行く手を、うっかり二回も遮ってしまった。怒った男性は自分の車から降り、著者に罵声を浴びせた。それに対して著者は、異常とも思える発言で返した。「普段はこんなミスをする人間ではないけど、今日は殺して欲しいぐらい最悪な日だったんです。あなたはその殺してくれる人ですか」。すると男性は、「ちょっと落ち着けよ。またうまくいくようになるから。」と著者を説得するまでに態度が変容し、この緊迫した状況に終止符を打つことができた。
「積極的な従順」によって、相手を攻撃者から同調者へ変えたことで、著者はやっかいな状況を切り抜けたのだ。
やっかいな状況に従順すること。それは体の意に反した行為であることを知っておこう。理不尽な人と関わると、脳が「戦え」「逃げろ」という命令を出す。だが、日常生活で理不尽な人と接する場合は、戦いも逃げも役に立たない。そこで、次に紹介する「理性のサイクル」という6つのプロセスを経て冷静さを保つようにしたい。
そのプロセスとは、
(1)相手の理不尽さを「認識」する、
(2)相手のやり方を「特定」する、
(3)自分自身の異常さに「対処」する、
(4)相手の異常さに「順行」する(合わせる)、
(5)自分が危険でないことを「表現」する、
(6)相手を良識的な見地へと「誘導」することである。
ただし、理不尽な人とこのプロセスを踏むのは簡単ではなく、必ずうまくいくとは限らない点に留意したい。
やっかいな人は、泣き崩れたり、嫌みっぽくなったり、冷淡になったりする。そのやり口は実に様々だ。そのため多くの人はそれらに反応して、ひどく感情的になり、論理的な思考ができなくなってしまう。だが、やっかいな人のやり口は、彼らの弱点でもある。やり口を知れば、次の行動を予測でき、こちら側の理性を保ちやすくなる。
例えば、幼少期に甘やかされて育った人の多くは、したくないことをしなければならないとき、周りを意のままに動かすために泣き言をいう。求めるものが手に入らないと、相手に罪悪感を抱かせ、コントロールしようとしがちだ。また、物に当たり散らすなどして、相手が耐えられない状況を作り出し、相手を疲弊させる。また、いつも批判されて育った人は、知ったかぶりをしたり、他人の発言の欠点を見つけようとしたりする場合がある。
このようなパターンを知っておくと、彼らの怒りや冷淡な態度は、自分のせいではないと分かる。これを踏まえて、理不尽な人が泣いたり、攻撃したりしてきたときに、自分がどう反応するかを考えてみよう。罪悪感を持つ、怒りっぽくなるなど、彼らに対する反応は、だいたいはっきりしている。理不尽さのパターンを知れば、やっかいな人に合わせて関われるようになる。
やっかいな人に対処するにあたり、自分自身もやっかいな人になりえるということを知っておきたい。普通の人でも異常な状態になる原因は何か。その1つは「先入観」である。「何をやっても俺はだめだ」「誰も信用できない」。こういった固定概念があると、やっかいな人を理解しづらくなってしまう。そのため、自分の中にある否定的な先入観を探し出して、予防策をとる必要がある。
有効なのが「本来あるべき自分に戻るエクササイズ」だ。静かな時間を作り、次の内容を紙に書き出していこう。
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