働き方改革

生産性とモチベーションが上がる事例20社
未読
働き方改革
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生産性とモチベーションが上がる事例20社
未読
働き方改革
出版社
毎日新聞出版

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出版日
2018年03月20日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

働き方改革を進めることによって企業の生産性を上げる。それが本書のテーマだ。しかし著者の真意はそれだけにとどまらない。根底にあるのは、私たちの働き方を見直すことによって、日本の社会をよりよいものにしていこうという真っ当な志である。「財政再建」や「少子化」といった大きな言葉が語られないわけではないが、なにより胸を打つのは、著者の一生活者としての次のような言葉だ。

「働き方改革は企業の生産性向上ばかりが注目されますが、社会の働き方改革の行く先には、夫婦間の信頼関係が再構築され、家庭内の幸福度が大きく引き上がり、子どもたちを包み込む空気が変わることをしみじみと実感しました」。

著者がおそれるのは、働き方改革が一時のブームに終わってしまうことであり、さらには結果が出なかったときに日本社会全体がリバウンドしてしまうことである。「法律が施行されるから」という受け身の姿勢で取り組めば、逆に社員のモチベーションを削いでしまうかもしれない。

そうならないためには、まず経営者が働き方改革の背景とその本質をよくよく理解する必要がある。著者の力点もまさにそこに置かれており、本書では20社にもおよぶ取り組み事例が具体的に紹介されている。その顔触れも小さな会社から官公庁まで、きわめて多様だ。

残業を減らすことと業績を上げることは、決してトレードオフの関係ではない。労働時間を削減し、社員のモチベーションと組織の生産性を高め、業績を伸ばすことはできる。そう強く勇気づけられる一冊である。

ライター画像
しいたに

著者

小室 淑恵 (こむろ よしえ)
株式会社ワーク・ライフバランス代表取締役社長。2006年、株式会社ワーク・ライフバランスを設立。「働き方改革コンサルティング」を900社以上に提供し、大幅に残業を削減して業績は向上させるという生産性向上の成果を出している。自社の経営も残業ゼロ、有給消化100%で増収増益を達成し続けている。2014年、安倍内閣で産業競争力会議の民間議員として、政府の経済成長の方針「日本再興戦略」に長時間労働の是正と女性活躍こそが日本の経済成長の鍵であることを盛り込んだ。2012年に出場したTEDxTokyoでは大きな話題を呼び、プレゼン力の高さにも定評がある。文部科学省中央教育審議会委員、経済産業省 産業構造審議会委員など公務を歴任。業務分析ツール「朝メール.com」や「育児と仕事の調和プログラムarmo(アルモ)」「介護と仕事の両立ナビ」などを開発し、多くの企業が導入している。2児の母。『なぜ、あの部門は「残業なし」で「好成績」なのか? 6時に帰るチーム術』(日本能率協会マネジメントセンター)、『女性活躍 最強の戦略』(日経BP社)、『労働時間革命 残業削減で業績向上! その仕組みが分かる』(毎日新聞出版)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    人口オーナス期に入った日本社会は、少子高齢化、介護離職者の増加など働く環境が激変しており、働き方改革が喫緊の課題だ。
  • 要点
    2
    改革の成功のポイントは「それぞれの組織風土に合った施策を開発できるかどうか」「改革の必要性を全員が肚落ちできているかどうか」「チームで助け合いながら実現できているかどうか」である。
  • 要点
    3
    結果を出しつつリバウンドを起こさないためには、チームメンバーの「関係の質」を高め「グッドサイクル」を立ち上げることが求められる。

要約

改革の背景

人口ボーナス期と人口オーナス期
Nosyrevy/gettyimages

一国の人口構造が、その国の経済にボーナスを与えるようなおいしい時期を「人口ボーナス期」という。具体的には若者の占める割合が大きく、高齢者が少ししかいない時期を指す。このような人口構造であるかぎりは、若くて安い労働力で世界中の仕事を呼び込み、大量にこなして儲けることができる。しかも社会保障費がそれほどかさまないので、利益をインフラ投資に回すことも可能だ。いうまでもなく日本の高度成長期がこれにあたる。

これに対して、人口構造がその国の重荷になる時期を「人口オーナス期」という。オーナスとは「負荷」や「重荷」といった意味だ。人口オーナス期になると、労働人口が減少し、高齢者を支える社会保障制度の維持が困難になってくる。

日本社会は1990年代半ばに、人口ボーナス期から人口オーナス期に入った。しかも少子化対策の失敗により、その転換が一気にやってきたため、事態はより深刻になっている。

人口オーナス期の働き方

もう日本経済に発展は見込めないのではないか――そのように感じられる人もいるかもしれないが、けっしてそのようなことはない。ただし人口ボーナス期とオーナス期では、経済が発展する道筋が逆なので、それに合わせた働き方に転換できるかどうかがカギとなる。

人口ボーナス期では、早く、安く、大量に生産することが勝利の方程式だ。労働時間と成果が直結しているからである。(1)なるべく男性ばかりで、(2)長時間働かせ、(3)同じ条件の人材ばかりを揃えた組織が勝つ。社会全体としては、夫婦が性別で役割分担をするのが理に適っている。

逆に人口オーナス期は、すべてを反対にする必要がある。(1)なるべく男女ともに、(2)短時間で働かせ、(3)違う条件の人材を登用する組織が勝つ。労働力が不足するので、男女どちらからも選ばれる組織が有利なのは明白だ。また人件費が高騰するため、短時間で成果を出さなければならない。そしてモノやサービスの差別化が求められることから、多様な発想が必要となってくるというわけである。

【必読ポイント!】 改革の実際

表面的な手法に走らない
ronstik/gettyimages

働き方改革でもっともやってはいけないのは、「強制退社時間の設定」のような数字合わせのやり方である。社員をとにかく帰らせる一方で、隠れ残業が蔓延するようでは、社員のモチベーションは下がるばかりだ。これでは生産性の向上にはほど遠い。

著者は900社を超える企業、組織の働き方改革を支援してきた。著者のプログラムの最大の特長は、取り組む本人たちが「やらされ感」ではなく、自発的に改革を進めるようになるという点である。「一時的に早く帰るためのノウハウ」ではなく、「継続的に生産性高く働くノウハウ」を身に着けてもらうことに主眼を置いているからだ。

そうした改革を実現するには、「自分たちのチーム・組織風土に合った施策かどうか」「働き方改革の必要性をメンバー全員が肚落ちできているかどうか」「チームで助け合いながら実現できているかどうか」をチェックしながら取り組む必要がある。

トライアルチームで8カ月

失敗する代表例として挙げられるのが全社一斉施策である。人事部が具体的なやり方まで決めて一律に社内で展開しようとすると、「現場を分かっていない人事部から、また何か降ってきた!仕事の邪魔をしないでくれ」と反発されてしまうケースが多い。

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要約公開日 2019.03.31
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