一国の人口構造が、その国の経済にボーナスを与えるようなおいしい時期を「人口ボーナス期」という。具体的には若者の占める割合が大きく、高齢者が少ししかいない時期を指す。このような人口構造であるかぎりは、若くて安い労働力で世界中の仕事を呼び込み、大量にこなして儲けることができる。しかも社会保障費がそれほどかさまないので、利益をインフラ投資に回すことも可能だ。いうまでもなく日本の高度成長期がこれにあたる。
これに対して、人口構造がその国の重荷になる時期を「人口オーナス期」という。オーナスとは「負荷」や「重荷」といった意味だ。人口オーナス期になると、労働人口が減少し、高齢者を支える社会保障制度の維持が困難になってくる。
日本社会は1990年代半ばに、人口ボーナス期から人口オーナス期に入った。しかも少子化対策の失敗により、その転換が一気にやってきたため、事態はより深刻になっている。
もう日本経済に発展は見込めないのではないか――そのように感じられる人もいるかもしれないが、けっしてそのようなことはない。ただし人口ボーナス期とオーナス期では、経済が発展する道筋が逆なので、それに合わせた働き方に転換できるかどうかがカギとなる。
人口ボーナス期では、早く、安く、大量に生産することが勝利の方程式だ。労働時間と成果が直結しているからである。(1)なるべく男性ばかりで、(2)長時間働かせ、(3)同じ条件の人材ばかりを揃えた組織が勝つ。社会全体としては、夫婦が性別で役割分担をするのが理に適っている。
逆に人口オーナス期は、すべてを反対にする必要がある。(1)なるべく男女ともに、(2)短時間で働かせ、(3)違う条件の人材を登用する組織が勝つ。労働力が不足するので、男女どちらからも選ばれる組織が有利なのは明白だ。また人件費が高騰するため、短時間で成果を出さなければならない。そしてモノやサービスの差別化が求められることから、多様な発想が必要となってくるというわけである。
働き方改革でもっともやってはいけないのは、「強制退社時間の設定」のような数字合わせのやり方である。社員をとにかく帰らせる一方で、隠れ残業が蔓延するようでは、社員のモチベーションは下がるばかりだ。これでは生産性の向上にはほど遠い。
著者は900社を超える企業、組織の働き方改革を支援してきた。著者のプログラムの最大の特長は、取り組む本人たちが「やらされ感」ではなく、自発的に改革を進めるようになるという点である。「一時的に早く帰るためのノウハウ」ではなく、「継続的に生産性高く働くノウハウ」を身に着けてもらうことに主眼を置いているからだ。
そうした改革を実現するには、「自分たちのチーム・組織風土に合った施策かどうか」「働き方改革の必要性をメンバー全員が肚落ちできているかどうか」「チームで助け合いながら実現できているかどうか」をチェックしながら取り組む必要がある。
失敗する代表例として挙げられるのが全社一斉施策である。人事部が具体的なやり方まで決めて一律に社内で展開しようとすると、「現場を分かっていない人事部から、また何か降ってきた!仕事の邪魔をしないでくれ」と反発されてしまうケースが多い。
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