VUCAの時代がやってきた。VUCAとは、「Volatility」(変動性)、「Uncertainty」(不確実性)、Complexity(複雑性)、「Ambiguity」(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、「あらゆるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が次々と発生するため、将来の予測が困難な状態」を指す。
VUCAの時代においては、ビジネスサイクルの短縮が求められる。長い時間をかけて成果を出そうとしても、その間に「優れた成果」の定義が変わってしまうからだ。定義が変わってしまう前に成果を出すには、生産性を上げる必要がある。
「生産性向上」という言葉は、2通りに解釈できる。まず、「分子を増やす」こと。すなわち、時間を固定し、より多くの成果を上げることだ。次に、「分母を減らす」こと。成果を固定して、より少ない時間で達成することだ。この2つのうち、生産性が高いビジネスパーソンは、必ず「分母を減らす」考え方で働いている。
分母を減らすには、一つひとつの仕事が目的に対して合理的かどうかを考えることが重要だ。そして、非合理な仕事を極限まで排除する。
では、どうすれば非合理な仕事を見つけられるのか。著者が勧めるのは、「なくしたい仕事」をリスト化することだ。そして、「この仕事をなくしたい」と人に話してみる。そうすると、「なくせない理由」を聞き出せたり、「早速なくしてみよう」と話が進んだりするはずだ。
もう一つ重要なのが、非合理な仕事の形式にしばられないこと。たとえば上司は、パワーポイントやワードできれいに作られた資料は不要で、手書きのメモで十分だと思っているかもしれない。ためしに「手書きでも良いですよね?」と聞いてみよう。この一言を言えるかどうかが、仕事にかかる時間を左右する。
スケジュール通りに仕事が進まないと悩む人に勧めるのが、仕事を分解し、一つひとつの作業の所要時間を計算することだ。そうすれば、全体の作業時間を正確に見積もれるし、途中で急な仕事が入ったときにも、柔軟に対応できる。
また、日数ではなく時間単位で考えるクセをつけることも意識したい。「3カ月」ではなく「500時間」と表現すれば、残り時間が意外と少ないことを認識できる。1日に働ける時間は限られているのだから、決して余裕ではないことに気づくだろう。
生産性を数字で説明できる点もメリットだ。「生産性を上げよう」と言うよりも、具体的な数字を挙げたほうが意識しやすい。四半期のノルマを時間あたりに直して考えてみれば、1分1秒でもムダにできないことが実感できるはずだ。
しかし、人はサボりがちな生き物だ。取引先からメールが届いていることに気づいても、後回しにしてしまう。著者は、すぐに終わる仕事は後回しにせず、すぐにやるべきだという。「『今の1分』は夕方の10分、明日の1時間、来週の半日」だと覚えておこう。
メールの返信を後回しにすると、後で追加作業が必要になる。返信するときにメールを読み直したり、状況が変わってしまって追加でやり取りをしなければならなくなったり、返信がないことに怒った相手に対応しなければならなくなったり。こうした手間を考えると、すぐにやってしまったほうがいい。
特にクレーム対応は、すぐにやるべきだ。待たせるほど、相手の怒りは膨らんでいく。メールを見てすぐ電話すれば1分で済むはずのことも、翌週まで待たせれば、何時間も費やすどころか、取引を失うことさえある。
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