お金の流れで読む 日本と世界の未来

世界的投資家は予見する
未読
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お金の流れで読む 日本と世界の未来
出版社
出版日
2019年01月29日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

リーマンショックやトランプ当選。こうした出来事を予言し、ことごとく的中させてきた投資家がいる。冒険投資家の異名を持つジム・ロジャーズだ。本書では著者が歴史から導き出した数々の大胆な予言が紹介されている。

最悪の金融危機が間もなく起こる。朝鮮半島は統一を果たし、世界で最も刺激的な場所になる。そして日本は消えてなくなってしまう――。そうした未来を見越して、著者は二人の娘とともにシンガポールに移住し、中国語を学んでいるという。

ときには耳をふさぎたくなる予言も含まれているが、増刷した紙幣で借金を重ねるいまの日本の姿を、外から見つめ直すきっかけになるだろう。残念なことに、世界三大投資家の一人は、この国を見限ろうとしている。しかし、これから起こる未来はまだ変えることができる。

思えば、私たちは世界で起きていることにどれだけ関心を向けているだろうか。私たち日本人の多くは、自国の政策や経済に対してすら関心を失っているのではないか。もしかしたらジム・ロジャーズはそのことにも気づいたのかもしれない。本書は、私たち日本人に対して大きく警鐘を鳴らしている。今こそ、大変化の真っ只中にある世界を大局的に眺め、歴史を知り、そして日本を知るべきときではないか。その際に、著者の予測する未来図と提言が、洞察を与えてくれることはまちがいない。

ライター画像
香川大輔

著者

ジム・ロジャーズ
Jim Rogers
名門イエール大学とオックスフォード大学で歴史学を修めたのち、ウォール街へ。ジョージ・ソロスと共にクォンタム・ファンドを設立、10年で4200パーセントという驚異の リターンを叩き出し、伝説に。37歳で引退後はコロンビア大学で金融論の教授を一時期 務め、またテレビやラジオのコメンテーターとして世界中で活躍していた。2007年、来るアジアの世紀を見越して家族でシンガポールに移住。著書に『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行』『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見』『ジム・ロジャーズ 中国の時代』(以上、日本経済新聞出版社)、『冒険投資家ジム・ロジャーズのストリート・スマート』(ソフトバンククリエイティブ)等がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    資本は欧米諸国や日本からアジアに移動している。今後の世界の主役は、南北統一を果たす朝鮮半島や中国を中心としたアジアが担うことになる。
  • 要点
    2
    借金を重ねるうえに少子高齢化が進み、移民を受け入れることもしない日本は、このさき消えてなくなる可能性が高い。しかし、世界に誇る日本の強みを発揮できれば、再興の道を開くことも可能だ。
  • 要点
    3
    歴史を学び徹底的なリサーチをすることで世界情勢や未来が見えてくる。こうした視点は投資をする場合にも、しない場合にも必要となる。

要約

【必読ポイント!】 歴史が教えてくれること

歴史が教えてくれるこれからの世界
danielvfung/gettyimages

歴史を学べば先が読める。リーマンショック、中国の台頭、トランプ大統領の当選、北朝鮮開国。数多くの出来事を著者が予測できたのは、歴史から「お金がどう動くか」を学んでいたためである。つまり「投資を成功させるためには歴史を学べ」ということだ。

過去に起きた大きな相場の変動の要因が何で、その結果世界がどう変わったのか。歴史が教えてくれるのは「アジアの時代」が来るということだ。現在、世界最大の債務国はアメリカである。アメリカが世界の歴史上最も多くの借金を抱えている一方で、保有資産を膨らませるアジア諸国は債権国になっている。欧米諸国そして日本から、中国をはじめとしたアジア諸国へと資本の移動が起きているのだ。

歴史上、債務が大きい国は、常にひどい姿になって終焉する。アメリカの時代はいずれ終わり、中国を中心としたアジアの時代が到来することは間違いがない。

そして、史上最悪の世界恐慌が確実に訪れる。それも一年から二年後という早いうちに起こるだろう。世界中の負債額が史上最悪な状況に陥っているからだ。深刻で破壊的な危機がもうすぐそこまで迫っている。

これからの日本の姿とは?

残念ながら日本の将来は明るいとは言えない。世界最大の債権国である日本だが、国内の財政が悪すぎる。このままでは、日本は50年から100年の間に消えてしまうというのが著者の見立てだ。しかし、借金が莫大で、子どもが増えず移民も受け入れない、これでは国として存続できないのは明白だ。著者は日本のことが大好きだが、もし著者が10歳の日本人であれば、ただちに日本を去るという。

日本の将来は歴史が教えてくれる。ガーナ共和国やビルマなど、外国人を追放する政策をとってきた国々は、ことごとく崩壊している。

日本が経済的に成長しており心配がないという見方もあるかもしれない。しかし、日本の好景気はうわべだけだ。日本銀行が紙幣を刷りまくり、日本株や日本国債を買い漁ることで成り立っているにすぎない。過去の歴史をみると、大規模な金融緩和は、アメリカでもイギリスでもドイツでも、ひどいインフレを引き起こしてきた。アベノミクスが成功することはない。「アベが日本をダメにした」と振り返る日がくるだろう。

日本を再興するために
marchmeena29/gettyimages

目も当てられない日本の実情だが、再興の道は残されている。日本は世界に誇る三つの強みを有しているからだ。

一つ目の強みはクオリティへの探求心だ。世界で最も優れているものは日本にあるといってよい。価格ではなく品質で勝負すれば、日本にはまだまだ勝機はある。

二つ目の強みはまじめで勤勉な国民性だ。無理難題にも「はい」と答える真摯な姿勢をつらぬいている。それにより、あらゆることがうまく機能している。

三つ目は貯蓄率の高さである。投資をするためには貯蓄が必要なことは経済の基本だ。ただし、いまの日本では貯蓄が投資に回っていないのが残念な状況だといえる。

もし著者が日本の総理大臣になったら、真っ先に歳出の大幅カットに取り掛かるだろう。それも大型のチェーンソーによってだ。そして、関税を引き下げ、国境を開放する。日本は世界との貿易によって経済成長を成し遂げた貿易立国なのだ。もちろん移民も受け入れる。日本人が外国人に対して閉鎖的なことは理解している。だからこそ、移民受け入れは慎重にコントロールしなければならない。とくに優秀なエンジニアは優先的に受け入れるべきだろう。

注目すべき国はどこか

世界で最も刺激的な場所は朝鮮半島

大国の狭間で揺れ、日本にもほど近い朝鮮半島。間もなく韓国と北朝鮮は統一を果たし、今後10年から20年の間で最も刺激的な場所になるだろう。北朝鮮の経済状況はたしかに世界の最下位といっていいほど低レベルにあるが、だからこそ成長余力が大きいともいえる。

歴史を振り返ると、北朝鮮は1970年まで韓国より豊かな国だった。日本と同様に教育熱心で勤勉であるという国民性を持つ。実は金正恩政権になり、北朝鮮はじわじわと成長している。その成長率は日米韓をも上回るほどだ。北朝鮮の潜在力は極めて大きい。

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要約公開日 2019.05.13
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