中国ではすでに、eコマースのユーザー数は頭打ちを迎えた。なぜならば、eコマースを受け入れられるユーザーはすでにeコマースを利用しているからだ。それにもかかわらず、eコマース数は急速に増え続け、買い手の数より売り手の数のほうがはるかに速く増加している。
そんな今、従来の小売が80~90%のシェアを占めるオフライン市場こそが、eコマースの目的地となった。
小売の本質は、「人」(消費者)と「物」(商品)を繋ぐ「場所」である。従って、オフラインのスーパーや路上で物を売っている人、顧客に電話をかけて商品を勧めるコールセンターなど、多くのビジネスモデルを小売とみなすことができる。小売を理解するには、「人」「物」「場所」の3要素を研究することが必須だ。
この3要素のうち、まず、人について考えてみよう。テナントがショッピングセンターに家賃を支払うのは、人流量(人の流れ)が価値を持つからだ。商売の本質は「人流量を獲得し、それを販売する」ことにある。そして人の視点から見ると、小売形態は「パーチェスファネル」公式(集客した顧客が購買・成約に至るまでの間の意識の推移を数値化する公式)で表せる。すなわち「売上高=人流量(トラフィック)×成約率(コンバージョン率)×客単価×リピート率」である。
次に「物」だ。小売は商品サプライチェーンの最終プロセスであり、その前にはいくつものプロセスが存在する。ある商品がデザインされ、生産され、消費市場で販売されるまでの道のりは、D(デザイン)-M(メーカー)-S(サプライチェーン)-B(商業施設)-b(商店)-C(消費者)のサプライチェーンに集約される。各プロセスが独自の価値を提供して、利益を得ているため、一つの商品を販売するだけでもさまざまな取引コストが上乗せされて消費者に販売されている。
最後に「場所」だ。どんな買い物のプロセスにも、「場所」には情報流、金流、物流の3つの流れが存在し、「人」と「物」の間を絶えず動いている。「情報流」は、売り手が消費者に提供する、購入をするかどうかを決める手助けとなるリソースだ。服ならば、色や素材、値段などがそれに該当する。支払いは「金流」に当たり、買った服を自宅に持って帰ることは「物流」である。
どのようにこの3つの効率を上げられるかが、ニューリテールの核心となっている。
2015年3月、アリババは衝撃的なイベントを開催した。タオバオ(ショッピングwebサイト)のモバイルアプリを使ってスーパーにある商品のバーコードをスキャンすると、当該商品のタオバオでの販売価格が分かるというものだ。そのうえでアリババは、販売価格が実店舗より安いことを公式に約束した。多くの消費者がスーパーで商品を「見て」タオバオのモバイルアプリで値段を確認し、インターネットで「買う」という行動をとった。イベント開始10分で約38万人が参加し、売上総額は、一級都市の大型スーパー10店舗分の1日の総額に相当した。
このイベントは、従来のスーパーの「商品の粗利で情報流のコストをカバーする」という取引構造を壊し、「オフラインで情報流を得て、オンラインで金流を完了する」という新たな取引構造を構築した。
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