新・小売革命

事例でわかる
未読
新・小売革命
新・小売革命
事例でわかる
著者
未読
新・小売革命
著者
出版社
中信出版日本

出版社ページへ

出版日
2019年04月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

モバイルインターネットが普及してからというもの、わたしたちの生活はより便利になってきている。ネットショッピングが身近になり、オンライン決済が登場して、買い物は以前よりもぐっと簡単になった。この利便性の裏には何が起きているのだろうか。そして、これからの未来はどうなっていくのだろうか。そんな疑問を紐解き、小売業界の最先端をいく中国をメインに、最新のトレンドを教えてくれるのが本書だ。

本書は著名なITビジネスコンサルタントである著者が、新しい小売である「ニューリテール」と流通のトレンドを分かりやすく解説している。中国ではアリババ、バイドゥ、シャオミなど、巨大IT企業たちが様々な戦略を用いて火花を散らしている。それぞれが刺激し合い、中国の小売業界に次々と革命を起こし、互いに高め合っている。本書では、そんな彼らが、オンラインとオフラインの両方で生き残るために打った新しい一手(ビジネスモデル)が多くの事例と共に紹介されている。

本書では、小売業界の説明はもちろんのこと、どうすれば効率を高められるのかにもページが割かれている。ニューリテールも様々な角度から解説されており、読み終わるころにはグローバルな視点から商業界を理解できているだろう。

小売の世界は刻一刻と姿形を変えて進んでいる。本書は時代の変化に対応し、時代に取り残されることなく歩んでいくための良い手引書となるだろう。小売業界で働いている人だけでなく、すべてのビジネスパーソンに読んでいただきたい一冊だ。

ライター画像
山下あすみ

著者

劉 潤 (リュウ ルン)
コンサルティング会社「潤米咨询」代表。中国の教養アプリ「得到(デァダオ)」内のビジネスコンテンツで26万以上(2018年9月現在)のユーザー数をかかえる著名ITコンサルタント。前マイクロソフト戦略協力ディレクターで、現在、ハイアール、バイドゥ、恒基(不動産デベロッパー)、中遠(海運会社)など多くの大手企業で戦略顧問を務める。著書に『互聯網+』『互聯網+戦略版:伝統企業、互聯網在踢門』『五分鐘商学院』などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    小売とは「人」と「物」をつなぐ「場所」である。新テクノロジーを使ってこの3つの効率を上げることがニューリテールの核心だ。
  • 要点
    2
    インターネットを用いてオンラインとオフラインを融合させ、オンラインがエンパワーする(力を付与する)オフラインの小売、これこそが「ニューリテール」である。
  • 要点
    3
    私たちは、想像力を発揮して多種多様なモデルを試してみる必要がある。新しいモデルを2~3年運営し、試行錯誤を繰り返し、そして確定するという流れを経なければならない。

要約

【必読ポイント!】 ビジネス新時代

eコマースの危機

中国ではすでに、eコマースのユーザー数は頭打ちを迎えた。なぜならば、eコマースを受け入れられるユーザーはすでにeコマースを利用しているからだ。それにもかかわらず、eコマース数は急速に増え続け、買い手の数より売り手の数のほうがはるかに速く増加している。

そんな今、従来の小売が80~90%のシェアを占めるオフライン市場こそが、eコマースの目的地となった。

小売の本質
metamorworks/gettyimages

小売の本質は、「人」(消費者)と「物」(商品)を繋ぐ「場所」である。従って、オフラインのスーパーや路上で物を売っている人、顧客に電話をかけて商品を勧めるコールセンターなど、多くのビジネスモデルを小売とみなすことができる。小売を理解するには、「人」「物」「場所」の3要素を研究することが必須だ。

この3要素のうち、まず、人について考えてみよう。テナントがショッピングセンターに家賃を支払うのは、人流量(人の流れ)が価値を持つからだ。商売の本質は「人流量を獲得し、それを販売する」ことにある。そして人の視点から見ると、小売形態は「パーチェスファネル」公式(集客した顧客が購買・成約に至るまでの間の意識の推移を数値化する公式)で表せる。すなわち「売上高=人流量(トラフィック)×成約率(コンバージョン率)×客単価×リピート率」である。

次に「物」だ。小売は商品サプライチェーンの最終プロセスであり、その前にはいくつものプロセスが存在する。ある商品がデザインされ、生産され、消費市場で販売されるまでの道のりは、D(デザイン)-M(メーカー)-S(サプライチェーン)-B(商業施設)-b(商店)-C(消費者)のサプライチェーンに集約される。各プロセスが独自の価値を提供して、利益を得ているため、一つの商品を販売するだけでもさまざまな取引コストが上乗せされて消費者に販売されている。

最後に「場所」だ。どんな買い物のプロセスにも、「場所」には情報流、金流、物流の3つの流れが存在し、「人」と「物」の間を絶えず動いている。「情報流」は、売り手が消費者に提供する、購入をするかどうかを決める手助けとなるリソースだ。服ならば、色や素材、値段などがそれに該当する。支払いは「金流」に当たり、買った服を自宅に持って帰ることは「物流」である。

どのようにこの3つの効率を上げられるかが、ニューリテールの核心となっている。

オンラインとオフラインを融合させるニューリテール

「商品を販売しない」実店舗の戦略
画像提供/中信出版日本

2015年3月、アリババは衝撃的なイベントを開催した。タオバオ(ショッピングwebサイト)のモバイルアプリを使ってスーパーにある商品のバーコードをスキャンすると、当該商品のタオバオでの販売価格が分かるというものだ。そのうえでアリババは、販売価格が実店舗より安いことを公式に約束した。多くの消費者がスーパーで商品を「見て」タオバオのモバイルアプリで値段を確認し、インターネットで「買う」という行動をとった。イベント開始10分で約38万人が参加し、売上総額は、一級都市の大型スーパー10店舗分の1日の総額に相当した。

このイベントは、従来のスーパーの「商品の粗利で情報流のコストをカバーする」という取引構造を壊し、「オフラインで情報流を得て、オンラインで金流を完了する」という新たな取引構造を構築した。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2601/3989文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2019.05.12
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
持たざる経営の虚実
持たざる経営の虚実
松岡真宏
未読
キャッシュレス経済圏のビジネスモデル
キャッシュレス経済圏のビジネスモデル
安岡孝司
未読
お金の流れで読む 日本と世界の未来
お金の流れで読む 日本と世界の未来
ジム・ロジャーズ大野和基(訳)
未読
アナログの逆襲
アナログの逆襲
加藤万里子(訳)デイビッド・サックス
未読
好奇心が未来をつくる
好奇心が未来をつくる
ソニーコンピュータサイエンス研究所
未読
HELLO, DESIGN
HELLO, DESIGN
石川俊祐
未読
いまこそ知りたいAIビジネス
いまこそ知りたいAIビジネス
石角友愛
未読
宇宙はなぜブラックホールを造ったのか
宇宙はなぜブラックホールを造ったのか
谷口義明
未読