万年筆が気になっていても、「買っても使わないのでは」「ちょっと面倒くさそう」と購入を躊躇する方もいるかもしれない。そんな方にはあえて、まずは万年筆を一本購入してみることを勧める。ネットショッピングではなく、少し大きな文房具店にある、万年筆専用の売り場に足を運んでみよう。万年筆はデザイン、持ちやすさ、書き心地、インクの流れるスピードやコストパフォーマンスなど、さまざまな選択要素があり、ユーザーによって好みが分かれる。だから、実際に試し書きをして選んでみてほしい。
いざ文房具店に行ってみると、ショーケースに入ったコーナーと直接手にとれる棚に陳列しているコーナーがあることに気付くだろう。それは「高級筆記具」と「事務用筆記具」、すなわちペン先の素材の違いだ。ペン先が金でできているか鉄製のものかによって分けることができる。
高級筆記具としての万年筆のペン先には金が使われるが、その一番の理由は耐久性にある。ペン先に金を使うと、鉄製のものと比べて錆びにくく、長持ちするのだ。金は軟らかいため、万年筆独特の書き味を生み出すという理由もある。
初めて万年筆の試し書きをする方には、国内製の1万円台の商品がお勧めだ。なぜなら、この価格帯の商品は、高級筆記具の中で最も安価な商品だからだ。広く売り出すことが前提となっているので、性別問わず多くのユーザーにフィットしやすい。手に持ってみると、長すぎず短すぎず、太すぎも細すぎもしないだろう。具体的には、パイロットコーポレーションの「カスタム74」、セーラー万年筆の「プロフィットスタンダード」、プラチナ万年筆の「#3776センチュリー」がお勧めである。
まずはこの3本を試して、座標軸の「原点」にしてみよう。別の万年筆を試しつつ、「この万年筆はさっきより、自分にとって重い(あるいは軽い)」「最初のものより書きやすい(書きにくい)」と、座標上に点を打っていく。この作業を繰り返していくうちに、自分にとってベストな1本に出会えるはずだ。
原点となる万年筆を選んだら、次は文字の太さ(字幅)を選ぶ。字幅は万年筆ごとに異なるため、万年筆を選んだ後に変えるのは難しい。
字幅には、大きくF(細字)、M(中字)、B(太字)の3つがある。そしてこの3つの間を埋めるように、Fより細いEF(極細)、FとMの間のFMあるいはMF、Bより太いBBとさまざまに分かれている。なお、これらの名称はメーカーによって異なるものであることに注意したい。
字幅を選ぶにはまず、自分が使いたいシーンをイメージし、「どのような紙に何を書くことが多いのか」を考えてみる。小型のメモ帳にスケジュールを書き込むのか、それともA4判の紙に手紙を書くのか……。用途にあまりこだわっていないなら、細い字幅を選んでおくと無難だろう。
万年筆について書かれている文章で、しばしば「書き味がいい」という言葉を目にする。では「書き味」とは、具体的にどのような感覚を指すのか。
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